2018年11月3日土曜日 文化祭1日目(2)
中央校舎の一番奥にある3年E組の前には少し行列が出来ていた。いきなり待つの?と広乃は思ったけど秋ちゃん一押しらしいからとそれは口にしなかった。
「ここ、そんなに凄いの?」
思いっきり首を縦に降るミアキ。
「うん。広乃ちゃんもユウスケも楽しみにして待つべし」
ユウスケは過度な期待は禁物と思いつつ、この手の秋ちゃんの面白がりはそうマトを外した事はないからと少し期待のハードルを上げていた。
後ろに高校生がやってきて並んだかと思うと三人に声を掛けてきた。
「ミアキ、お友達?ユウスケくんは来た事あったよね?こんにちは。で、こちらの子はひょっとして広乃ちゃんかな?」
「あ、ミフユさん。こんにちは」
すぐユウスケが挨拶をした。秋ちゃんのお姉さんのミフユさんだった。広乃もすぐ後に続いた。
「はじめまして。浦田広乃って言います」
するとミフユさんの方も背筋を伸ばして挨拶をしてくれた。
「私はミアキの姉の古城ミフユです。妹と仲良くしてくれてるのはこの子から聞いてます」
ミフユさんは私達よりも背が高くスラッとした美人だった。当然ながら秋ちゃんと似ている所もある。そりゃあ、こんなお姉さんに面倒見てもらっていたらシスコンにもなるかと思う広乃。
「この二人がベスト・フレンドだから」
そんな事を秋ちゃんが言ってくれた。
待ち行列は5分ぐらい?と思っていたら意外に時間がかかった。
「もう少しかかりそうかなあ。ちょっとおトイレ行ってくる」
そういうと秋ちゃんが列から抜け出して廊下を走っていった。
「ミアキ、廊下走っちゃダメだっていってるじゃん」
そういって注意するミフユさん。そして残った広乃とユウスケを見遣った。
「ミアキと仲良くしてくれてありがとう」
広乃もユウスケも首を横に振った。広乃は力強く言った。
「こちらこそ秋ちゃんと仲良くなってうれしいです。今じゃいつも一緒にいる大事な友達ですから」
ユウスケはそんな広乃の言葉に頷いた。ミフユはどこか悲しげな言葉を返してきた。
「ふーん。いつも一緒なんだ」
「はい。仲間です。同盟です。負けません」
広乃ちゃんが珍しく余計な事を言っているとユウスケは気付いたけど何か言うわけにも行かず思わず広乃ちゃんを見たけど彼女は気付いてないかのようだった。
するとミフユさんは何故か二人に頭を下げた。
「学校でミアキを助けてくれてありがとう。そして、ごめんね」
広乃は一瞬戸惑ったけど何か結びついたらしい。すぐミフユに対して食ってかかった。
「なんでミフユさんが謝るのか分かんないんですけど!」
ミフユは言葉を探した。
「私も同じ小学校の卒業生なんだけど、担任の先生は知っていて……ミアキが大変な目に遭っている時に助けてくれたからあの子も頑張れている。ほんと、君たち二人には感謝してる。これからもミアキとは仲良くしてあげて欲しいな。これは私からのお願い」
そうミフユが言った所でミアキが戻ってきた。
「ごめん、ごめん。あれっ?列、ぜんぜん進んでないよね」
「そうだね」
そういうとミフユはスマフォの時計を見た。
「あ、こんな時間か。ちょっと約束があるから。ごめんね」
「わかった。お姉ちゃん。また後でね!』
ミアキがそう言うとミフユは三人に手を振りながら列を離れて行った。