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2018年11月4日日曜日 文化祭2日目(9)

 紅麗亜と創太は教壇の上に戻っていた。安平響子も横に並んだ。紅麗亜が料理時間最後の追い込みを実況した。

「さあ、あと1分でタイムアップ。味わいデュオチーム、ピーチチームは既に完成!シェフは小学生!チーム、古城ミフユ先輩もあと一息。……あ、完成しましたね!野球部チームは熱いのを食べさせると言って今、卵を焼いてます」

「あんな火力じゃ焦げるぞ」今野創太が思わず漏らした。

 亘理悠太は手元の時計を見ていた。紅麗亜に対して小声で残り時間をカウントダウンし始めた。紅麗亜がラストスパートをかけた。

「野球部チーム、ご飯をよそったお皿にはもうご飯は待機している。カレーがご飯にかけられたけどちょっと危険な香りがします。卵焼きもなんとか間に合ってトッピング」


 亘理悠太が叫んだ。

「タイムアップ、終了!」


 こうして各チームの料理は完成した。亘理悠太は次のフェイズを宣言した。

「さあ、これから審査員による試食テイスティング時間となります」


 審査員達と紅麗亜がピーチチームのキッチンデスクに向かった。再び紅麗亜の実況が入った。

「ピーチチーム、柿をピューレにしてカレースープに使ってきた奇抜な一品です」

 峯岸瑞希が一口スプーンでスープを口にした。おもわず左手でOKサインをした。スプーンを机に置くと言った。

「美味しい。程よい辛さで目が醒めていいかな」

佐藤陽菜と高山リンが続いた。

「へぇ。柿を隠し味って合うんだ。危惧したけどこれは美味しい」

「本当だ」

そんな会話が漏れてきていた。

松本黒羽と井上マユは柿のレンジ煮を手にすると一口食べた。

「これも美味しい!」

「甘くてほぐれていて美味しい。砂糖加えなくても甘いんだね」

「でしょ!」

 作った華山さんが喜んだ。やっぱり作ったものをおいしいと言ってもらえるのは気分がいい。


 味わいデュオの所へ審査員たちが回ってきた。紅麗亜は言った。

「さあ、味わいデュオは料理中の騒動とは打って変わってしっかりした料理が出来てますね」

「紅麗亜ちゃん。私たちはやる時はやるんだよ」

「は、はい。失礼しました、未来先輩!」

 川上未来は放送委員会3年生。山上紅麗亜の部活の先輩に当たる。引退したとはいえ、アナウンサートレーニングなど未来が指導担当者だったので紅麗亜はどうしても緊張してしまう。

「ふむ、よろしい。いいでしょ、これ」

 そこにはベネディクトポーチドエッグ、梨と柿のコンポート風、トマトサラダが並んでいた。

「ベネディグトポーチドエッグっておしゃれですねえ」

無論このデュオはそういう女子の反応を狙ってのメニューだ。ここぞと解説担当の今野創太が解説した。

「ベネディクトポーチドエッグはニューヨーク生まれと言われている食べ物です。ポーチドエッグは要は落とし卵。お湯に酢を入れて固まりやすくした上で水流を作って玉子を落として作ります。これがきれいな形に仕上がっていて素晴らしい。オランデーズソースも作ってるんですね?」

「そう。ちゃんとバターを溶かして卵黄、胡椒でつくりました。あと手軽にできるようにとろけるチーズを使ってみてるから。あとパンは食パンのトーストで代用しました。4等分して使ったので食べやすいサイズにもなりましたし。これなら家でも手軽にできるでしょ?」

「なるほど。これはいいアイデアだと思います」

調理担当した平さんが笑顔で右腕で力拳を作って見せた。


 井上マユが最初にベネディクトポーチドエッグを口に運んだ。

「あー。私はこれ好きかも。イングリッシュマフィンでも食べてみたいかも。つまり、お・い・し・い・!」

 佐藤陽菜や峯岸瑞希、松本黒羽、高山リンたち審査員の残りの面々も次々手を出した。

「へー。食パン使ってこんな風にできるんだ。焼き具合もいいし美味しい」

「これはいけるね。味が濃すぎるかもだけど」と余計なことを言ったのは高山リンだった。


 佐藤陽菜はサラダを一口食べた。

「トマトサラダは普通ですね?」

「野菜は大事」

味わいデュオからはその点は聞くなというマイナスイオンが発せられていた。

 峯岸瑞希がデザートを手にした。

「で、柿と梨はコンポート風ですか」

「どうしてもそうなっちゃうよね。サラダ的に使うか砂糖で煮込んだ風にするか。電子レンジが使えるのはいいんだけどさ」

「で、未来先輩は砂糖水を作って電子レンジで煮込んだと」

「砂糖がベースだけどレモン果汁を大目に加えてるぐらいかな。さっぱりして美味しそうでしょ?」

「納得です」

峯岸瑞希には美味しいデザートであったらしい事が分かった。


 野球部チームの鈴木豪は目の前を審査員が通り過ぎた事に抗議した。隣では外山奏が「豪くん、いい加減にしなよ」と怒っている。

「おい、おい。うちは素通り?」

審査員たちは小声で何か話すと代表で佐藤陽菜が言った。

「あとでくるからさ。あんたのカレー、なんか身の危険感じるので先に他を回ってからにしようって決めたの。誰か一人はぎせいじゃなかった試食するのは止むを得ないかなって思っているけど。その犠牲者が誰になるかは待ってて。まあ女子が希望することはなさそうだけどね」

鈴木豪も審査員男子の高山リンも何か文句がありそうだったけど佐藤陽菜の眼力の前に黙ってしまった。

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