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2018年11月4日日曜日 文化祭2日目(6)

 広乃はミフユのキッチンの方を見てその腕前に内心舌を巻いていた。手を動かしながら隣の二人に聞く。

「なんでミフユさん高校生のくせにあんなに上手いの?」

「んー。私が生まれてから家の食事当番を引き受けるようになって腕を磨いたって」

「そういうレベルじゃないよ」

 確かにミアキも包丁さばきとかまだまだ追いつけない。お姉ちゃんって凝り性なところあるから。きっと私がまだ小さくてお姉ちゃんのやってる事が分かってない頃に猛練習したに違いない。

「私だってお姉ちゃんよりも早くからキッチンでお料理して勉強してる。負けたりはしない。大丈夫だよ」

すかさずユウスケが掛け声をかけた。

「打倒、ミフユさん!」

『おー』

3人の声がハモり観客からも拍手や声援が飛んでいた。ミフユはそんな小学生たちの様子をチラッと見て苦笑していた。


 紅麗亜はマイクを持ってミフユのキッチンスペースに近づいた。今野創太もついて来ていた。解説をやるらしい。

「古城会長」

手を動かしたままミフユは紅麗亜に応じた。

「その言い方はもう止めてほしいなあ。引退してもう結構経つしさ」

「じゃあ、古城先輩で。何を作られてます?」

「オムレツ。うちのお父さんが上手なので教えてもらって勉強してましたから」

そう言いながらミフユは野菜をさいの目に刻んでいた。

 今野創太が尋ねた。

「おー。でもそれだと妹さんチームとかち合いますよね?」

「私もびっくり。広乃ちゃんの料理上手そうだし、妹もお父さんの作るところは見てたりいろいろ質問してはいたので手強いと思ってはいます。まずは全力で戦います」

「闘志満々ですね。古城先輩、試食を楽しみにしてます」

創太がそういうと紅麗亜と一緒に次のテーブルへと向かった。


 紅麗亜としては次のテーブルはやりにくかった。それはほどなく観客たちにも知れた。

「味わいデュオは吹奏楽部前部長の平さん、そして我が校にショスタコーヴィッチなどロシア音楽を広めた放送委員会の川上先輩のチームです。平さんもロシア音楽が好きなんですか?」

 平愛美は顔をしかめた。

「川上さんから番組ゲストで呼ばれた時もそんな事をいきなり聞かれた」

 川上未来は満面の笑顔ながら何かを思い出して表情が硬くなった。

「そうそう。平さんって好きな音楽は吹奏楽だけかと思っていたらクラシック音楽も好きだって言うからショスタコーヴィッチも好き?って聞いたらモーツァルトとか言い出して喧嘩して」

「喧嘩したのにデュオですか?」

気を取り直した未来は再び笑顔に戻った。

「クラシックに区別はないって事で、私・が・妥協しました」

「いや、妥協させられたのは私だから。未来は嘘言わないの!」

食ってかかる平愛美。そんな3年生二人の言い合いに巻き込まれた紅麗亜はポカーンとしていた。仲がいいって思ってたけどそうでもないの?

「はあ。なんだかよく分かんないですが仲が良いって事で?」

「ん?それはないよ」

「そうそう。最悪かも」

紅麗亜は無理やり話を戻した。もう!よくわかんないし。

「……なんで組まれたのか聞けば聞くほど分からないお二人ですが活躍を期待しております。で、平さん、何を作るんです?」

「卵を使ったパン料理。英国路線で攻めてみます」

「ロシア料理しようよって言ったのにさ」むくれる未来。そこまでロシア好きなんですか?今更だけどほんと未来先輩って謎だ。

「あんたが作るなら止めないけど私が作るんだから文句言わない」

「はいはい。で、川上は梨と柿でちょっとしたデザートを出します」

「あんたも人に言うくせに自分は西洋風ですか」

「良いじゃん。美味しければ」

紅麗亜は未来先輩と平先輩の痴話喧嘩に呆れた。

「あー、喧嘩するほど味わいが深まりそうな味わいデュオでした。喧嘩に料理、頑張って下さい」

解説担当の今野創太は遂に口を挟めなかった。小声で紅麗亜が文句を言った。

「こら。今野、仕事しろ」

「聞きたい事はあったんだけどすまん」

君子危うきに近寄らず。迂闊にさわれないなと思った創太だった。試食タイムで挽回しないと紅麗亜ちゃんが許してくれなさそうなので、その時頑張ろう。

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