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2018年11月4日日曜日 文化祭2日目(4)

 各チームが順番に食材を取りに行く際に簡単な紹介が行われた。山上紅麗亜、放送委員会アナウンサーだけはあってこういう仕事も華麗に決めていた。

「では、1番くじを当てたシェフは小学生チーム。壇上に来てくれるかな」

「はい!」

壇上に駆け上がった小学生3人を紅麗亜は笑顔で迎えた。

「自己紹介をしてくれるかな?」

そういうと紅麗亜はマイクを広乃に渡した。

「はい。シェフは小学生チームリーダーの浦田広乃です。クラスメイトの古城ミアキちゃんと春田ユウスケくんの3人でとっても美味しい料理を作ってみせます!」

この広乃の宣言に教室内では惜しみない拍手が広がった。


 教室内では「小学生チーム、かわいい!」とか声が飛び交っていた。紅麗亜は昨日のあるエピソードを紹介した。

「私は親友の陽菜、あ、今日は審査員をやってる子ですけど、から聞いたんですけど、亘理委員長の所に昨日申し込みに来てくれた時に、最初は小学生だからって断ろうとしたそうなんですよね。そうしたら広乃ちゃんが『私達は真剣勝負なんです!』と言って抗議しつつこれまでに作ったという料理の写真をみせてくれて、それを聞いていた陽菜が亘理委員長に受け入れるべきだと言ったんです」

 すると教室備え付けのプロジェクターに広乃が作ったという料理の写真、満面の笑みの広乃とデコレーションがされたケーキを手にした姿が投影された。

 紅麗亜は審判団の安平響子に向いて聞いた。

「審判団も委員長の意見を参考に参加可否の決定をしたって聞きました」

マイクを向けられた響子は背筋を伸ばすと言った。

「こういう証拠まで出されるとこのチームを一人前のシェフとして扱わないと失礼に当たると結論、審判団も委員長と佐藤陽菜さんの判断を支持、エントリーを受け入れました」

 紅麗亜は笑顔で締めくくった。

「だそうです。では、小学生シェフの活躍に期待しましょう!」


 広乃、ミアキ、ユウスケがあらかじめ決めておいたらしい分担でお野菜や玉子など選んでいる間に次のチームが呼び込まれた。

「2番手は味わいデュオチーム。3年生女子お二人でのエントリーです」

栗色の美しいポニーテールを揺らしながら川上未来が突っ込んだ。

「紅麗亜、部活の先輩だっていうのに説明がつれなくない?」

そう言って詰め寄ってくる未来を押し返しながら紅麗亜が言った。

「ってこの人が絡んできてますが、ちゃんと説明しますから未来先輩。……川上未来さんは放送委員会屈指のクラシックオタクで知られています。そして平愛美さんは吹奏楽部の前部長でホルン担当。こんな二人を取り持ったのは放送委員会制作のクラシック・ジョッキーという番組でした。川上先輩が初代プロデューサー兼パーソナリティーを務めたこの番組、平さんも出演されていてそれ以来の仲だとか伺いました」

 平さんはおしとやかに左手で髪を撫でると答えた。「平の姫君」というニックネームは伊達じゃない。

「そうね。未来っちがどうしてもっていうし私も吹奏楽アピールのいい機会だと思ったから協力しました。未来っちはウワサ通りクラシックも吹奏楽も詳しくて話していて楽しいし。それ以来の親友です」

平先輩、見かけと違って声が大きいから。「姫君」って皮肉で言われたんだろうなと思う紅麗亜。

「未来先輩、平先輩。3年生の息のあった演奏じゃなくて料理に期待してます」


「野球部チームは1、2年生男女二人がエントリーしてくれました」

紅麗亜がそう紹介すると体操服ジャージ姿の男子が一歩前に出た。さすがにがっしりした体格でよく日に焼けていた。わかりやすい運動部風な子だった。

「鈴木豪、2年C組です。キャッチャーをやってます。残念ながらレギュラーじゃないですがベンチ入りはしてます。合宿では調理担当を志願してやってるんです!腕に覚えあり!」

 すると「豪くん!」と小声で怒ってポカリと叩いた小柄なブレザー・スカート姿の女子がいた。彼女は豪からマイクを奪ったけど口調はあくまで冷静だった。

「外山奏、1年E組です。私は野球部じゃなくてお料理研究会なんです。今野先輩、お手柔らかにお願いしますね」

(いや、僕は解説者と審判団だから。外山さん、しっかり審査員にアピールしなきゃね)と今野創太は心の中で言いつつ少し首を横に振った。

「鈴木くんとは幼馴染なんですが、料理コンテストに出て合宿料理を披露するって言って……心配で見ていられなくて一緒にエントリーすることになっちゃいました。普段は野球部合宿のお料理なんかアドバイスしたしする事もあります」

そこで野球部員らしい子の声が聞こえてきた。

「奏ちゃーん。野球部の名誉をなんとか。鈴木の暴走を止めてくれ!」

 その声は3年A組の加古仁史だった。ミフユのクラスメイトで引退までずっとエースだった人物がああ言うとは。奏ちゃんの反応といいよっぽど味覚に問題があるらしいという事は他の全チームに伝わった。


 長い髪にピンクのバレッタを付けた女子と短髪で長身の女子がブレザー・パンツルックで並んで立った。まずバレッタの子が自己紹介を始めた。

「2年A組ピーチチームの月山桃です。クラス委員長をやってます。あ、陽子先輩がいる!きっと古城先輩の応援なんだろうなあ。私、寂しいです、陽子先輩」

「桃ちゃんも応援してるよ」という男装麗人執事からの応援の声が聞こえた。続けて短髪長身女子が名乗りを上げた。

「華山明子。同じくA組です。バスケットボール部なんですが今日は親友の桃ちゃんにお願いされて手伝うことになっちゃいました。少なくとも同じ運動部の野球部チームには負けたくないです」



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