プロローグ:10月26日金曜日
プロローグ:10月26日金曜日
小学校のお昼休みの給食。秋の遠足である騒動があってからは教室で席を囲んでという事もなくなり各自の席で食べるようになっていた。
広乃は給食をさっさと食べると自分の食器を前に戻しに行った。その後に続いてミアキ、ユウスケも食器を片付けに来ていた。ミアキとユウスケと目線が合うと頷いて教室の外へ、校舎の外へと飛び出した。その間、教室の他の子はいつものように誰も席を立とうとはしなかった。
外へ飛び出したといってもさして面白い遊びがあるわけでもない。三人は校庭の片隅の階段で座って日向ぼっこ。
広乃はジーンズのスカートの足をバタバタさせた。そろそろ寒いからジーパンとかにしなきゃと思うけど好きだから寒さに耐えられるギリギリまで頑張りたいし。
「あー。何これ。日向ぼっこ?お祖母ちゃんみたいだよ」
別にここでただ話をしているのはとっても平和で悪くないと思っていたユウスケは抵抗を試みた。
「少し肌寒くなってきたからいいと思うけど」
「ユウスケ、もうおじいちゃんなの?」
大慌てで首を横に振るユウスケ。
昼休みの10分間、周りには誰もいない時に限って三人はあの日の事を振り返る事をお互いに許していた。
三人は秋の遠足である事から担任の先生と対決した。そしてそれぞれの親の動きもあって不公正だった担任の先生が去る事になったけど、そのような騒動を起こした罪についてクラスメイトは三人を有罪だと暗黙の結論が出ていた。ただこれが次のいじめにつながらなかったのは三人のうち二人がクラスをほぼ二分する親達に言わせればガキ大将?、当事者に言わせればリーダーだった事から面と向かっては何も言えない羊のような子達は必要最小限の会話にとどめて近付かなくなったのだった。秋ちゃんにしろ私にしろそんなのではくじけない。そして意外な事に大人しいいい奴過ぎるだけと思っていたユウスケも平気だった事だ。
ミアキは二人に言おうと思っていた事があったのを思い出し広乃とユウスケにある提案をした。
「うちのお姉ちゃんが通ってる学校なんだけど」
広乃はファッション好き。中学校や高校の女子制服事情もしらべている。中央高の制服はわりと好みだったしミアキの姉の学校がどこかについては会話の切れっ端から気付いていた。
そう、それは昼休みの本音トークの時だった。ミアキからはお姉ちゃんがあの先生と何かあったらしく気にしているのが嫌なのだという話を聞かされていた。
広乃からみればミアキは重度のシスコン。話を聞いていてお姉さんのミフユさんを尊敬し過ぎじゃないの?とは思ったけど、そんな秋ちゃんのお姉さんがあの先生と何かあったのだとしてもさほど驚かない。あの年齢になってもあんな性格なら高校生のおばさんが小学生の時代もヤバい性格していたに決まってる。そう広乃は仮の結論を出していた。
広乃はミアキの方を見やりながら言った。
「秋ちゃんのお姉さんって県立中央高だよね?」
大きく二度も頷くミアキ。
「うん。来週文化祭ってお祭りがあるんだ。いろいろと面白いものが見られるし。お姉ちゃんの後輩の人からは友達誘って是非来てねって約束させられていて」
「ミアキちゃんから感想や直すべきところがあれ意見を聞きたい」。そんなメッセがミアキのお姉ちゃんの後輩の加美さんから来ていたらしい。ミアキは誰かを誘うなら今は広乃とユウスケの二人しかいなかった。そして広乃とユウスケにおいてもそれは同じだった。
広乃はフンと鼻を鳴らすと腕を組んだ。
「秋ちゃん、いつなの?」
「11月の連休だけど二人とも空いてる?どうせなら二日間堪能しようよ」
「秋ちゃん、ボクは大丈夫だけど」
ユウスケの抜け駆けにちょっと待ってよと思う広乃。割り込んで勢い込んで言う。
「あんた達二人だけってありえないから。私も行くけど1日目は午前中に家で用事あるから1時からでいい?」
そう広乃が宣言するとミアキもユウスケも異論はなく話がまとまった。