ビリヤード部を作ろう! 顧問は憧れのお姉様!?:1
それから高校の入学式の日まで、私は毎日ビリヤード・ロサに通いました。
お金がないので、1日30分しか撞けませんが……。
渡会プロはふいにフラッとやって来て、ワンポイント・アドバイスをしてくれます。
私のセンターショットはサイドからコーナーに代わり……10本中6本は入る様になっていました。
そして、高校の入学式……。
「それでは、新入生の皆さんを指導して下さる、担任の先生方を紹介します……」
「1組……数学を担当します、葉山 瑞穂です、よろしくお願いします」
「あー! あの日のロサの人!」
凛とした、その美しい姿を指さし、私は思わず大声を上げてしまいました。
「?」
「そこの生徒、先生のご挨拶の途中です、静かにするように!」
「は、はい! すみませんでした!」
場内が笑い声で包まれます。
私はしゅんとして、縮こまってしまいました。
先生は先生で、急に指をさされて困惑していると思ったら……意外にもにっこりと笑っています。
私のクラス分けは1組……受験を頑張った甲斐がありました。
クラスに案内され、担任を待つ間、私はある質問を考え、うずうずしていました。
「改めて初めまして、私が担任の葉山です。これから一年間、皆さんと共に成長していきたいと思います、どうぞよろしく」
凛とした覇気のある声で、葉山先生が挨拶します。
私が一目ぼれした、憧れの存在……私をビリヤードの世界に引き込んでくれたお姉様……その彼女と、これから毎日会うことが出来るんだ……。
「それでは、本日の予定……皆さんには講堂にて部活動のオリエンテーションを受けて頂きます。もちろん帰宅部でも構いませんが……部活動は高校生活の醍醐味の一つでもあります、皆さんには興味のある部活を見つけ、積極的に取り組んで頂きたいと思います」
「はい、先生!」
「あなた、さっきの……」
「小川 球輝です! あの、ビリヤード部はありますか?」
「小川さん……あなた、ビリヤードをするの?」
「はい、始めたばかりですけど……」
「本校にビリヤード部はありません……何か他の部活を見つけるように」
ビリヤードという言葉を聴いた途端、葉山先生の表情が険しくなりました。
「わ、分かりました……」
私はまたしてもしゅんとなって、俯いてしまいます。
その後、講堂では運動部から文化部まで、いくつもの部活が紹介され、解放された校庭にはいくつものテントが張られ、先輩たちが盛んに部員勧誘をしています。
でも、私がやりたいのはビリヤードなのです。
勧誘活動の賑わいの中、私はトボトボと歩き……いつの間にか校庭の片隅に建てられたプレハブ小屋に辿り着いてしまいました。
すすけた入口の窓越しに、私がそこで見た物は……。
「ビリヤード……台? でも、ビリヤード部はないはずじゃ……」
「やっぱり辿り着いちゃうのね……アナタたちは」
戸惑う私の背中に、葉山先生の冷たい声が掛けられます。
「あの、先生? ここは一体……」
「ここは、ビリヤード部の部室だったところよ、私が潰した……ね」
「え……!?」
葉山先生の冷たい視線が私に突き刺さります。
「でも、先生はロサでビリヤードをしていたじゃないですか……何でそんな事を?」
「理由は簡単……私がビリヤードを嫌っているからよ」
その言葉のあまりの冷徹さに、私は凍り付くのでした……。




