タマちゃん、球の重力に囚われる!:4
タイトルを変更しました。
よりビリヤードだと分かるタイトルへと……
「す、すご……」
「何て言うか、次元が違うね……」
智ちゃんも由紀ちゃんも、隣のテーブルで起こった衝撃に目が釘付けになります。
「見て、あの人のテーブル……球が6個しかないよ」
「ブレイクショットで3個も落としたの!?」
「プロだ……きっとプロだよ、あの人……」
「ビリヤードにもプロっているんだ……」
私たちの囁きも聞こえないかのように、彼女はキューを持ち替えると、静かにテーブルに向かいました。
そして淡々と、静かに、正確に、ボールをポケットに落としていきます。
「あっという間に9番かよ……」
智ちゃんが言う通り、テーブルに残ったのは9番と白い球だけ。
その白い球はコロコロと転がると、コーナーポケットに向けて、ほぼ真直ぐな位置に止まりました。
そして彼女は静かに構えると、いとも簡単に9番をコーナーに沈めます。
「凄い……ノーミスで全部落としちゃった……」
「マスワリ……ブレイク・ラン・アウトって奴だな……」
緑のラシャの上には、台の中央付近に止まった白い球だけ……。
彼女はそれを確かめると、踵を返し、キューを仕舞い始めました。
そして無言のまま、ビリヤード場を後にします。
「カッコいい……」
私の心は囚われてしまいました……ビリヤードに、彼女のプレーに。
「ほら球輝! ウチらもやろう? ブレイク打ってよ!」
智ちゃんの声で私は我に返ります。
「あ……ごめん! よーし……私もあの人みたいに……えい!」
その後の私たちのプレーは、もう散々で……。
3人でボールを小突き回し、1ゲームが終わるのに1時間もかかりました。
「かー! やめよう、これ……終わらないよ!」
「そうだね、なんだかすごく疲れた……」
智ちゃんも由紀ちゃんも疲労困憊というか、余りにも球が入らないので嫌になっているご様子。
私は私で、彼女の様に上手く行かない事に苛立ちを覚えていました。
「そろそろボーリングの待ち時間じゃない?」
「よし、ビリヤード終わり! ボーリング行くぞ!」
智ちゃんの言う通り、ボーリングの方が簡単に楽しめて面白いのかも知れません。
でも私には、ビリヤード独特の面白さというか、緑の台の上を縦横無尽に球が転がるさまが何とも面白く、楽しく感じられてしまったのでした。
「ビリヤードって難しい……難しいけど面白い……もしも上手くなれば、彼女みたいにカッコ良くなれるんだ!」
二人の後を追いながら、私は思いました。
もう一度、今度は一人で来てみよう。
「あ、なんか言ったか?」
「ううん、なんでもない!」
二人には内緒で、ビリヤードを上手くなろう。
私の口元が綻びます。
もう、どんな言葉も耳に入りません。
私は決めたのです、この日に見た彼女の様な……ビリヤードの達人になるのだ!




