サマーバケーション、アルバイト大作戦! 6
「だいぶ貯まったな……」
優雅ちゃんが、給与明細を見ながら呟きます。
「来週戸田の花火大会だよ、浴衣レンタルしてみんなで行こうよ」
摩耶ちゃんがパンフレットをチラつかせながら目を輝かせます。
「でも土日は繁忙期だから……」
と、眉をひそめる花音ちゃん。
「そっか、お店に迷惑かけちゃ不味いよね……」
思わず腕を組んでうつむく5人。
夏休みの軍資金を手に入れるために始めたアルバイトの筈が、いつの間にか仕事優先で動いてしまっている真面目な私たち。
「あなたたち、日曜のシフトは午前中だけで良いわよ」
「徳田メイド長! いいんですか?」
「スタッフにも余裕があるし、あなたたち一生懸命やってくれてるからね、せっかくの夏休みだし楽しんでいらっしゃい」
にっこり笑うメイド長に、私たちの頬はピンクに染まりました。
「はい、ありがとうございます!」
待ちに待った夏の遊び、花火大会!
夜店もいっぱい出るし、軍資金も十分。
みんな浴衣でバッチリ決めて、夏の夜空に咲く大輪の花火を楽しんできます!
「おい、見ろよあの子たち……」
「ゲロ可愛い、読モか?」
「声かけてみようぜ」
「ねーねー、お嬢ちゃん、一緒に花火見ない?」
戸田公園駅に着いてから、何度目かのナンパの声を掻き分け、私たちは荒川土手を目指します。
綿あめ、焼きそば、焼きとうもろこし、たこ焼き……屋台は夢のワンダーランド。
5人がそれぞれ好みの食べ物を買って、土手を登りきると……。
ドーン!
という轟音とともに、夜空一面に光の花が咲いたのでした。
「綺麗……! すごいね、優雅ちゃん、花音ちゃん!」
「ああ、絶景だな……でも」
「ピクニックシートは持ってきましたが、敷く場所がありませんね」
「どっかに空きは……あ、あそこ! ものすごいでっかいシート使っている人たちがいる、ご一緒させてもらおうよ!」
目ざとく空間を見つけたのは摩耶ちゃんでした。
「すみませーん、ここの空いてるところ、貸してもらってもいいですかー?」
物おじせず、交渉する摩耶ちゃん、メンタル太っ腹です。
「ああ、いいですよー。無駄に広くとってるだけなんで」
「やった! お邪魔しまーす」
嬉々としてシートに上がる摩耶ちゃん、もはや完全に逆ナンです。
「お邪魔しまーす……」
おずおずと座る私たち。
大丈夫でしょうか、後で法外な要求とかされないでしょうか?
「ははは、心配しなくていいよ、見返りなんて要求しないから」
「いや、別にそんな心配は……少ししかしてませんけど」
「君、正直だね……ところでまだ気づかないかな?」
「へ?」
「ほら、これ」
それは私とお客さんが並んで映った2ショットチェキ。
「た、高松さん!?」
私はぎょっとして動揺します。
「思い出してくれた? 久しぶりだね」
「はい、ご無沙汰しております」
「今日はオフなんだから、そんなに緊張しなくて良いよ」
「改めて紹介するね、彼らは同じビリヤードサークルの仲間」
『よろしく!』
5人もの屈強な若者が揃って頭を下げます。
私は申し訳なさ過ぎて、顔を真っ赤にして目を泳がせていました。
「小川さん、ロサに出入りしてますよね、渡会プロの所に」
「はい、色々教わっています」
「僕らもロサにはよく行くんだ、良かったらウチのサークルに入らない? 女の子も一杯いるから安心だよ?」
そういってほほ笑む高松さん。
私は少し間をとると……。
「いえ、せっかくですがお断りいたします、部活もありますし、今は全国高等学校ビリヤード選手権に懸けてますので」
「やっぱりそうか、いや、大丈夫だよ、試しに誘っただけだから。ま、その辺の話はまたお店でするとして、今は花火を楽しもう?」
「すみません……」
私たち5人が頭を下げると同時に、スターマインの大花火が夜空一面に輝くのでした。
私たちの夏はもうすぐ終わり。
九月からは全国大会の予選が開幕します。
全国大会。
私たちの本気が、もうすぐ始まるのです!
第一部 完




