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サマーバケーション、アルバイト大作戦! 4

始まりましたチャレンジマッチ。

バンキングは、私が取りました。


今まで2時間ほど合い撞きさせて頂きましたが、彼の実力からして、こんな失態をするはずがない……まさか私を格下とみて、わざと手を抜いてくれたのか、それとも裏マス狙いで確実に取りに来たのか……。


「さあ小川さん、ブレイクをどうぞ?」


微笑む高松さんの表情をどう汲み取れば良いのか分からず、私は集中を切らせたまま、ブレイクに臨みます。


結果は……ノーイン。

集中を切らせた私のショットは、本来の撞点より上ずった形となり、テーブル上には9個の的球と白い手球、それぞれが絶妙に散った形で残りました。


その後の展開は、取ったり取られたりするシーソーゲーム。

状況は変わらないものの、球が進むほどに、私のメンタルは確実に狂っていきました。


今まで、自分の撞く球に何かを賭ける事はありませんでした。

たかがチェキ、たかが記念撮影です。

ただ、制服がメイド服だと言うだけの、何のことはない写真です。

でも、負けたら失う事があるという環境は、私のメンタルを容赦なく蝕んでいきました。


ゲームが進むにつれ、私の狙いは本当に合っているのか? 

自分が見たとおりに撞いて、本当に良いのか?


いくつもの ? が浮かんで、私のストロークを壊し始めます。

これが賭け球……失うモノがある、ヒリヒリした球なんだ……。


誰か助けて、この球を止めて下さい!

必死に助けを求める私の視線は拾われることのないまま、時間だけが無情に過ぎていきます。

簡単な球を飛ばしながら、終局を迎える球は、あと二つ。

私のフォームは崩れまくり、右に左にガクガクと揺れたまま、ショットに向かいます。


結果は当然のように球を飛ばし、終始冷静な球運びを行う高松さんの番になりました。


「頑張ったね、小川さん……でも、頂くよ」


高松さんは冷静に的球を処理すると、9番をサイドに沈めました……完敗です。


はい、チーズ!


ぎこちないながら精一杯の笑みを浮かべてフレームに収まると、シャッターがおりました。

高松さんは現像された写真を嬉しそうに眺めた後、鞄に入れました。


「やはり賭けるモノがあると、球筋が変わるでしょう? もっとメンタルを鍛えないと、試合には勝てないよ?」


そう言い残し、会計を済ませて店を出る高松さん。


「行ってらっしゃいませ、ご主人様!」


最敬礼でお見送りすると、私はその場にへたり込みました。


「小川さん、大丈夫?」

へたり込んだ私に、優しく手を差し伸べてくれるメイド長。

「すみません、経験したことがない球だったモノで……」

「まあ、最初は誰もそんなモノよ、例外もあるようだけど……」


そう言ってメイド長が見やったテーブルに着いているのは、対馬優雅ちゃん。


「もう一回、もう一回だ!」

「あ、いや、お客様、もう10回も負けてるじゃないですか……お財布的にも、今日はもう諦めて、後日また挑戦されてはいかがでしょう?」

「いやだ! 僕は絶対に対馬ちゃんと2ショット写真を撮るんだ! だからもう一回、もう一回チャレンジする!」


対馬さんが付いたテーブルにすがりつく、オタクっぽい男性。

対馬さんは困りながらも挑戦を受け続け、歩合給5000円以上稼いでいました。


その他のビリヤード部員も似たような感じで、お店の売り上げに貢献しています。


「みんなメンタル強いなー……」

「貴方もすぐになれるわよ、大丈夫」


メイド長の微笑に、乗せられる私なのでした。


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