サマーバケーション、アルバイト大作戦! 2
「ここ……ですか?」
「そうよ、何かおかしいかしら」
川越駅から徒歩10分。
そのお店は、街に溶け込むように、ひっそりと佇んでいました。
「ここ、コンビニじゃん……」
紗絵美さんに案内されたお店は、元コンビニを再利用した、ビリヤード場だったのです。
「さ、店長に紹介するから、中に入って」
思えば初めてのアルバイト、それが波乱に満ちた日常になるとは、誰も思っていませんでした。
「いらっしゃい、伊庭さんから聞いたよ、夏休みの間だけアルバイトしたいんだって? もちろん大歓迎だよ。ただ……ウチはちょっと特殊な店だから、どの程度出来るか、採用試験を受けてもらうけど、良いかな?」
店長さんは大仏のような微笑みでそう言いました。
「試験……ですか」
私に緊張が走ります。
やはりお金を頂くと言うことは、なかなかに厳しいのかもしれません。
「まずは自己紹介と、ランクを教えて貰えますか?」
「はい! 小川球輝、C級です!」
「大西摩耶、B級です」
「森田花音、B級です」
「対馬優雅、SB級です」
「はい、結構! 皆さんとても素直だ、合格です」
「へ? これだけですか?」
「他に何かされると思いましたか? ウチは真剣に撞きに来るお客さんが多いから、ランクを偽らず、手抜きもせず、真剣に球を撞いてくれれば良い、それだけです」
「わ、分かりました! 真剣勝負します!」
私の意気込みに微笑む店長。
「それでは皆さん制服に着替えて、業務の詳細はメイド長に聞いてください」
『はい! よろしくお願いします!』
メイド長? どんな人なんだろう、まさか打田さんが言っていた黒薔薇会の会長なのでしょうか?
制服のメイド姿に着替えると、少しぎこちなさが残る仕草でモジモジと身体を揺らす4人。
でもあれ? ちょっと待ってください。確か制服はオーダーメードだったはず。
それなのになぜ、昨日の今日でぴったりフィットする制服が出てくるの?
ハッとして伊庭さんを見やると、彼女はフッとした笑みを浮かべました。
伊庭紗絵美、恐ろしい人……。
「当店のメイド長を務めております、徳田香織です。分からないことや困ったことがあったら、遠慮せずに頼って下さいね? 全力でサポートさせていただきます」
制服の特徴は似ていますが、膝上丈のスカートではなく、踝までを覆ったロングスカートに、女教師を思わせる細めのフレームレス眼鏡をかけたオールバックの長身女性が微笑みます。
良かった、いい人そうだ……。
「当店の肝、チャレンジマッチの詳細は伊庭さんの話した通りです、あなた方は夏休み限定のレアキャラだから、出番が多いと思うけど、挑戦は基本全受けでお願いします」
「それは、来る者は拒まず……ということですか?」
「店の営業だからと遠慮することはありません、全力で戦って下さい。勝てば歩合給、負ければチェキです。もし負けても、チェキでは爽やかな笑顔でお願いします」
なかなかに厳しい、でもお金をかけなくてもヒリヒリした球を撞ける機会は、そうそうあるものではありません。
仲間を見渡すと、全員瞳を輝かせています。
「さあ、始まりますわ。熱い……熱い夏が!」




