タマちゃん、球の重力に囚われる!:3
「うわあ……」
「結構広いね」
「それに思ったより静か……」
エレベータの扉が開き、飛び込んできたのは、無数のビリヤード台が整然と並んだ広大な空間。
空調の涼しい風がそよ吹く室内の照明は控えめで、その分台を照らす照明の明るさが、個々の空間をおしゃれに盛り上げています。
お客さんの入り具合は疎ら……騒ぎ声が聞こえる訳でもなく、むしろ静かでした。
「意外と空いてる……これなら待たずに入れるね」
「よし、突撃だ!」
「すみませーん、女子高生3人!」
「いらっしゃいませ、テーブルは何台ご利用ですか?」
「へ? あの……一台で良いです」
「畏まりました、では12番テーブルをお使いください」
「は、はい……ありがとうございます」
受付カウンターでキューを貰い12番テーブルに向かう途中……。
「台って、人数分借りられるのかな?」
「それって、一人でやるって事? ボーリングとはだいぶ違うね……」
ひそひそ声で話しながら、私たちはテーブルにつきました。
「さて諸君、ビリヤードのルールは知っているかな?」
「はい大佐! 先に9番を落とした人が勝ちです!」
「そう! ナインボール! 最初に一番少ない番号の球にさえ当てれば、何をどうやってもいい……9番ボールを一番早く落としたものが勝つ、過酷なゲームだ!」
智ちゃんたちの会話を、息を呑んで聞く私。
この数字が書いている球……9って書いてある縞々の球を落とせば勝ちなんだ……じゃあ、10~15の縞々は、何に使うんだろう?
「じゃあさっそく、やってみよう!」
「まずはこの木の枠を使って、9個のボールをダイヤモンドの形に組んで……1番が先頭、9番が真ん中……っと」
智ちゃんが手際よく仕切る中、私と由紀ちゃんはビリヤード用の長い棒(キューって言うそうです)を持って、その姿をポカーンと見守っていました。
「よっしゃ! じゃあ、誰が最初に打つか……ジャンケンしようぜ!」
「え……ジャンケン!?」
「そ、ブレイク・ショットはジャンケンで決めるの。ビリヤードは、最初に打つ人間が、一番有利に立てるんだぜ?」
「そーなんだ……」
知識のない私には、智ちゃんの講釈が絶対です。
私たちはジャンケンをして……勝ってしまいました。
「かー! 球輝の勝ちか……いいよ、ブレイク打って」
「でも私、どうすればいいか……」
「難しく考えるなよ! こう、台の真ん中に白い球を置いて、一番めがけて真直ぐ打てばいいんだって!」
「球輝ちゃん、がんば!」
智ちゃんたちの言葉に励まされ、私は長い棒を持ち、ヨロヨロと構えます。
正直、自分の身体をどう使えば上手く行くのか、さっぱり分かりません。
「い、いくよー……」
私が球を打とうとしたその時……。
ドゴォォォン!
物凄く低く、重い轟音が私の鼓膜を劈きました。
驚きに振り返ると、そこには……。
まさにブレイク・ショットを終えた彼女が、そこに佇んでいたのです。