C級ビギナー戦、そびえ立つチートチャイナ!
「C級ビギナー戦?」
「はい! 対全国の強化メニュー、タマちゃん強化戦略ですわ!」
伊庭紗絵美さん、私立郁鷲館女子2年B組、出席番号2番。
不良先輩に牛耳られたビリヤード部を嫌い、ホームで腕を磨き続けた熱血お嬢様。
そんな紗絵美さんの号令一下、私たちはトーナメント戦に出ることになりました。
「タマは池袋ロサのⅭ級ビギナー戦、私たちは新宿アシベのBC級戦か……」
「秘書を通じて、すでにエントリーは済ませてあります……公式戦ではない、ハウストーナメントですが、勝ちは譲りません事よ?」
紗絵美さんはやる気満々です。
私は、いきなり試合なんて、どうしたらいいんでしょう?
「渡会さ~ん・・・・・・」
私はよろよろと、風に吹かれる枯れ葉のように、渡会プロの練習テーブルにもたれかかります。
「タマちゃん!? どうしたの・・・・・・?」
驚いた渡会プロが、手を休めて私の身体を支えてくれました。
「私、私・・・・・・」
「私?」
心配そうに聞き返す渡会プロ。
「私、トーナメントにエントリーされてしまいました~!」
私は号泣しそうになります。
「来週のC級ビギナートーナメント・・・・・・勝たないと私、私・・・・・・」
「勝たないと、どうなるの?」
渡会プロが思いのほか真剣に聞き返します。
「勝たないと、伊庭さんにお尻ブレイクされてしまいますぅ~」
「は?」
もはやなんと言って反応すれば良いのか分からない表情で私を見つめる渡会プロ。
「ですから、ビリヤード部に伊庭さんという人がいて、個人力強化にハウストーナメントの参加を仕切ったんです、で、私はロサのC級ビギナー戦にエントリーを・・・・・・」
「伊庭っちて、コグノセンティの黒薔薇会の?」
「はい・・・・・・黒いマイキューを使う人です」
「なるほど、ありそうな話だ」
渡会プロは顎に手を当てると、納得のいった表情で頷きます。
「渡会さん、私どうしたらいいんでしょう? 今まで9ボールでトーナメントしたことなんてないのに、いきなりハンデなしの試合なんて・・・・・・」
「負けて来な」
プロは言いました
「え?」
「もう一度言う、タマちゃん、負けて来な」
「なんで!? だって試合は、勝つためにあるのに・・・・・・勝つのが目標じゃないんですか? なのに負けろって・・・・・・」
「ちちち、タマちゃん、負けろじゃなくって負けてこいっていってるの」
「ますます分かりません! 勝っちゃいけないんですか?」
「そりゃ、勝てるなら勝つ選択肢を選べって言うよ・・・・・・でも残念ながら、タマちゃんはまだそのステージに立ってはいない」
「・・・・・・」
「ごめんね、こんな言い方しか出来なくて、でもこれはとても大事なことなんだ・・・・・・」
「渡会さん・・・・・・」
「試合の空気を読む。これが出来なきゃ、甲子園には行けないよ? 勝つ気で頑張って、今は 負けて来な!」
「最後にもう一つ・・・・・・ビリヤードに必要なのはメンタルの図太さだ、勝てると思った球は、絶対に逃がすな!」
渡会プロが、そう言ってウィンクします。
私が出来ること、私がすべきことを、度会プロは教えてくれたのでした。
曰く、入れられる球だけ全力で入れてこい! と。
「はい!」
私の迷いと不安は消えました。
勝ち負けは関係ない、入る球を全部入れるだけだ、結果はその後!
かくして、人生初のトーナメントが、迫ってくるのでした。




