ナチュラル? ハイブリッド? マイキューを手に入れよう! 4
そして、1ヶ月後……。
「タマちゃん、キュー届いたよ!」
渡会プロからLineが入りました。
私は放課後に池袋ロサ会館へぶっ飛んで行き、憧れのキューとの再会を果たすのでした。
「お帰り、タマちゃん、これがキミのキューだよ」
「こ、これが私の、キュー?」
私は言葉を失いました、アダム本社から届けられたキューは、微塵の傷さえない完璧な表面をしていて……。
「傷が全くありませんね……」
「それだけじゃないよ、見て!」
「あ……」
MASTERPIECE OF MUSASHI
そのロゴが金色に輝いていました。
「それだけじゃないよー、ほら!」
渡会プロが指示したバット部分には……
Tamaki Ogawa
と、金文字の筆記体で刻印されていました。
「感動した? これが正真正銘、タマちゃんのキューだよ?」
渡会プロがニヤリと笑います。
「こんな……素敵、素敵すぎます!」
「これからタマちゃんは、このキューと一緒に泣いて笑って、ビリヤードの高みを目指していくの……勿論、仲間や私や葉山先生たちと一緒にね……どう? 感動した?」
「はい、小川球輝、感動しました! これからビリヤードを精一杯頑張ります!」
「それと、これはボクからのプレゼント……」
そう言って、渡会プロが差し出したのは、お洒落なキューケースでした。
「今はまだ1B1Sで良いけど、将来的には最低でも2B4Sは必要になるからね、私のお古だけど、これもあげる」
キューだけでなく、黒い革製の立派なキューケースまでもを私に譲ってくれる渡会プロ。
その期待度にプレッシャーがないと言えば嘘になるけど、ビギナーに毛が生えた程度の、C級ですらない私に対する施しには、異常なまでの優しさがあると感じ、さすがの私も委縮してしまいます。
「あの、渡会プロは、何で私にそこまで優しくしてくれるのですか?」
「うーん、タマちゃんが好きになっちゃったからかな? ビリヤードを何も知らなくて、それでも上手くなろうと一所懸命努力している……そんな姿に自分の過去が投影されて、放っとけなくなったと言うか、変な上級者に捕まってせっかく興味を持ったビリヤードを嫌いにならないで欲しいと思ったと言うか……ま、いろいろあるのよ」
「私はラッキーです、渡会さんや葉山先生の教え子として、ビリヤードを学べるんですから」
「ん、やっぱキミはいい子だ。これからも全力でサポートさせてもらうよ」
その夜、私はキューを抱き枕にして散々ゴロゴロと寝返りを打ち、深い眠りに落ちました。
後々考えると、それは無謀な行為で……寝相が悪くて折ってしまわないかと考えると、二度と出来ない夜を過ごしたのでした。




