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部室争奪戦、初めてのハンデ戦! 2

「……と、いう訳なんですよー(涙)」


放課後、私は池袋ロサ・ビリヤードに駆け込みました。

もちろん、渡会プロに泣きつくためです。


「なるほどねー、まあ対馬ちゃんらしいというか、何と言うか……」

「渡会さんは優雅ちゃんを知っているんですか?」

「そりゃあ知ってるよー、若干14歳で史上最強B級戦を制した少女勝負師だもん」

「それって凄いんですか?」

「凄いも何も、関東B級トーナメントの最高峰だからねー、これに勝ったらA級を名乗っても誰も文句は言わないってくらい凄いのよ?」

「対馬さん、上手いですもんね……」

「ま、彼女は思う所あってB級に留まるつもりみたいだけど、そこらのB級が束になってかかってもまず負けないだろうねー」

「ビリヤードって一対一じゃないんですか?」

「あ、これは失敬……タマちゃんが今覚える必要はないから、忘れて忘れて!」


渡会プロの視線が泳ぎます。

ビリヤードには、大勢でやる競技があるんでしょうか?

でも、私は目の前に置かれた窮地にしか関心がなく……矢継ぎ早に質問を続けます。


「花音ちゃんは? 花音ちゃんはどうです?」

「彼女もまあ、凄いんじゃないかな? 理論派というか、少し頭でっかちな所があるけど、球筋の研究を熱心にやっている。タイトル・ホルダーではないけど、理論だけなら対馬さんに匹敵するね。むらっ気を無くせば、すぐにでもA級に転向出来るんじゃないかな?」

「当然、B級相手なら……」

「攻めの責め、守りの責めを熟知している子だから、まず負けないだろうね」


二人とも、私の予想もつかない境地に立っている……不良先輩たちの腕は定かではないけど、誰がどうかかってこようと負けないだけの自信があるから、あんな無茶に出たんだ……。


お二人の評価を聞いていると、一緒にやって来た麻耶ちゃんが、私の次の質問を待つように、心の尻尾をパタパタと振っています。


「あ、あの、じゃあ、麻耶ちゃんも……?」

「麻耶? 麻耶は……普通のB級だね」


「そんなぁ!」


渡会プロの素っ気ない一言に、麻耶ちゃんが縋り付くように悲鳴を上げます。


「渡会さん! 自分、レッスン頑張ってますよね? あなたの一番弟子ですよね? 普通とか……他に何が取り得とか、ないんですか? 例えば、出しはいまいちだけど、入れなら負けないとか!」

「ごめんごめん、確かに麻耶の入れは凄いよ。通ってさえいれば、どのポケットにも確実に入れて来る……厚みとスロウ、そして力加減を自然に見越せる感覚を持っている、それはとてもすごい事なんだよ?」

「えっへっへ……まあ、それほどでも……ありますけどね?」


麻耶ちゃんが嬉しそうに照れながら鼻の頭をポリポリと掻きます。


「でも!」


そんな麻耶ちゃんに、渡会プロは真剣な表情で……。


「入れだけでは駄目、単なる掃除屋になって、勝ちを譲った試合が何回あった?」

「う……」

「でもまあ、今回は闘志に燃えてるようだし、悪い癖さえ出さなければ、B級の上相手でも五分の勝負に持ち込めるんじゃないかな?」

「はい、がんばります!」


渡会プロの冷静な分析によると、ここまではおおよそ2勝確実。3勝目は50%。

勝負を決めるのは……。


「問題は、タマちゃんだねー……」


そう、そうなのです、問題は初心者である私なのです。

私の負けを確実として、仮に麻耶ちゃんが負けてしまったら勝ち星は5分、勝ちを逃した私たちに先輩は難癖をつけて来るでしょう。

それだけは、それだけは絶対に避けねば……。


「あの、9ボールって引き分けは……ない、ですよねぇ……」

しゅんと俯く私の背中に、渡会プロの言葉が響きます。


「しゃーないなー……ちょっと厳しいけど、目鼻つけてやっか!」

「渡会さん……?」

「私の時間をもう一時間、一週間限定で貸してあげる。9ボールの勝ち方を教えてあげるよ。ただし、例によって……」

「はい、渡会さんの前以外では、一切球は撞きません!」

「麻耶も一緒にやるよ? タマちゃんの入れを引き上げて、同時に自分の出しを引き上げる事!」

「サー! イエッサー!」


麻耶ちゃんが直立不動で敬礼を送ります。


特訓に次ぐ特訓……私は、試合に勝つ要素を叩き込まれることになりました。


全てはここから始まる高校生活の為、何よりも自分自身の意志を貫き通すため、私には前に進むしか、選択肢がないのだ!


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