振り、厚み、スロウ……ボーラード大特訓!:5
1ヶ月はあっという間に過ぎました。
私のボーラードは0点から5点、5点から12点、12点から20点と、着実に点数を伸ばしていきました。
渡会プロは色々な基礎を教えてくれました。
狙った厚みに正確に撞く事だけを考える事。
動かすべきところ以外はすべて身体を止める事。
球を撞いた後もしばらく身体を静止状態で残す事。
そして、そして……。
「41点……やったね、タマちゃん!」
練習最終日、私はついに40点の壁を破ったのです!
「やりました……私やりましたよ、渡会さん!」
「正直無理だと思っていたけど……まさか本当にやるなんてね」
「渡会さんのお陰ですよ……私一人じゃあ、とても無理でした」
「ううん、これは全部タマちゃんの努力が生んだ成果だよ? いくら教えても、肝心の本人が頑張らなくちゃ、結果なんて出ないからね……それはボクが一番よく知っている」
渡会プロの笑顔に、どこか寂し気な気配を感じました。
「ともかく、後は本番! ボクが教えた事をちゃんと守って、ビリヤード部を復活させてきな?」
「はい!」
「あと、これを貸してあげる」
「これは……」
それは、小さなキューケース。
中には使い込まれた1本のキューが入っていました。
「これはボクがアマチュア時代に使っていたプレーキューさ。大したものじゃないけど……思い出の品って奴? そこらのキューよりはまともに撞けるはずだよ」
「そんな大切なモノ……いいんですか?」
「うん、タマちゃんの頑張りに免じて、特別に貸してあげる。元々傷だらけだから、折らない限りは何をやってもいいよ?」
手に取ったキューには、大小様々な傷と凹みがありました。
その使い込み具合から、渡会プロがこのキューでどれだけ努力して来たかが伝わるようでした。
「ありがとうございます! 大切に使わせて頂きます!」
「うん、頑張って来なさい!」
私はキューケースを大事に抱えると、走ってロサを後にしました。
明日……明日ですべてが決まる……始まるのか、始まらずして終わるのか。
私の、私たちの青春は、明日の私にかかっているんだ。
キューケースを抱いたままベッドから天井を見つめていると、微かな震えが身体を支配します。
眠れないかと思いきや、そこは健康な10代。
すぐに眠気が襲って来て、私はキューを抱いたまま、深い眠りに落ちて行きました。
そして翌日の放課後、約束の時……。
プレハブ小屋には私を始め、ビリヤード部志望の対馬さんと森田さん、そして大西さん。
そして何より憧れのお姉様、葉山先生が集いました。
「さて、小川さん……約束は覚えているわね?」
葉山先生が腕を組んでこちらに睨みを効かせます。
「球輝、がんばれよ!」
「アナタに全てが掛かっているんですからね?」
「球輝ちゃん、ファイト!」
三人の声援を受け、私はラックを組み、手球をヘッドスポットに置きました。
「行きますよ……ブレイク!」
学園生活の運命を決めるボーラードが今、始まりました!




