振り、厚み、スロウ……ボーラード大特訓!:4
「じゃあ、次は自力でやってみようか?」
渡会プロが言います。
「え? ナビしてくれないんですか?」
「当然、本番じゃあ、誰もナビしてくれないよー?」
「でも私、球の厚みなんて……」
「だーいじょうぶ、さっきタマちゃん言ったよね? 厚み8分の1って……それだけ見えてれば、大概の球は入るから」
「でも……」
「いいから撞く! 30分経っちゃうよ?」
「分かりました……」
私は不安にかられながら、次のフレームをブレイクします。
10個の球は台上にまんべんなく散り、特に難しい球はありません。
「さあ、やってみよう!」
「はい!」
私は意を決し、的球の一つに狙いを絞りました。
結果……。
「二連続ガーター……」
「あはは! まあ、そんなモノだよねー!」
渡会プロが笑います。
私はさすがにムッとして……。
「やっぱり駄目じゃないですか! もっとちゃんと教えてください!」
と抗議しました。
すると、渡会プロは……。
「さっきも言ったけど、キミの狙いの感覚は極めて正しい。僕はキミを疑っていないよ? キミを疑っているのは、キミ自身さ」
「?」
「自分が決めた厚みに撞く事を疑うから、右に左にブレちゃって、結果として球を外すの」
プロがニヤリと笑います。
「一度狙いを決めたら、自分を信じて、目隠しでもそこに撞く……いい?」
「試しにやってみようか? さっき外したこの配置……」
そう言って、渡会プロは球を配置します。
「冷静に、いつも通り、自然に狙い、構えて……」
プロに言われるまま、私は厚みを測り、構えます。
「素振りして……方向は合ってる?」
「はい……」
「じゃあ、目をつぶって」
「え!?」
私は言葉を疑います、凝視しても入らない球が、目をつぶって入るのでしょうか?
「いいから、言われた通りにする!」
「はい……」
私はプロに気圧され、構えたまま目を瞑りました。
「よしよし。じゃあ、撞いてみて……」
プロに言われるまま、キューを振る私。
手球が的球に当たる音がし、程なくして、ポケットに沈む音が続きました。
「あ……」
目を開けると、渡会プロの微笑みが移ります。
「ね? キミの狙いは間違っていないんだよ、もっと自信を持って、練習して行こ?」
私は間違っていない……こんな事を言われたのは初めてでした。
「もっと自分を信じて……ね?」
渡会プロの言葉に、私は涙が滲むのを覚えました。
「じゃあ、も一度……ブレイクからやってみようか」
「はい!」
私は確実に上達の道を歩んでいる、渡会プロのお陰で……。
私が恩返しするには、ボーラードで40点を取り、ビリヤード部を復活させる事だ。
キューを握り込む私。
「こら! キューは必要以上に握り込まない!」
「す、すみません……」
そんなこんなで、私は運命の時を迎えるのです……。




