振り、厚み、スロウ……ボーラード大特訓!:1
対馬さんたちとは、あれからすぐに意気投合しました。
クラスは違うけど、昼休みには一緒にお昼を食べています。
「そっかー、ロサの渡会さんにねー……」
「センターショットから教えてもらってるんです……」
「で、モノになりそうなの?」
「一応、一ヶ月で目鼻は付けてくれるって約束してくれました」
「ま、頑張るのはタマちゃんだけどね?」
「そーなんですよー……! 本当に出来るんでしょうか……」
「そんなこと言わないで、ウチらの高校生活が懸かってるんだから」
「対馬さん、言わないで下さいよー……ただでさえプレッシャーなんですから……」
「ま、どちらに転ぶにせよ、渡会プロにお任せするのが正解でしょうね……私たちがアドバイスすると、かえっておかしくなっちゃうでしょうし」
「船頭多くして船山に登るって奴だね……渡会プロなら大丈夫だよ、多分」
ランチの会話からして重苦しくて申し訳ないのですが、私の不安とプレッシャーは日に日に増していきます。
「所でさ、タマちゃんは何で敬語なの? 同級生なのに」
「それは、皆さんビリヤードの先輩ですし……」
「それは違うわ、私たちはこれから三年間、一緒にビリヤードをして過ごす仲間じゃない」
「そうだよ、もっとフランクに、打ち解けて行こう?」
「よし! 今から敬語禁止! 名字で呼ぶのも禁止! お互い名前で呼び合おう!」
「対馬さん……」
「だから、私は優雅だって!」
「優雅……さん?」
「優雅ちゃん!」
「私は花音」
「私の事は麻耶って呼んでね?」
「みんな……ありがとう!」
私は胸が熱くなって……瞳の端に涙を浮かべました。
「ま、タマちゃんのチャレンジが成功するまで、ウチらはホームでまったりとしているからさ、渡会さんとの練習に集中しな?」
「ホーム……ですか?」
「常連になっているビリヤード場の事よ、私と優雅ちゃんは高田馬場なの」
「私はロサだよ、何を隠そう……ね」
「え、麻耶ちゃんそうなんです……じゃなかった、そうなの?」
「うん! だからタマちゃんの練習見守ってあげる!」
「こーら、そんなことしたらタマが緊張するでしょうが! アンタは私たちと一緒に来るの!」
優雅ちゃんに襟をつままれ、連れていかれる麻耶ちゃん。
みんなで一斉に笑い出します。
素敵な友達……同じ目標を持った仲間……彼女たちの為にも、私……頑張ります!
放課後、ビリヤード・ロサ……。
「お帰り、タマちゃん……さっそく始めよっか?」
「はい、よろしくお願いします!」
微笑む渡会プロ。
キューを握る私の手に力が籠ります。
「じゃあ、まずは基本的な用語の解説から……ストレートじゃない、球についた角度を振りと言います、そして、振りの角度を表す言葉が厚みです」
「振りに、厚み……」
「例えばこの球……」
渡会プロが的球を一個転がし、ヘッドスポット付近に置きます。
次に、手球をフットスポット付近に置いて……。
「この球を左のコーナーに入れたい時、タマちゃんならどうする?」
……待ってました! 実はネットで予習をしていたんです……これは知ってますよ、イメージ・ボールです!
「はい! ポケットの中心と的球を一直線に結び、的球の背後に手球が来るように狙います!」
「ブー! 不正解!!」
「え!? なんで!?」
私の知識を一瞬で砕いた渡会プロがニヤリと笑います。
「分からないでしょう? じゃあ、これを使って実際に見せてあげる……」
渡会プロはそう言って、キューの先端に手球が付いた器具を取り出しました。
そして私は見る事になるのです、ビリヤードの「入れ」の真実を……。




