ビリヤード部を作ろう! 顧問は憧れのお姉様!?:4
「なるほど、そんな事がねー……その先生、ハッキリ言ってビリヤード部を再開させる気はないね……」
渡会プロはため息をついて、天を仰ぎます。
その仕草に私は絶望感を感じ、眼の端に涙を浮かべます。
「私だけの問題じゃないんです、対馬さん、森田さん、大西さん……このままじゃあ、ビリヤードがやりたくて学校に入った人たちに迷惑が掛かってしまうんです、何とかなりませんか?」
私がすがり付くと、渡会プロはますます困った顔になりながら……意を決したように、鼻を鳴らします。
「まったく……分かったよ、タマちゃん! これから一ヶ月間、私の時間を一日30分だけ貸してあげる……ボーラードの特訓をしよう!」
「渡会さん……」
「その代わり、自分勝手な練習はしない、球を撞くのはボクと一緒の30分だけだよ……約束出来る?」
「はい!」
渡会プロのウィンクに、私は精一杯大きな声で返事をしました。
「まずはラックね……いい? ラックは固く組む事! ボーラードに限らず、ビリヤードのラックは何よりも大事なの……ラック・トラップって行為があるくらい、ラックが悪いとその後のプレー全てが悪くなるの。分かったら組んでみて……」
「はい!」
「ど、どうでしょうか……」
「どれどれ……全然だめだね……見て見なさい? 先頭の三個に隙間がある」
球の先頭をよく見るように促され、言われた通り近付いてみると、そこにはわずかな隙間が発生していました。
「隙間があるとダメなんですか?」
「論より証拠……このラックを私がブレイクして見るね?」
渡会プロは手球をフットラインの中央に置くと、ひと呼吸し、全力スイングで球を撞きます。
「あ……!」
葉山先生と同じ、ドゴォォン! という轟音……かと思いきや、カキン! という軽い音が響きます。
しかも、テーブル上の球は……全然散りません。
特にラックの後ろ側の4個は全くと言って良い程動かず、固まったままでした。
「ほら、全然球が動かない……私はフル・ブレイクしたんだよ?」
「すみません……」
「謝る所じゃないよ……じゃあ次はボクがラックしてみるから、ブレイクして見て」
そう言って、渡会プロはラックを組むと、私に撞くように指示します。
「あの、ブレイクってやった事がないんですけど……」
「いつもやってるセンターショットの強さでいいよー」
「分かりました……」
促されるまま、お世辞にもハードとは言えない強さで手球を撞くと……。
「あ!」
10個の球はテーブル状を走り回り、ラックは見事にテーブル全体に散っていきました。
「どう? 散るでしょう?」
「はい、すごいです……」
「今はラックシートがあるから、ほぼ完璧なラックを組めるけど……このウッドラックで隙間ないラックを組めるようにならないと、何かと不便だからね、ここで一緒に覚えちゃおう!」
渡会プロはそう言って、ニカッと笑いました。
恐らく、対馬さんたちにとっては常識でしょう……でも私には、ここから始めるしかなかったのです。
こうして、私のボーラード一色の一ヶ月間が始まりました。




