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S.A.K.U.R.A.~蒼の魂~  作者: 猫人間
【第壱章】七人の侍
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その伍―魔物の過去―

龍二と鞍馬を残し、一時退却した綾人達。

鞍馬武臣の過去が明らかに!

その過去に隠された衝撃の真実とは!?

 一時、退却した綾人達は森を抜け、刀の切先のような急斜面を滑るように走り下りていく――

 そして山の麓に辿り着いた。


 桜の森程ではないが、此処にもいくつか桜の樹が立っていた。

 かつて此処には小さいながらも村が存在し賑わいをみせていたが、今は民家の残骸らしき材木が所々残されており、殺風景な場所と化している。


 綾人達は恭徳の怪我の療養も含め、しばらくの間そこで待機することにした。


 誰一人話すことなく皆、荒ぐ息を落ち着かせていた。

 ただ一人、恭徳だけが俯き、目からは涙が溢れ、すすり泣く声だけが聞こえていた。


「僕のっ……僕のせいだっ!! 僕のせいでっ……龍二さんは……っ……」


 そんな恭徳の肩を抱いて、直樹が慰める。


「そんなわけないだろ。ほら泣くなよ恭徳。龍二を信じろ。あいつなら大丈夫だ。きっと鞍馬を説得――」


 直樹の言葉を遮り、恭徳が直樹の手を振りほどくと叫んだ。


「そんなこと分かんないじゃないかっ!! いくら龍二さんが強くたって……あの人は一切聞く耳も持たずに襲い掛かってきて! あの人に人の心なんてありゃしないんだ!! あんな人っ……仲間じゃないっ――!!」


「恭徳っ!!」


 ――パンッ!!!!


 突然、綾人が立ち上がって恭徳の頬を張り倒した――

 衝撃で恭徳が叩かれた右頬を押さえ地面に倒れ込む。


「おいおい綾人!! やりすぎだ!!」


 慌てて直樹達が止めに入った。


「仲間じゃねぇだと? ふざけるな!! 確かにあいつは俺達のこと信用してないし、ちょっと怖いけど……でもな、仲間なんだよ……あいつも。俺達の大切な仲間なんだよ。俺な、丈さんから聞いたんだ。あいつは、俺達じゃ想像も出来ないような心に深い傷を負っているんだ――」


 ***


 かつてはこの桜丘にも人が住み、年中過ごしやすく恵まれた気候に人々は感謝し、自然と共存しながら暮らしていた。

 鞍馬も仲間達と共に、先代から代々受け継がれてきたこの地と村を守りながら平和に暮らしていたのだった。


 ところがある時、欲を出した者が、この地と桜を我が物にしようと目論み、反乱を起こしたのだった――


 その者は――かつて共に桜丘を守っていた、鞍馬の仲間だったのだ。

 仲間であった鞍馬を裏切り、桜丘をめぐる大抗争が起きた。


 そして村全体が戦場と化した――


 鞍馬はこの桜丘を守るために、かつての仲間だった者と戦うことになってしまったのだ。


 なんとか桜丘は守り抜いたものの

 その代償はあまりにも大きすぎた――


 鞍馬が裏切り者を倒した時には、もう誰も居なかった。

 この抗争の末、生き残った者は、鞍馬ただ一人だったのだ――


 かつての村は炎に包まれ、瓦礫の山と化していた。

 鞍馬は灰と化していく故郷を見て、呆然と立ち尽くし崩れ落ちた。


「うわぁぁぁぁぁぁア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」


 鞍馬の悲痛な叫びが響き渡った。


 しかし、その声は誰に届くわけもなく虚しく通り過ぎていくのみである――


 鞍馬は滝のように溢れ出る涙を流し、声が涸れるまで何度も何度も泣き叫んだ。


 その戦いで鞍馬は、家族も友人も仲間も全て失ったのだ――


 突然仲間に裏切られ、大切なものを全て失った鞍馬は心を閉ざし、一切人を信用することが出来なくなってしまった。


 その後、ろくに食べず眠らない日々を過ごし、身体は衰弱しきっていた――

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