その拾捌―宣戦布告―
一難去ってまた一難――!?
突然、現れた謎の少年達。
果たして彼らは何者なのか?
その衝撃の事実が明らかに――!!
(――子供!?)
七人が驚くのも無理はない。
突如、血腥いこの戦場に、まだ十五、六の成人にもなっていない少年が現れたのだ。
七人が動揺を隠しきれない中、そんなことは気にする様子もなく、颯爽と歩いてくる二人の少年――
先を歩く少年の、一つに結んだ長髪が右に左にと揺れる様は馬の尾を思わせた。
その後ろに着いて歩く少年は、無造作に広がる短髪に、前髪を目が隠れる程度まで下ろし、そこから僅かに見える瞳は伏し目がちである。
二人とも線の細い体付きをした少年だった。
そして二人は距離を保ち、七人の前に立ち止まった。
「おいおい、なんで子供がこんな場所におるんや!」
健二郎の問いかけに、長髪の少年が冷静に答える。
「この闘いの行末をずっと陰ながら見守ってきましたが、この闘いの"関係者"としては是非とも直にお目にかかりたいと思いましてね」
少年はその容姿以上に大人びた落ち着いた声だった。
「関係者だと!? お前達何者だ!!」
綾人達は警戒の色を一層強める。
「おっと、これは拙者としたことが、失敬。拙者の名は龍之介。そしてこちらが弟の――」
「匡孝だ……」
兄よりも背は三寸(※九センチ)程高い短髪の少年が、高低音の安定しない今にも消え入りそうな声で言った。
「以後、お見知り置き」
そう言って龍之介と名乗る少年は微笑むが、その瞳の奥は一切笑っていなかった。
しかし、兄弟というが顔は似ても似つかない二人だった。
少しの違和感を覚えるも、二人ともよく見れば顔立ちの整った顔をしており、もう少し成長すれば龍二に負け劣らない美形になるだろう。
「そして拙者達兄弟のもう一つの異名は"山猫"。山賊です」
龍之介の後に続き、匡孝が口を開く。
「山賊と言っても、野蛮な連中とは一緒にするな……まあ俺達は生きるために多少の手荒な真似をする事はあるがな……」
兄とは対照的に少々乱暴な言い方をする匡孝だったが、その奥の瞳が一瞬、怪しく光った気がした。
「――ついでに、この闘いの"首謀者"です」
「――はぁ!?」
突然、まるで現在の時刻を告げるかの如く、あまりにも事何気に暴露した龍之介の言葉に、皆思わず耳を疑った。
「驚かれるのも無理はありません。ですが紛れもない事実です」
動揺する大人達の様子を、楽しむかのように龍之介が言った。
「はっ、嘘だろ……? こんな子供が一体どうやって――」
「この世に妬み不満を抱いている方々は山ほどいます。そういった方々を集め動かすことなど実に容易い……」
淡々と語る龍之介の言葉にも、何かの間違いではないかと疑った程だ。
「そして世界の五本樹の伝説は誰もが知っていて、尚且つこれを利用しない手はありませんでした。おかげで予想以上に事が運びましたよ」
未だに信じられないが、どうやら紛れもない真実のようだ。
この武士櫻の闘いの黒幕――その正体は、まだ成人にも達していない二人の少年兄弟だったのだ。
「大体、どうしてこんな事をしようとしたんだ!」
あまりにも予想外の事態に、何とか冷静さを保ちながらも、綾人が根本的な事を聞いた。
「この世に復讐する為です。我々兄弟をまるで野良猫の如く扱ったこの世に。この世を自分達の手で終わらせたかったのです」
先程の龍之介の話し方とは若干異なり、心の奥底から溢れ出る感情から出た言葉に思えた。
――が、すぐさま元の表情に戻ると、作り笑いを浮かべて言った。
「……と、一応それなりの理由を述べてみましたが……理由などありません。ただの暇つぶしです。何か面白いことを求めていたのです」
これが本心なのか定かではないが、龍之介は構わずに話を続けた。
「彼ら"捨て駒"としては、良い働きをしてくれましたよ」
「"捨て駒"だと……?」
冷酷非情な龍之介の言葉に、綾人はわなわなと震える拳を握り締める。
「おかげで中々、面白い劇を見せて頂きました」
「面白いだと? ふざけるな!! この闘いでどれだけの人が死んだと思ってるんだ!」
とうとう怒りを抑えることができなくなった綾人が掴みかかろうとするのを、慌てて直樹達が止めた。
そんな綾人の叱責にも、動じることなく一切表情を変えない二人。
見た目は普通の子供と変わらぬ容姿だが、その目の奥は何も映していない。
まるで喜怒哀楽の喜びと楽しみの一切を知らずに育ってきた。
そんな印象を受けたのだった。
「これは失礼しました。少々言葉が過ぎたようですね。お気を悪くされたのなら謝ります」
どこまでも冷静沈着な龍之介の態度に、流石に不気味さを感じた綾人は若干、身を引いた。
その様子を見て、薄らと目を細めた龍之介は突如、体勢を正すと七人をゆっくりと見渡して言った。
「さて、余談はこれくらいにして、そろそろ本題に入りましょうか……」
龍之介に続き、匡孝が前髪の影から目をのぞかせ、龍二と臣を交互に見つめて言う。
「龍雲院の衣笠龍二。そして"桜丘の魔物"、鞍馬武臣――」
匡孝の言葉を龍之介が引き継ぐ。
「特にお二人は、世界最強の侍とお見受け致しました。是非とも、拙者達とお手合わせ願いたい」
龍之介はそう告げると、口端を吊り上げ不敵な笑みを浮かべたのであった――
遂に明らかになった黒幕――
次回、衝撃の展開が!?




