その拾肆―輪廻転生―
上半身の、まるで芸術品のような肉体美を惜しげもなく披露しながら、龍二はゆっくり刀を構えた。
「――なんだその成りは」
「馬鹿が。それではかえって斬りやすくなるというものよ!」
確かに生身を晒している今の状態は、防御力においては劣っていると言わざる得ない。
龍二を取り囲む敵陣が嘲笑うも、龍二は顔色一つ変えなかった。
そんな龍二の様子を、敵を迎え撃ちながらも、確認した綾人達は、
「おっ、あいつ遂に本気だしてきたな――」
「よしっ! じゃあ、俺らも――」
それぞれ無言の頷きをすると、
綾人、英莉衣、臣の三人は、勢いよく上衣を脱ぎ捨てた――
健二郎は恭徳を背負っている為、前をがら空きに、直樹は右半分のみをはだけさせた。
それぞれの逞しい筋肉がうなりをあげて敵対する者共を威嚇する。
『うぉぉおおおおおオオオオオ――!!!!』
その瞬間、何かが解放されたのか、五人が腹の底から気合を発した。
一見すると、上半身裸体の男達が雄叫びをあげている様は、とても奇妙に思えるだろうが、これが彼等なりの気合の入れ方なのだった。
「――なんだ? なんだ?」
「あいつら、遂に気が狂ったか」
異常な光景に、僅かに引き距離を置く敵陣。
「なんとでも言うがいい!」
「今の俺達に、怖いものなど微塵もない!」
綾人と直樹が凛とした強さで言った。
英莉衣、臣、健二郎がそれに続く。
「何故ならば――」
「俺ら七人集えば――」
「最強やからや! 」
最後は龍二を含めた六人が一斉に、
『俺達の絆は全てを凌駕する――!!』
その時だった――
それまでずっと、この闘いの行末を、沈黙し見守り続けていたそれが遂に動き始めたのだ。
それというのは、他でもない――武士櫻である。
突如、武士櫻の幹が淡く光ったかと思うと、蒼い光の渦のようなものが湧き出した。
『此処に集りし七の魂。一瞬の生命を燃やし、潔い生き様で爪痕を遺す者成り――』
(…………?)
突然、頭の中に響く声に、辺りを見回しながら戸惑う六人。
どうやら、この謎の声はこの六人にしか聞こえていないようだ。
『その未来を憂うことなく、刹那に火花を散らし焦がし尽くす魂――甦りし』
突如、風が吹き荒れ、武士櫻が枝を揺らす。
散りゆく花びらが、まるで生き物の如く七人の身体を包み込んでいく――
その瞬間――辺りの敵陣の姿が消えた。
眼光に広がる真っ白な世界の中、七人の姿だけが残った。
(…………これはっ!?)
その七人の身体を、蒼い光が天を翔る龍の如く、円を描きながらゆっくり取り巻いていく。
『真の大和魂――現在再び輪廻転生する――』
同時に七人の瞳が――恭徳は目を閉じている為、確認できないが――蒼く輝いた。
そして、辺りは再び元の情景に戻った。
「なんだ? 今のは……?」
今のは幻か、はたまた一炊の夢か――
気がつくと、それまで離れた場所で闘っていた六人は――健二郎に背負われる恭徳含め――七人全員が同じ場所で横一列に整列する形で、その場に立っていたのだった。
だがそれ以外で、特に何も変わった様子はなかった。
しかし心做しか、以前よりも力が漲るようだ。
(……これはまさか?)
噂によると、世界に存在する伝説の五本の樹には、それぞれ「創世神」とよばれる守護神が憑いているとされている。
あれは武士櫻に宿る守護神の声だったのか――
それは、武士櫻のみぞ知るである。
何れにせよ、現在再び、勢いを取り戻した六人の迫力は凄まじいものだった。
それぞれ眼光に映る敵陣を見据えると、ゆっくりと刀を構える。
「行くぞぉ!!」
『おおおおおおおおお!!!!』
綾人の掛け声と共に、奔流のような勢いで敵陣に突っ込んでいく三代目侍――
闘いの火蓋が再び、切って落とされた――
遂に武士櫻の魂を継承した七人――
その力は如何に!?
次回、三代目侍が暴れ回るーー!!




