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S.A.K.U.R.A.~蒼の魂~  作者: 猫人間
【第壱章】七人の侍
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その壱―旅の仲間―

  ――時は神代曙歴二三二二年。

  桜花吹雪く三の月。


  武士櫻のある場所から十里(※四〇キロメートル)程離れた所にある、地面から鋭く突き出た岩が辺りに転がり足場の悪い急勾配を登っていく六人の男の姿。

  男達の腰には皆、刀を携えている。


  先頭で先を急ぎ進んでいくのは、栗色の髪色に前髪を横に流し目尻の上がった細目が特徴の小柄な男。

  その男の後を必死に追う先頭の男とは対照で、六尺(※一八〇センチ)を超える長身。強靱な肉体が垣間見える体格の良い黒長髪の男。

  その後ろに続く小麦色の肌に彫りの深い顔立ちの男と、その隣でくっきりとした二重瞼でしんどそうな表情を浮かべる男。

  その様子を見て苦笑いしながら歩く、先頭の男と同じくらい小柄で、無造作に広がる金色の髪が特徴的なこの中で一番若い男。

  そして最後に少しうつむき加減で一言も発さずに歩く烏のような黒長髪を後ろに束ねた男。


  二里(※八キロメートル)ばかり大蛇のようにうねる急勾配を皆、這うように登っていく。


「お~い! 綾人!! 速いよぉ~! ちょっと休憩しようぜ……」


  この中の隊長である長身の男、金剛直樹(こんごうなおき)が先頭の男に声をかける。


「なんだよ直樹。もう疲れたのか? お前らも……しっかりしろよ」


  先頭を歩いていた男、もう一人の隊長である朝霧綾人(あさぎりあやと)が振り向き、呆れ顔で後ろの連中を見やる。


「あかん……もうダメや……足が動かん……英莉ちゃ〜ん~、ちょっとおぶってくれや~ぁ」


  独特の故郷(くに)言葉で語るのは、疲れてだれている二重瞼の男、茂庭健二郎(もにわけんじろう)

  健二郎は隣にいた男に寄りかかる。


「健二郎……自分で歩けよ……」


  苦笑いしながら、健二郎の手をそっと振り払う小麦肌の男、熊谷 (くまがい)英莉衣(えりい)


「えー、英莉ちゃん……なんか冷たいやんか~」


  健二郎がふてくされながら英莉衣にまとわりつく。

  その様子を見て金髪の男、望月恭徳(もちづきゆきのり)が苦笑いしながら、


「健二郎さん……甘え過ぎです……」

「なんやなんや年下のくせに!! 生意気やぞ!!」


  健二郎が恭徳の胸ぐらを掴んだ。

  喧嘩っぱやい健二郎は何かと、この恭徳とやり合うのであった。


「おいおい、お前ら止めとけって! 無駄な体力使うだけだぞ!」


  直樹が慌てて二人を止めに入る。

  その光景を困り果てながら見ていた綾人が、


「あーもー、お前らやめろって! おい!! 龍二!! お前からもなんか言ってくれよぉ!!」


  先程からこの状況に全くの無反応であった一番後ろの男。衣笠龍二(きぬがさりゅうじ)が顔を上げる。

  その顔立ちは凛とした瞳に筋の通った鼻筋と口髭が特徴の美形だった。


「ああ……」


  しかし龍二はそっけなく一言だけ発すると、また顔を背けてしまう。


  非常に冷淡だが、その心地よい低音の声といい顔といい、大人の色気が滲み出ていて、もし龍二に迫られたら世の中の女性全員一発で"オチて"しまうことだろう。

  だが、龍二は一匹狼で基本誰とも話すことはなく、皆とはどこか一線を引いているようだった。


  とても締りがあるとは言えぬこの一味に、綾人は途方に暮れていた。


(本当にこんな連中で大丈夫なのか? 本当に俺達だけでやれるのかな……)


  綾人と直樹。この二人の隊長は、ある人の銘を受け、とある重大な任務を任されていたのだった。


慣れない長編ですが、何卒宜しくお願いしますm(_ _)m

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