本当のステータス
ほっと安心した吐息が聞こえた。
「受けるか。そう言ってくれてうれしいよ。知らない人物からの
話なんて信用が無いからね」
インターネット社会の昨今ではそうでもないが、と呟きながら、
シュージは続ける。
「ところで、コウジ君。プロフィールのプライバシー設定を
手入れしてないだろう?
君が同盟やグループに所属していない事、400位のアリスちゃんの
保護者替わりかつ、兄妹であること、それがバレバレだよ」
「!そこまで…気をつけます」ほとんどの個人情報だ。
「それで、プライバシー設定を作ると、本当のステータスが
出てくるようになってる」
それはなんだ?本当のステータス?
「分かりました」
「支援の細かい話は明日にしよう。今日は君に、
会ってほしい人がいるからね。排他区の近く、東門に、
小便小僧の像があるだろう?
その人に三十分ほど後、十一時三十分にそこに行くように言ったから、
君も行ってみてくれるかな」
この人はそこまでしてくれるのか…と呆気にとられつつ、返事する。
「…はい。行ってみます」
あ、これも言わなくっちゃ。
「支援の話は有難うございました!」
「じゃ、これからもよろしく。明日、またね」
冷たい感じを一切受けない言い方で、シュージは電話を切った。
見知らぬ人とこんなに話すとは思わなかった。
画面が回復され、通信画面からステータスの画面へ戻る。
〈スキャンが終了しました。適応しています…〉
装備はたいして変わらなかった。壁に寄りかかって
周りを見渡すと、前回の更新地との共通点は見当たらない。
〈装備のスキャンを開始しますか?〉
すぐにキャンセルする。
どんな条件でスキャンされるのか。
プライバシー設定を見つけて、とりあえず名前と性別以外をすべて非公開にした。
「あ、にいちゃー!遅いよー」
大きい声で僕を呼ぶ妹が見えた。
「しいー!静かに」
そう言いながら、この妹の変わりように驚いた。
「髪をとかしてもらって、切りそろえて貰ったの!」
大きなおでこを隠すように、眉の若干上で前髪が切りそろえられている。
髪だって膝に届きそうだったのを、背中の途中で
切られてしまったようだ。
「ずっと待ってたよ。見てこれ!これも髪が変わった」
「どれどれ」
妹のカードに、妹と同じ髪型のキャラクターが表示されている。
「しばらくここにいたとき、画面が変わってね」
「…ここで立ち止まってたの?」
「うん」怪訝そうな顔をしながら頷く妹。
カードが装備を読み取るなら、立ち止まるとスキャンが
始まることになるのか。
ああ、そうだ。妹のプライバシー設定をしなければ。
「このカードの設定をいじらないと、知らない人に
アリスのこと知られちゃうから、貸してくれる?」
「むっ。自分でやる。やり方教えて?」
そうだった。アリスは自分のことは自分でやりたいんだった。
僕はしばらく考えて、答えた。
「分かった。まず、この緑のところを押して」
アリスのプロフィールは、名前と性別、そして姿を公開したままにした。
設定が終わった頃、僕とアリスの本当のステータスと言うものを確認した。
Lv:1
順位:399
名前:コウジ
性別:男
攻撃 *
防御 **
素早さ***
教養 *
頭脳 **
Lv:1
順位:400
名前:アリス
性別:女
攻撃 *
防御 *
素早さ***
教養
頭脳 *