勝者とぽんこつ
試合が始まった。
試合前の宣言通りに自分だけで戦う為にエルネを後ろに下げる。
その様子を見ていた観客達のブーイングに罵声が上がる。
罵声の内容?
黒い感情がふつふつと沸くレベルだと思ってくれればいいよ。
問題は相手側だ。
当然だがマツバが前衛でアザレアが後衛だ。
ただマツバの構え方が良く知っている物だった。
日本の居合の構えをしたのだ。
実際に見た事は無いが剣筋が見えないだろうと予測はした。
そこに魔法の援護に強化魔法も絡まってくる?
え、これ勝てる?
冷や汗を流しながらペパは準備を進める。
試合自体は始まっているのだが相手も強化魔法等を掛けているので少しだけ時間が出来た。
詠唱が聞こえてくる。
「汝の体と 汝の精神 その二つの均衡を崩す」
何か物騒な魔法を唱えてるみたいなんだけど、それ反動とか大丈夫?
ああ、因みにこっちの武器は羽ペンだ。
文字魔法は「stop」だけにしておいた。
効果は単純、動けなくなるだけだ。
単純な分、効果は効力は絶大だけどね。
罠の様にあちこちに設置した所でマツバが動き出した。
目では追えない速度で突っ込んで来たのだが。
その……凄く言いづらいのだが……。
『文字』に触れてしまった。
これ空中に浮かんでる文字とか自分も見えてなかったとかそう言う落ちじゃないよね?
視覚聴覚強化もしてるよね?
…………。
これじゃあ、ダインさんとの修行の方が良いんじゃないか。
そう思ってしまう程にはこの国の実力が低すぎた。
低いでは済まないだろう。
入学前の吸血鬼騒動が良い例だろう。
国が滅びるかもしれない怪物が居る。
つまり国全体の実力が低すぎて危険が多いと言う事ではないのか?
だからこその虚栄だ。
え、外交してる人って凄く優秀じゃない?
他の国がどれほどかは分かんないけど流石にフォーリーさんよりも弱い感じがするのは駄目だと思う。
呆れていた所にアザレアの鉄扇がペパの顔に迫っていた。
隙を突いたと思ったのだろう。アザレアは口の端が笑っていた。
てか、言ってくれた。
「油断したようやね。 これでもマツバの動きに付いては行けるんよ?」
そんな隙だらけのアザレアに羽ペンの羽で横腹を擦ってあげた。
「ひゃん!?」
盛大に驚いて体勢を崩して後ろ向きに倒れた。
スカートがはだけたせいで下着が丸見えになった事をここに記しておく。
その後はマツバの動きや戦い方が気になったので『stop』を解除して戦ってみた。
これヤバい。
強化魔法のせいもあるけど抜刀までが全く見えないのだ。
認識がほぼ出来ない攻撃を避けろ?
認識した時には当たってるんだから避けれる訳がないだろ!
『shield』の魔法を付けた腕をマツバの攻撃に合わせるくらいしか出来なかったよ。
なんで合わせれるかって?
ダインさんが「全身の動きを見て動きを予測してみろ!!!」ってやらされたんだよね。
ダインさんってどれくらい強かったんだろ……。
しかも避けれない速度の斬撃を放ってくるマツバも相当だと思う。
あ、『shield』は魔法の障壁だと思ってくれれば良い。
それを数分続けたのだがマツバが気絶した。
いや、正確には寝た。
理由は簡単、無茶な強化魔法と自身の制限時間の限界が原因だ。
元の世界に突然意識が途切れるって病気があった様な……?
アザレアは既に気絶させていた。
『collapsed』の魔法を書いてアザレアにぶつけた。
因みに気絶して倒れるって意味だ。
ここまでやって試合の勝敗のコールが飛んできた。
「優勝したのは生徒会チームだああああああああああああああ!!!」
あれ、解説とかあった?
国の残念さが更に増した所で決勝戦は終わったのだった。
試合が終わった頃。
「おい!! まだ準備は終わらねえのか!!!」
一人の男が怒鳴りつける。
「は、はい。 なんでも火薬が湿気っていたとかで取り替えの作業を……。」
間抜けな会話が続くのだった。




