嵐の前の静けさと裏舞台の進行
敵の情報整理をしてから数日が経った。
出店の準備も着々と進んで催し事があると実感が出来る様になってきた。
大会の件を除けばだが。
「こんなに良い雰囲気なのに実際は殺伐としてるんですよね……。」
アリアが嘆くがペパは楽しげに
「それはそれ。 頑張るのは俺達だから安心して見てて! それよりさ、大会が終わったらこのお祭りを二人で見て回ろう。」
笑顔でアリアに手を伸ばす。
アリアはその手を取って頬を赤らめながら小さく「はい」と返事をするのだった。
その様子を後ろから隠れながら見守る数人が居た。
「くっ! 良い雰囲気になっているじゃないか!」
ヴィレウスが何やら悔しそうに握りこぶしを作っていた。
実はヴィレウスは美形なのだが、何故か女性が寄ってこないと言う悲しい学園生活を送っていた。
訳があるのだがそれはまだ語る事では無いだろう。
「会長から呼び出されたと思ったらお二人の邪魔でもするつもりです?」
「マスター達の邪魔ヲするならこコで落としマすか?」
ユークレスが呆れて、エルネが敵意をヴィレウスに向ける。
そんな三人をヨシュアは黙って見守っている事に徹する。
「待て! エルネ君、落とすとは何をだ!?」
「ナニでも良イですし、首をプツリとでモ」
「待ちましょうです! 色々と危ないですし流石に酷いです!」
その場が凍る。
男性にしか分からない所謂玉ひゅんを経験してしまった二人がエルネをなだめる。
(「人と言うのは」「複雑なのですね」。 「まだまだ人を知る勉強をしなければ」。)
ヨシュアは傍観する。
この人達を知る事が何かの為になると信じて。
某所にて。
数十人のゴロツキが集まっていた。
そんなゴロツキ達の前でフードで顔を隠した人物が話を始める。
「諸君。 今回は良くこれだけの人数が集まってくれた。 早速だが本題を話そう。」
そう言って一人の青年の方を見る。
「今回の依頼者だ。 こいつの依頼はある村を攻め落として欲しいとの事だ。」
ゴロツキ達が騒めく。
当然だろう、村単位ならここに居る数人を向かわせるだけで事足りる事が多いのだ。
それだけの腕利きが揃っている。
なのにこれだけの人数を集めたのだ、理由があるのが当然だろう。
リーダー格の一人が言葉をぶつける。
「おいおい、マスターさんよお。 村程度なら俺の所の奴等を送り込んで潰して来ても良いんだぜ? その方が安く付くぜ?」
「ガラドか。 何も無い村なら俺もそう言ってお前達を紹介したさ。 だがな、今回はその何かがあるから人数を集めたのだ。」
何かがある、その言葉を聞いて歓喜するゴロツキ達。
続きを聴きたくて全員が黙り先を促す。
「全員黙ったと言う事は話を続ける。 と、言っても本題は伝えた。 次に何があるかだ。」
ゴクリとつばを飲み込む音が聞こえる程に静かになった。
「その村の名前はカキネ村!!! かの守護獣と呼ばれる魔物が居る!!! しかも英雄に匹敵しないまでもそれに近しい戦士が居ると言う情報がある!!!」
守護獣に強い戦士が居る。
その言葉を聞いてその場に居た全員が歓喜の声を上げる。
「何かぁ!? そいつらも対象だって事か!?」
一人のゴロツキがその場所のマスターに質問を投げかける。
「そうだ」
簡潔に返事する。
「なんでも奪って良いんだな?」
「そうだ」
またも一人が質問を投げかけてマスターが答える。
「女も金も場所も!」
「そうだ!!! この村の全てを壊せ!!! それが今回の依頼だ!!!」
ゴロツキ達が大きな歓喜を上げる。
最後にギルドマスターが一言を添える。
「良いか!!! 誰が倒れようが必ず完遂しろ!!! 例え今回の仲間が死にそうでも依頼が最優先だ!!!」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」
歓声を横目にギルドマスターと青年が話始める。
「これで宜しかったので?」
「ああ、正直あの村はどうでも良いんだがな。 誘き寄せれば何でも良い。 彼がこの事件に送られてくれば何でもね。」
ギルドマスターは内心で思う。
酷い御方だ……と。
それだけの事にこの人数の命を投げ捨てるつもりなのだから。




