Katastrophe
まことしやかに流れる噂。現代社会に生きる処刑人。彼らは法で裁けない罪人を探し出し必ず処刑すると言われている。処刑の仕方はわかっていない。首がないものや血が抜き取られたものがいるとか、傷一つ見当たらないものや跡形もなく消え去ったものがいるなど様々な噂が流れているが真偽のほどは定かではない。ただの噂。政府が抑止力のために流したガセというものもいる。武器や殺し方、年齢や見た目性別などはどれもこれも話す人によって変わるところでただ一つ変わらないものがあった。処刑人の名前はKatastrophe、処刑人は10人いると皆口を揃えて言うのであった。
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真っ黒な闇の中、走る影が1つ。息を切らせてガタイのいい男が後ろを気にしながら何者かに追われているように入り組んでいる路地を駆け抜けていた。行く道には人の影がない。男が無意識のうちに人気のない道を選んでいるーー否、選ばされているのだとわかる。迫る足音は高らかに1人分響き渡る。男は走っていて足音はゆったりしたものなのに、その距離が変わることはない。
気が狂いそうなほど緊迫した追いかけっこは唐突に終わりを告げた。男の前には道がなく、袋小路に追い詰められたのだと悟る。後ろを振り向けば華奢な子供の影がすぐそこにあった。恐怖のあまり震え上がる体を押さえつけて男はひとつ長い長い息を吐き出した。向き合うしかない、たかが子供だ、何ビビってやがる。ぶつぶつと呟いて自分を鼓舞する。男の前に現れたのは10ほどの子供。鮮やかな黒髪に可愛らしい出で立ち。息が詰まるほどの殺気を含ませ緊迫した状況をこんな子供が作り出しているなど誰が信じるだろう?
「Katastropheが1人、vier。よろしく、おじさん」
可愛らしく微笑みその丈には似合わない無骨な斧を振りかざし、そして男の頭が宙に舞った。
「vier終わった?早くあがってご飯いこーよ」
男の返り血を黒いハンカチで拭っていた少年の背後からマスケット銃を方に担いだ少年よりも年上に見える少女が明るく話しかけた。vierは汚れたハンカチをその場に投げ捨て少女ににこりと微笑みかける。
「neunも終わったんだ?お疲れ様。ぼく今日はお寿司が食べたいなー」
「お、いいね。あたしも食べたかったんだ。いこいこ」
neunとvierは武器をしまうことなく楽しげに話しながら暗い夜道を歩いていった。
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誰かが言った。Katastropheには10人の殺し屋がいると。そのどれもが少年少女で、1~10の名前が与えられていると。
eins、zwei、drei、vier、funf、sechs、sieben、acht、neun、zehn。そしてもう1人、この10人にも秘密にされている隠された存在がいるらしい。名前はnull。年齢も性別も存在さえもすべてにおいて不明な11人目。
彼らはどう運命と戦うのだろうか。