890万だよ。
「なぁ、おい現時点でどれくらいよ……?」
「……お?」
僕、ヒロトが通う『道端ノ草学校』。
築30年は経った、古い校舎の三階の旧職員室のさらに奥に曲がった用具倉庫を綺麗に掃除して活動場所となった
この、
『兎(RABBITA)』
説明しておくと『RABBITA』とは僕とその隣にいるメガネマン…………じゃなくてリョウの二人がハマり過ぎて遂には部活設立申請を行ったほどの神ゲーである。
部員はたったの二名だが、『兎(RABBITA)』のユーザーは世界に10億人はいる。
何せ、世界人口の1/10である。
そう、この学校にも必ず僕たちの他にユーザーはいる(多分)
『兎(RABBITA)』を知らない人が見れば、「なんだあのオタクが入りそうな部活」みたいな感じに思われているんだろう。
「……クレジットだよ!」
「ああ、クレジットね……」
リョウが言っているのは『RABBITA』内の共通通貨である『クレジット』である。
『RABBITA』は、会社同士の取引や、重要な会談も行われることが多くある。
RABBITAはそれほど安全で、信頼されているのだ。
「えーーっと……890万クレジットだ」
「………………」
「この調子じゃあ、個人管理のワールドを持つのは無理っぽいぞヒロト」
『RABBITA』の基本プレイはユニットデータというところで行える、ここでアルバイトをしたり、自分のアバターを戦うコロシアムや、デパートもある。
分かりやすく言えば、ユニットデータは日本で言う『日本全土』。
そして、ワールドデータは、『都道府県』みたいな感じだ、都道府県ほど少なくはないし、ワールドデータは何万と存在する。
ユニットデータ内の担当者に、一定のクレジットを支払えば、新たにワールドデータを作成できる。
しかし、僕たちがやりたいのはその先にある
いくら、お金を払って個人で作成したとしても、そのワールドデータで好き勝手できる訳ではない。ワールドデータを管理できるのはユニットデータと同様に運営の人間のみに限られている。
個人でワールドデータを管理するには約、1億クレジットは必要だという。
それこそ、会社全体で『RABBITA』を交渉や取引に使っていれば話ば別だが、ただの一般中学生である僕たちには気が遠くなるような話である。
何の自慢にもならないことだが、僕はこの『RABBITA』をかなりやりこんでいる、つまり廃人なわけだが。
「コロシアムに出たら一日に100万は稼げるぞ」
「バカタレ、それはトップユーザーの皆さんの話だ」
「第一に、俺たちのアバターは戦闘タイプじゃないじゃんよ」
そう、アバターには、二種類のタイプがある、
タイプは選択できるため、どちらのタイプにするかはユーザーの自由だが、このタイプによって出来る仕事やアルバイトの内容も変わってくる。
まずひとつ目、『戦闘タイプ』
主に、コロシアムで戦ったり、不正をしているアカウントのアバターを強制的に制裁したりする。
戦闘タイプのアバターは全体の2割りと少数
そして『ノーマルタイプ』
特に、なにかに突出しているわけではないが、仕事に制限がない、しかし、コロシアムなどでノーマルタイプのアバターが出場する事はまず無い。
僕もリョウも、一応多数いるノーマルタイプアバターを使っている。
「俺たちはノーマルタイプらしく、ショッピングモールのバイトでもしとこう」
「そうだな」
『ログイン』 と表示されているカーソルを動かしてパスワードを通してユニットデータに出る。
「さっ、出勤、出勤」
僕とリョウも『RABBITA』内ではしっかり給料を貰って働いている(アルバイトですがね。
ユニットデータはイメージ的に、近未来の大都市で、自由に出歩きできる。
僕たちはユニットデータで一番大きなにある大型ショッピングモールでアルバイトをしている。
「ふぅぅ、頑張りましょう」
時給はそんなに高くないが、せっせと働いているのだ。
***
僕たちが世界を作るには、果たして何日掛かるだろうか………