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非日常のはじまり  作者: ありま氷炎
第1章 死人返り
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1

 青い空がどこまで広がっている。


 八島やしま花埜かのは屋上のフェンスに寄りかかり、空を見上げていた。

 昼休み、そっと誰もこないはずの旧校舎の屋上に上がり、一人で昼食を取った後、ぼんやりと空を仰ぐ。

 それが花埜の日課だった。


 この春、高校二年生になった彼女は成績優秀、品行方正の真面目な生徒だった。しかし、対人能力にかけるためか、一人でいることが多く、昼食はだいたい一人で食べていた。


「あ!」

 不意に風が吹き、弁当箱と一緒に置いていた紙が空に舞う。それは屋上のフェンスを跳び越し、縁ぎりぎりに作られた排水溝に落ちる。

「ああ、なんで!」

 彼女が風で舞う長い黒髪を煩わしそうに払いながら、その紙を見つめる。それは花埜が思いついた詩を書いたものだった。旧校舎といれども、誰でも入れる場所だ。あの紙が下に落ちて人に読まれたらと考え、花埜は紙を拾うことを決意した。

「よいしょと」

 17歳にふさわしくない掛け声をかけると、フェンスをどうにか乗り越える。運動神経が鈍い彼女にとって、それはかなり根気のいる行動だった。しかし、紙に書いていることを読まれるくらいなら、これくらいのことはやってやるとフェンスを掴みながら、紙に手を伸ばす。


「八島!」


 しかし不意に自分を呼ぶ声がして、花埜は視線を声の主に向ける。

 フェンス越しに見える場所には一人の少年が顔を真っ赤にして立っていた。

 顔が赤い理由は彼女を意識しているとかそういうことではない。単に屋上まで一気に登ってきたため息が切れていたのだ。


 (誰だっけ?)


 花埜はフェンスを掴みながら少年が誰だったかと記憶を探る。そして、少年の力強い瞳とそのスポーツ刈りの頭をみて、誰だか認識した。


 (田倉たくらだいだ)


 田倉大、高校二年生になり、初めて同じクラスになった。野球部に入っているらしく髪はばっさりとスポーツ刈り、誰にでもフレンドリーでその明るい性格はクラスメートに受けがよかった。

 愛想が悪く、いつも一人で本を読んでいるような花埜とはまったく逆のタイプだった。


(何の用なの?)


 その存在は知っていたが、話したことはなかった。花埜は紙を取ることも忘れ、じっと少年を見つめる。


「八島!早まるな。まだ俺たちは十七歳。これから未来は無限に広がってるんだ!」

「?!」

 大の言葉に花埜は眩暈を覚える。

 どうやら自殺をすると思われているらしい。

「八島!」

 少年は興奮した調子で花埜の元へ走ってくる。そして、がしっとフェンスを掴んだ。

「?!」

 そのとたん、ぎしゃっと何かが捻じ曲がった音がした。

 大は慌てて手を放す。

「!」

 しかし時は遅く、ぐらっとフェンスがおかしな方向に傾き始める。

「嘘だろう!?」

 落下を止めようとフェンスを掴むが、思ったより重く、大はバランスを崩す。

「八島!避けて!」

「!」

 しかし花埜が避けられるはずがなく、大を巻き込んだフェンスはそのまま彼女を襲う。

「きゃああああ!」

「うわああああ!!」

 

 鈍い音がして、二人は壊れたフェンスと共に屋上の縁を踏み外し、一気に落下した。


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