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ホストクラブ☆フィーバー

引き続き楽しんでいただけたら幸いです。

 恋を自覚したとして、5つ年上の弥恵さんだから私に勝ち目はないのは分かっている。でも。

 出会って一週間。一向に諦めがつかない私って未練がましいだろうか。

 会わなければ忘れられるのに。弥恵さんたら鈍いから


「しぃちゃんのご飯〜」


 とか言いながらほぼ毎日家に来るわけで。でもきっと私がどうとかじゃぁない。

 弥恵さんはホストだし。それなりに出会いは沢山あるわけで。


「しぃちゃんっ!今日俺とデートしない?」


 そんな事言われたら、期待しちゃうし傷付くのも分かってるのに。


「……」


「しぃちゃんてば……。俺が服買ってあげる。いつも美味しいご飯のお礼」


 あの笑みと気持とが重なって。


「……じゃ行く」


 なぁんて強がって結局OKしちゃうわけで。流石No.1ホストだなぁとか。

 だって入る店がセシィル・マクベィって……。


「しぃちゃんセシィル好き?」


「否、着たこと無いですから」


「マジでー?」


 そんなに切長の目で見つめないでよ。やっぱり店の客とかはセシィルとかフツーに着てるんだろな。

 ん?私は別に弥恵さんは諦めるんだから比べなくても良いの!全く自分で呆れる位惚れちゃったみたいだ。

 コレコレ!なんて言って楽しそうな弥恵さんを見つめた。


「あれ?しぃちゃん俺に惚れちゃった?」


「……」


 幸い、赤裸々を見られたくなくて手刀を食らわせたのが良かった。ばれてない。


「いぃったー!ホストの顔は財産!毎日ご飯作って貰うからね!」


「なっ……!」


 そんな事したらまた諦めがつかなくなる。この人は本当に私を困らせる。


「嫌かな……」


 ホスト特有の演技ですねて見せる。分かってるのに騙される私。


「分かったから……」


「マジで?」


 あぁもう頼むから、その笑顔。心臓が跳ねた。だいたい、私がご飯を作ったことで、私にとくなんかない。


「服、こんだけ買えばいいでしょ」


「いや……逆に弥恵さんに迷惑じゃん。良いよ、そんなに」


「いらない?」


 ちょっと悲しそうに伏せる目。もう一体なんなのだろう。こんなに沢山(一年分くらい)セシィルを……いくら金持ちとはいえ、ねぇ。


「沢山ありすぎですよ。私、一日分で大丈夫……」


「だぁめ。俺も沢山作ってもらうんだから!それに……」


 あぁ。そういう事ですか。それに?何だろう。


「これを着れば、しぃちゃん俺の職場見にこれるよ?」


「……!」


 私が3日前に言った事をちゃんと覚えていたらしい。

 一回弥恵さんの職場が見たいと思った。純粋に。あまりに純粋過ぎて心で思っていたことが口に出たのだ。


「弥恵さんの働いてる所見たいな……」


「おっ!なになに?しぃちゃんからのお願い?」


「あ、否……その」


「良いよ。今度店においでよ。支配人には言っておくから」


「え、良いです!だって私、そんなに高い服とか持ってないから場違いで浮いちゃうし……」


 私が思い出したのを見て弥恵さんの笑顔が出る。


「だから、ね?」


「……あの、私1年も通うなんて言ってな……」


「フフフ……それはどうかな」


 弥恵さんの目が怪しく光った。


 ――その日の夜


「はい!では今日も皆さん頑張って下さいね。……ここで今日一日だけこのホストクラブでスウィーツデザイナーとして働いてくれるコを紹介する」


 私は、緊張しながら前へでた。視線が痛い。男だけのホストクラブに女の従業員が入るのが珍しいせいもあるからだろう。

 この中で唯一弥恵さんだけがクスクス笑っていた。


「仲間紫唖です。……今日1日お世話になります」


「おい、支配人!」


 1人のホストがいきなり声を大きくする。やっぱり女の従業員はまずいんだ……。

 私は何か言われることを予想して目を固くつむった。 が。


「かぁいいじゃねぇか!愛称決めないとな!」


「おぉ、そりゃそうだ」


 次々にホスト達が私に近付いてきた。私はわけが分からないままボウとしていると、遠くの方から声がした。


「ヤエさん、なにがいいでしょうか?」


「あぁ、その子なら俺はシィちゃんって読んでるけど?」


「おい、ぴったりじゃん?じゃ、シィにしようぜ?」


「了解〜!」


「シィ、宜しくな」


「はっはいぃ!」


「シィ、俺に惚れようぜ!」


「嫌です」


「もう。しぃちゃんは冷たいのね……」


 肩に置かれた手。肩まである髪をオールバックに整えている。弥恵さんだ。


「何だか弥恵さんさんが違う人に見えて嫌です……」

「本名で呼ぶなよ。もう開店してるんだから。ヤエって呼べ」


「……それ、ホストとして使ってる名前ですか?」


「そうそう。おおっと、ミサキさんだ!じゃね。頑張りな」


 ポンッと私の頭を軽く弾いて駆けて行く。まだ私を諦めさせるつもりはないらしい……。ボウとしていたら、支配人に呼ばれた。


「シィ!こっちへ」


「はい!何ですか?」


「はい!シィの持ち場」


 キッチン。もともとフランス生まれフランス育ちの私は、バイオリンを始め、パティシェなどの勉強もしていたためこの分野は強い。


「頑張れ」


「はい」



 開店後5分。始めてスウィーツの注文が入る。


「シィ!アプリコットジュエル1つ入ります!」


 弥恵さんのお客さんだ。


「かしこまりましたぁ!」


直ぐに生地を焼いてアプリコットをのせて行く。 数分後アプリコットジュエルはお客さんに運ばれた。


「お待たせいたしました。アプリコットジュエルです」


「ありがとう」


 お客さんが口に運ぶ。私は少し緊張した。


「……」


「ミサキさん、美味しい?」


「……こんなに美味しいの始めてよ……!」


「やっぱね。シィのスウィーツは最高でしょ?」


「これを作っている人はシィさんって言うの?」


「うん」


「シィさんを呼んでくれる?」


「良いよ……シィー……!ミサキさん。シィ忙しそうだから後でね」


「そうね……」


 私はミサキさんとか言うお客さんが注文していらい、物凄くいそがしかった。

 スウィーツは飛ぶように売れたため、直ぐになくなる。


「今日はスウィーツおしまいだよ」


 ホスト達も何度も誤らなくてはならなかった。



 ――仕事後


「しぃちゃんお疲れ様!」


「弥恵さん……」


「凄かったね……」


「はい」


「あのさ……もうここで働く気はない?楽しくなかった?」


「え……」


「支配人がしぃちゃん雇いたいってさ」


「……!支配人に会って来ます!」


 駆けて行く紫唖を見送りながら弥恵はクスクスと笑った。


「まさかしぃちゃんがここで働くなんて……」



つづく

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