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ちょっと恋に落ちた瞬間

不定期更新になると思いますが……どうぞよろしく。

面白いと感じていただけたら、嬉しいです。

 私、現役女子高校生の仲間 紫唖は、しがないアパートに住む18歳だ。

 平穏な生活を愛し、勉強にも励み……な、分けなく、勉強のためと16の時辞めさせられた大好きだったバイオリンが私の心を掴んではなさない。

 生活に潤いがなかった。しかしこの潤いのない生活も昨日から私の隣に越してきた人物により終りを告げることになる。


「弥恵さん……何やってるんですか」


「んー?しぃちゃん家でご飯」


 今、昨日から越してきた隣人は私の部屋にいて、シチューをすすりつつ、にへらぁ、と笑う。


「……それでもホストなんだから呆れる……」


「しぃちゃんだって、高校生なのに主婦並にご飯作れちゃうじゃない」


「……もう良いです」


 全く、弥恵さん――橋矢田 弥恵(ハシヤタヒロエ)さんが隣に越してきたからと言うものの、週3程度夕御飯を食べに来るもんだから米の減りが激しい。

 それよりも驚くのは弥恵さんの体格。あんなに沢山食べるのに相変わらず肉付きの悪い腕してるし。

 私は自分のシチューをよそって弥恵さんの正面に座る。


「しぃちゃんたら照れちゃってかぁ〜いい」


「は」


「だから、かあいいつってんの」


「……ホストには騙されない」


「なっ!ちょっとそれ酷くない?!俺は今仕事のつもりじゃないんだけど!」


「でも流石職業ですよね。口がうまいし。そうやってまた私を誉めてご飯頂くつもりよね」


「ばれた?」


 本日2回目のあの笑い。実は物凄くこれがNo.1ホストの座を誰にも渡さない物だったり。5つも年上のこの男は、出会ったときからヘタレていた。

 ――雨の日だった。久し振りにバイオリンが弾きたくなり、リビングでバイオリンを弾いていた。曲は『プレリュード』。

 きっとバイオリンで玄関が開く音が聞こえなかったんだ。私がリビングを後にし、寝室へ足を運ぶと……。


「……もう、嫌だよ……真由……帰って来てよ」


「……」


 ベッドには今日越してきた隣人、弥恵さんが泣きながら寝ていた。どうやら職業はホストらしいと聞いていたが本当らしい。こんな時間に帰って来るなんて。しかもこのスーツ。派手なインナーの襟を出しキメキメのホストだ。


「……ここ私の家だよね」


「……」


「起きろ馬鹿ホストがぁぁあ!」


「ぎぁぁあ!」


 私は最初に相手が泣きながら寝ていた事も忘れ、きっとホストが口説きに来たんだわ、何ておかしな発想のもと弥恵さんを蹴りあげた気がする。

 あれは絶対に間違えて入って来た弥恵さんが悪い。……百歩譲り鍵を賭けていなかった私も私だとして。

 なのに弥恵さんは『ホストの顔に傷付けたら商売にならないよ。お詫びに俺にご飯作りなさい』とか言って現在に至る。


 どうせそれきりの付き合いだと思っていたから、今日の夕方にインターホンがなったのには驚いた。


「……弥恵さん?」


「へへ……しぃちゃんのご飯が食べたくなっちゃった」


 あまりにも不意打ち過ぎませんか。だって仮にもNo.1ホスト、誰だってちょっとときめくわけで。


「……やだ」


「えぇ!冷たくない?!俺まだ昨日のお酒抜けてなんだよ?水とか!水!」


「弥恵さんとか人一倍お酒抜けるの早そうじゃないですかっ!」


 ほら出た。あの笑い……いかん!私の敵ね。


「……じゃあ、待っててください?シチュー作りますから」


「さっすがしぃちゃん!でもコーンはよしてよ」


「早速入れるものが決まったわね」


「小悪魔!」


 ほらね、その笑みがまた私を貴方に近付けた。本当に敵だ。



 ちょっと、恋に落ちた瞬間。





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