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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第9話:魔石は「自動収穫」するものです

「む……残高が減ってきたな」

コタツでぬくぬくと温まりながら、俺は通販ウィンドウの右上にある『魔石残高』を見て独りごちた。 ログハウスの建設、家電の導入、アリスの服や食費。 快適な生活を追求すればするほど、資金(魔石)は湯水のように消えていく。

「稼がなきゃならん。だが、働きたくない」

この矛盾。 以前の俺なら、溜息をつきながら剣を持って吹雪の森へ出かけていただろう。 だが、今の俺は「システム管理者」だ。 システム屋の極意とは何か。それは「自分が動くのではなく、仕組みに動かさせる」ことにある。

「よし、設備投資だ」

俺は残った魔石を惜しみなく投入し、防衛・狩猟システムをアップグレードすることにした。

『設置が完了しました。システム、オールグリーン』

数十分後。 俺はリビングのソファに深く座り、大型モニター(テレビ)を眺めていた。 映し出されているのは、家の周囲の監視カメラ映像だ。

俺が購入したのは以下の三点。

『獣害対策用・超高電圧電気柵(一万ボルト)』

『自動追尾式・圧縮空気タレット(鉄球発射モデル)』

『回収用ドローン・アーム付き』

「さあ、稼働テストといこうか」

昨日のカレーの匂いがまだ残っているのか、あるいは家の魔力に引き寄せられたのか。 森の奥から、凶暴な『レッドウルフ』の群れが十数匹、涎を垂らして近づいてくるのが見えた。

「ワンワン、ご飯の時間だぞー」

俺は手元のコントローラーで『自動迎撃モード』をオンにした。

バチバチバチッ!!

「ギャウンッ!?」

最初に柵に触れた一匹が、青白い火花と共に弾き飛ばされた。 一万ボルトの衝撃。即死はしないが、気絶するには十分だ。

仲間がやられて怯むウルフたち。 そこへ、屋根の四隅に設置されたタレットが旋回し、照準を合わせる。

プシュッ! プシュッ! プシュッ!

圧縮空気で発射された鉄球が、百発百中の精度でウルフたちの眉間を撃ち抜いていく。 悲鳴を上げる暇もない。 ただの作業だ。

モニターの中では、次々と魔物が沈んでいく。 俺はコタツに入ったまま、コーヒーをすする。

「……素晴らしい」

汗水流して剣を振り回していたのが馬鹿らしくなる。 これだ。俺が求めていたのは、この「効率」だ。

「さて、回収回収」

全滅を確認すると、俺はドローンを発進させた。 ウィィィン……と飛んでいったドローンが、倒れた魔物から魔石だけを器用に抜き取り、カゴに入れて戻ってくる。

「チャリーン♪」

通販ウィンドウの残高が増える。 完全自動化。究極の不労所得パッシブインカムの完成である。

「……あら? 何か大きな音が……」

その時、ポテチのカスを口につけたアリスが、タブレットから顔を上げた。 モニターを見ると、電気柵の前に巨大な影が映っていた。

『警告。大型個体を検知。タレット攻撃、無効』

現れたのは、体長3メートルを超える『オーガ(食人鬼)』だった。 分厚い筋肉と脂肪に覆われた巨体には、鉄球も電気ショックもあまり効いていないらしい。 オーガは怒り狂い、丸太のような棍棒で電気柵を叩き壊そうとしている。

「ガアアアアアッ!!(飯食わせろオオオ!)」

ドカッ! バチチッ! ドカッ! 激しい振動がログハウスに伝わる。

「む、さすがにBランク級となると、家庭用の防犯グッズじゃきついか……」

俺は眉をひそめた。 『ロケットランチャー』を買えば一発だが、あれは高いし、近所迷惑だ。 どうしたものか。

その時。 俺の足元で寝ていた「白い毛玉」が、ゆらりと立ち上がった。

「グルルゥ……ッ」

ポチ(フェンリル)だ。 昼寝を妨害されたからか、あるいは「俺の快適な縄張り(コタツ)」を荒らそうとする不届き者に腹を立てたのか。 その瞳は、完全に「殺る目」をしていた。

「お、行ってくれるかポチ」 「ワフッ!(任せろ、ただし報酬は弾めよ)」

ポチは器用に前足でドアノブ(レバー式)を下げて外に出ると、一瞬で本来の巨体へと変化した。

「ガァ?(あ?)」

柵を壊そうとしていたオーガが振り返る。 だが、遅い。

ドォォォォン!!

轟音と共に、白銀の閃光が走った。 フェンリルの爪の一撃。 オーガの上半身が消し飛び、雪原に赤い花が咲いた。 一瞬の出来事だった。

「キャウン!(終わったぞー!)」

ポチはすぐに小型犬サイズに戻ると、尻尾を振りながら家の中に戻ってきた。 雪を払うのも忘れ、俺の足元に飛びついてくる。

「よしよし、さすが神獣様だ。強いなぁ」

俺は通販ウィンドウを開き、約束の報酬を取り出した。 『最高級・本マグロの缶詰とろ』。

パカッ、と開けた瞬間、ポチの目がハートになった。

「ハフハフハフッ!」

夢中でマグロを貪る神獣の頭を撫でながら、俺はモニターを見る。 ドローンが、オーガの残した特大の魔石を運んでくるところだった。

「セキュリティも万全。稼ぎも上々」

アリスは再びアニメに没頭し、ポチは腹を満たしてまた眠りにつく。 外は地獄の雪山だが、ここは楽園だ。 俺はこの「自動収穫システム」を眺めながら、二杯目のコーヒーを淹れることにした。

明日あたり、貯まった魔石でもう少し良いソファでも買おうか。 そんな平和な悩みを抱きながら。


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