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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第8話:聖女、ジャージに着替える

勇者撃退から一夜明け、平和な午後。 コタツでみかんを食べていた俺は、ふと対面に座るアリスを見て眉をひそめた。

「そういえばアリス、お前ずっとその服だよな」

彼女が着ているのは、教会指定の修道服(聖女仕様)。 かつては純白で高貴な刺繍が施されていたのだろうが、今は泥と煤で薄汚れ、裾はボロボロに破れている。 風呂に入って体は綺麗になったのに、服がそれでは台無しだ。

「あ、はい……着替えを持って出る余裕なんてなくて……」 「そうか。じゃあ、まずは服だな」

俺は通販ウィンドウを開いた。 検索ワードは『レディース ルームウェア もこもこ』。 ここは戦場でも教会でもない。鎧も法衣も必要ない。 必要なのは、最強のリラックス性能だ。

「えっと、サイズは……まあ、フリーサイズでいいか」

俺は適当に見繕ってカートに入れた。 ついでに、異世界の冬には必須の『発熱保温インナー(極暖)』と、ちょっとそこまで出る時に便利な『穴あきサンダル(クロッ○スもどき)』も購入。

「ほら、これに着替えてきな」 「えっ、い、いいんですか!? こんな高価そうな……!」 「いいからいいから。洗濯機回すついでだ」

俺は届いたダンボールをアリスに押し付け、脱衣所へと追いやった。

数分後。 脱衣所のドアが少しだけ開き、アリスが恥ずかしそうに顔を出した。

「あ、あの……ゲイル様……」 「ん? サイズ合わなかったか?」 「いえ、その……この服、肌触りが……凄すぎて……」

もじもじしながら、アリスがリビングに出てくる。

俺は飲んでいたコーヒーを吹き出しそうになった。

そこには、パステルピンクの『もこもこパーカー(ウサ耳フード付き)』と、お揃いのショートパンツに身を包んだ聖女様の姿があった。 下には黒のレギンス(極暖)を履いているので露出は控えめだが、破壊力は抜群だ。

「な、なんなんですか、この『布』は……!?」

アリスは自分の袖を頬に擦り付けて、うっとりとした表情を浮かべている。

「絹よりも柔らかくて、空気みたいに軽くて……まるで雲を着ているみたいです……!」 「そりゃあ『ジェラ○ケ』……風の化学繊維だからな」 「しかも、この下の黒い薄着……すごく暖かいです。魔法がかかっているんですか?」 「ああ、吸湿発熱という科学の魔法だな」

アリスは感動のあまり、その場てクルクルと回って見せた。 フードについた長いウサギの耳が、ぴょこぴょこと揺れる。

「ありがとうございます! 一生大切にします!」

ボロボロの聖女から、休日の女子大生(宅飲み仕様)へ。 劇的ビフォーアフターである。 まあ、俺の目を楽しませてくれる分、安い投資だ。

「さて、服も新しくなったことだし、暇だろ?」

俺はテーブルの上に、黒い板状の機械を置いた。 以前、自分用に買っておいた『タブレット端末』だ。 大容量SDカードには、前世でダウンロードしておいた映画、アニメ、漫画が数千タイトル入っている。

「これは……?」 「『動く絵本』みたいなもんだ。使い方はこうして、指でスライドさせて……」

俺が動画アプリを起動し、適当なファンタジーアニメを再生して見せると、アリスは「ひゃっ!?」と声を上げて飛びのいた。

「人が!? 箱の中に人が閉じ込められてます!?」 「違う違う、絵だ。物語が動いてるんだよ」

俺はアリスにタブレットを渡し、ソファに座らせた。 最初は恐る恐る画面を触っていたアリスだが、すぐにその「魔法」の虜になった。

「す、すごいです……! 色が綺麗……音が耳元で聞こえる……!」

彼女が選んだのは、いわゆる『異世界転生モノ』のアニメだった。 主人公が魔法で無双するシーンを見て、本職の聖女様が真剣な顔でツッコミを入れている。

「詠唱破棄!? 無理です、こんなの高等技術すぎます!」 「わあ、魔法陣が派手……! 実際の爆裂魔法はもっと地味で煙たいのに……!」

文句を言いながらも、その目は画面に釘付けだ。 俺はそっと、テーブルに『ポテトチップス(うすしお)』と『コーラ』を置いた。

「これ食いながら見ると、もっと楽しいぞ」 「……はい」

アリスは無意識にポテチの袋に手を突っ込み、パリパリと齧りながら、画面をスワイプして次の話へ進んだ。

ウサ耳パーカーを着て、ソファでゴロゴロしながら、ポテチ片手にアニメ鑑賞。 その姿からは、もはや「聖女」の威厳など微塵も感じられない。 そこにいるのは、完全に仕上がった「干物女」だった。

「ふふっ、順調に堕落してるな」

足元では、ポチが俺の脱ぎ捨てた靴下を枕にして爆睡している。 俺は満足げに頷き、自分のマッサージチェアへと戻った。

外の世界では、彼女を失った教会が大騒ぎしているかもしれない。 だが、もう手遅れだ。 現代の「ルームウェア」と「サブスク動画」を知ってしまった彼女が、あの堅苦しい修道服に戻れるはずがないのだから。


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