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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第7話:ALSOKもびっくり、自動防衛システム

「……待て。おい、待てよ」

カレーの匂いに後ろ髪を引かれながら撤退しかけた勇者レオンだったが、ふと足を止めた。 彼の瞳に、下卑た欲望の光が宿る。

「あんな立派な屋敷だ。魔王の別荘か、あるいは古代の遺跡か知らねえが……絶対に『お宝』があるはずだろ?」

寒さと空腹で判断力が鈍っていたレオンは、冒険者として最もやってはいけない選択をした。 すなわち、正体不明の拠点への強行侵入である。

「俺は勇者だぞ? いざとなれば聖剣がある。中の奴を脅して、食い物と金品を巻き上げてやる」

レオンは仲間たちを手で制し、抜き足差し足でログハウスの敷地へと近づいていった。 その一歩が、地獄への入り口だとも知らずに。

『ピロン♪ エリアAに侵入者を検知しました。』

リビングで食後のコーヒーを楽しんでいた俺のスマホに、軽快な通知音が届いた。 画面を見ると、雪の中をコソコソと近づいてくる人影が一つ。

「……あいつ、まだ居たのか」

画面に映っているのは、元同僚のレオンだ。 どうやら懲りずに我が家の敷地(結界内)に入り込もうとしているらしい。

「アリス、ちょっと耳塞いでてくれ」 「へ? はい……?」

俺は面倒くさそうに画面をタップした。 表示されたウィンドウには、『防犯システム起動』の文字。 モードは『レベル1:威嚇(非殺傷)』を選択。

「ポチッとな」

俺は指一本で、制裁を下した。

レオンが、家の周囲を囲む金属のセンサーポールを跨ごうとした、その瞬間だった。

『警告。不法侵入です。直ちに退去してください』

無機質な合成音声が響いたかと思うと、庭の雪の中から「黒い筒」がせり上がってきた。 通販で購入した『害獣撃退用・業務用スプリンクラー(高圧洗浄機機能付き)』だ。

「あ? なんだこの筒は……」

レオンが首をかしげた直後。

バシュウウウウウウウッ!!!

「ぐああっ!?」

筒の先から、とてつもない水圧の水流が噴射された。 それはただの水ではない。 外気温マイナス二十度の雪の中で冷やされ、シャーベット状になりかけた、極低温の「氷水」だ。

「つ、冷てぇぇぇぇぇ!!? な、なんだこれ!? 氷のブレスか!?」

顔面を直撃した冷水に、レオンが悲鳴を上げる。 だが、現代のセキュリティ(通販)はこれだけでは終わらない。

バスッ! バスッ! バスッ!

続いて、軒下に設置された発射機から、オレンジ色の球体が連射された。 『防犯用カラーボール(塗料・悪臭成分入り)』だ。 それらは正確にレオンの顔面や鎧に着弾し、弾け飛んだ。

「ぐっ!? 目が……! なんだこのオレンジ色の毒液は!?」

視界を奪われ、鼻を突く異臭にむせ返る。 パニックに陥ったレオンに、トドメの一撃が放たれる。

ウゥゥゥゥゥ――――――――ッ!!!!!

鼓膜をつんざくような大音量のサイレン。 さらに、赤色の回転灯が激しく点滅し、周囲の雪原を血のような赤色に染め上げる。

「う、うわああああああ!!!」

氷のブレス(水)を浴び、謎の毒液ペンキをかけられ、魔獣の咆哮サイレンに晒される。 未知の恐怖に、勇者の心は完全に折れた。

「た、助けてくれぇぇぇ!! ここはヤバい! 罠だ! 呪われるぅぅぅ!!」

レオンはオレンジ色の塗料まみれの顔で、無様に雪の上を転がりながら逃げ出した。 遠くで見ていた仲間たちも、「勇者がやられた!」「逃げろ!」と蜘蛛の子を散らすように敗走していく。

『侵入者の排除を確認しました。』

スマホの画面から、侵入者の反応が消えた。 俺は「ふぅ」と息を吐き、サイレンを停止させた。

「な、何事ですかゲイル様!? すごい音が……!」

耳を塞いでいたアリスがおずおずと尋ねてくる。 俺はニヤリと笑い、テーブルの上のミカン(箱買いした)を手に取った。

「ん、なに。ちょっとした『虫除け』が作動しただけだ」 「虫除け……? あんな轟音が鳴る虫除けが……?」

アリスは困惑しているが、本当のことだ。 害虫(勇者)を追い払ったのだから。

「それよりアリス、デザートにミカンどうだ? コタツに入って食うと美味いぞ」 「い、いただきます……」

外では、びしょ濡れになった勇者が極寒の森で凍死しかけている頃だろう。 だが、俺の知ったことではない。 俺たちはぬくぬくとコタツに足を入れ、甘いミカンを味わう。

「平和だなぁ……」

俺はオレンジ色の皮を剥きながら、改めてこの隠居生活の素晴らしさを噛み締めていた。


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