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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第16話:捕虜の尋問は「VRホラー」で

翌朝。 俺がリビングでモーニングコーヒーを飲んでいると、勝手口のドギー・ドアからポチ(フェンリル)が帰ってきた。 その口には、黒ずくめの男たちの襟首がくわえられている。 ズルズルと引きずられてきたのは、昨晩、俺の畑でひっくり返っていた「泥棒たち」だ。

「ワフッ(主よ、ゴミ拾ってきたぞ)」 「おー、ご苦労。……たく、せっかく植えたイチゴを盗もうとするなんて、いい度胸だ」

男たちは四人。全員、目が充血し、涙を流し、寒さでガタガタと震えている。 昨夜のLED攻撃が相当効いたらしい。

俺は彼らをロープで縛り上げ、リビングの床に並べた。 ポチが「ガルルッ」と唸りながら見張っているので、逃げる気力もなさそうだ。

「さて……お前ら、どこのモンだ? 素直に吐けば、ギルドに突き出すだけで許してやる」

俺はなるべく威圧感を出さないように優しく尋ねた。 だが、リーダー格らしき男――ガリウスは、震えながらも俺を睨みつけてきた。

「……殺せ。我らは神に仕える身……異教の魔王に屈することはない……!」

他の三人も口を堅く閉ざしている。 どうやらただの野菜泥棒ではなく、どこかの狂信的な組織の構成員らしい。 「魔王」とか呼んでくるあたり、頭も少しイカれているのかもしれない。

「殺しなんて野蛮なことするかよ。ただ、情報を吐かないなら……少し『お仕置き』が必要だな」

俺はため息をつき、ソファの脇に置いてあった「黒いゴーグル」と「ヘッドホン」を手に取った。 最新型の『VRヘッドセット(完全遮音・高解像度モデル)』だ。 前世で予約購入し、転生後も通販で買い直した俺の宝物である。

「な、なんだその不気味な仮面は……!」 「我々の魂を吸い取る気か!?」

ガリウスたちが怯える。 俺はニヤリと笑った。

「魂は吸わないが、ちょっと『怖い夢』を見てもらうだけだ。……ポチ、こいつを押さえつけてろ」

俺はガリウスの頭にVRゴーグルを強引に被せ、ヘッドホンを装着した。 視界と聴覚を完全に遮断する。 そして、PCを操作し、とあるゲームソフトを起動した。

タイトルは『バイオ・オブ・ザ・デッド VR』。 心臓の弱い人はプレイ禁止の、超リアル・ゾンビサバイバルホラーだ。

「ゲームスタートだ」

エンターキーを、ポチッ。

(ガリウス視点)

「ひっ!?」

ガリウスは息を呑んだ。 一瞬にして、温かいリビングの気配が消えた。 目の前に広がっていたのは、血と錆にまみれた、薄暗い廃病院の廊下だった。

「こ、ここはどこだ!? 転移魔法か!?」

後ろを振り返る。 壁、天井、床。どこを見ても、その腐臭漂う空間が続いている。 あまりにもリアルな質感。 そして、耳元で響く水滴の音と、何者かのうめき声。

『ウゥゥ……アァァ……』

「だ、誰かいるのか!?」

ガリウスは魔法を使おうとしたが、手足が動かない(現実では縛られているため)。 その時。 廊下の奥から、体の一部が欠損した腐乱死体が、よろりよろりと歩いてくるのが見えた。

「あ、アンデッド!? なぜ教会の中にこんなものが……!」

死体はこちらに気づくと、恐ろしい形相で走ってきた。 血走った目。剥き出しの牙。

『ガァァァァァァァッ!!』

「く、来るな! 聖なる光よ……出ない!? なぜ魔法が使えない!?」

距離が詰まる。 死体の腐った口が、目の前数センチまで迫る。 吐息さえ聞こえてきそうな距離感。 ガリウスの脳は、これを「現実」だと誤認した。

「ひぃぃぃぃぃぃぃッ!!!!」

さらに、ヘッドホンから『360度立体音響』が襲いかかる。 右耳のすぐ後ろで、別の女の笑い声がした。

『……ミツケタ……』

ガリウスは反射的に振り向いた。 そこには、顔半分が崩れた女の霊が、張り付いていた。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

(現実視点)

「うわぁぁぁぁ! 来るな! 食われるぅぅぅ! 助けてくれぇぇぇ!!」

リビングの床で、ゴーグルをつけたガリウスが芋虫のようにのたうち回っていた。 傍から見ればシュールな光景だが、本人は必死だ。 顔面は蒼白で、脂汗をダラダラと流している。

「……お、おい、ガリウス隊長が……」 「あんな短時間で発狂するなんて……一体どんな精神破壊魔法を……」

残りの三人は、仲間の無様な姿を見てガタガタと震え上がっている。 「未知の呪具」への恐怖が伝染していた。

やがて、ガリウスの股間あたりがジワリと濡れ始めた。 恐怖のあまり、失禁したらしい。

「よし、これくらいでいいか」

俺はVRゴーグルを外した。 ガリウスは白目を剥き、口から泡を吹いて虚空を見つめている。 完全に心が折れていた。

「……はぁ、はぁ……ここは……現世か……?」 「さて、尋問再開だ。お前らの雇い主と、目的は?」

俺が冷ややかに見下ろすと、ガリウスは俺の足を舐めるような勢いで頭を擦り付けた。

「言います! 全部言いますから、あの地獄には戻さないでくれぇぇ!!」 「……我々は教会から派遣されました! 聖女アリス様を連れ戻すか、不可能なら暗殺しろと……!」

「――ああん?」

その言葉を聞いた瞬間、俺の中でスイッチが入った。 野菜泥棒だと思っていたが、こいつら、アリスを殺しに来たのか。

俺が眉をひそめると同時に、ジャージ姿のアリスが部屋に入ってきた。 手にはポテチ、口元にはチョコがついている。

「ん? ゲイル様、なんか騒がしい……って、ガリウスさん!?」 「せ、聖女様……!?」

ガリウスたちは、アリスの姿を見て絶句した。 やつれ果て、拷問を受けていると思っていた聖女が、ツヤツヤの肌で、見たこともないふかふかの服を着て、お菓子を食べている。

「あなたたち、また嘘をついたのね……。『聖女は魔王に囚われている』って」 「そ、それは……」 「私はここが一番幸せなの! 帰りたくないって言ってるでしょ!」

アリスが睨みつけると、ガリウスたちは完全に戦意を喪失した。 教会の嘘。 圧倒的な魔王の力(VRとLED)。 そして、幸せそうな聖女。

「……我々の負けだ」

ガリウスは項垂れた。

「こんな……地獄の幻影ホラーゲームを操り、光を支配する魔王になど、勝てるわけがなかったんだ……」

彼らは完全に俺に屈服した。 その後、彼らが「この城の掃除係として働かせてください」と懇願してくるまで、そう時間はかからなかった。 とりあえず、ガリウスには漏らした床を掃除させるところから始めさせよう。


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