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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第14話:春だ、畑だ、農業チートだ

「それではゲイル様、また来週『ケーキ』を頂きに参ります」 「ああ。ギルドへの口止め、頼んだぞ」

雪解けが進み、春の陽気が漂い始めた森の入り口。 Sランク密偵のシルヴィアは、ショートケーキの味に完全に買収され、我が家の「外交官」として帰っていった。 これで当面の間、ギルドからの干渉はないだろう。

「さて……」

俺はポカポカとした日差しを浴びて、大きく伸びをした。 雪に閉ざされていた冬が終わり、新緑の季節だ。 こうなると、日本人のDNAがうずき出す。

「新鮮な野菜が、食いたい」

通販で野菜は買える。だが、やはり「採れたて」の味は別格だ。 それに、毎日通販で買っていては魔石の消費もバカにならない。 家庭菜園で自給自足こそ、スローライフの醍醐味だろう。

「アリス、ポチ。ちょっと庭をいじるぞ」 「お庭ですか? お花を植えるんですか?」 「いや、もっと実用的なもんだ」

俺はウィンドウを開き、検索ワードを打ち込んだ。 『家庭菜園 初心者 セット』。 そして何より重要なのが、種だ。 この世界の野菜は、品種改良されていない原種に近いものが多く、実が小さくて酸っぱい。 だが、俺が買うのは『現代日本のF1種(一代交配種)』だ。 病気に強く、甘く、そして収穫量が多い。まさにバイオテクノロジーの結晶である。

『トマト(甘くて皮が薄い)』 『キュウリ(イボなし・病気に強い)』 『ナス(長ナス)』 『イチゴ(とちおとめ)』

カートに次々と放り込む。 だが、ここで問題がある。 森の土は木の根が張り巡らされ、石も多く、カチカチに固まっている。 これをクワ一本で耕す? 腰痛持ちの俺に、そんな重労働ができるわけがない。

「科学の力、見せてやるか」

俺はニヤリと笑い、とある「マシン」を購入した。

ズシン。

庭に召喚されたのは、真っ赤な塗装が施された、鉄の塊だった。 鋭い回転刃ロータリーを備え、ガソリンエンジンを搭載した猛獣。 『家庭用小型耕運機ハイパワーモデル』だ。

「ゲ、ゲイル様……? なんですか、この禍々しい鉄の魔道具は……」 「ワフッ?(強そうな匂いがするぞ?)」

アリスとポチが怯えたように後ずさる。 無理もない。内燃機関のメカメカしいフォルムは、この世界には異質すぎる。

「こいつはな、大地を支配する道具だ」

俺はタンクにガソリンを給油し、スターターロープを握った。 エンジン始動。

ドルルルルルルルルルッ!!!!!

「きゃあああああ!? 唸ったぁぁぁ!?」 「バウッ!?(敵襲か!?)」

爆音が静かな森に響き渡り、黒い排気ガスが噴き出す。 アリスは耳を塞いでしゃがみ込み、ポチは戦闘態勢に入った。

「ははは! ビビるなビビるな!」

俺はハンドルを握り、クラッチを繋いだ。 唸りを上げる赤いボディが、未開の荒れ地に突っ込んでいく。

ガガガガガガガガッ!! バリバリバリバリッ!!

凄まじい音と共に、鋼鉄の回転刃が地面を噛む。 カチカチだった土が、雑草や小石ごと粉砕され、宙に舞う。 石が弾け飛び、木の根が千切れ飛ぶ。

「す、凄い……! 土属性の最上級魔法でも、ここまで深く大地を抉れません!」 「見ろアリス! 土がフカフカになっていくぞ!」

俺は耕運機に引きずられるように前進するだけでいい。 ものの数分で、岩盤のように固かった荒れ地が、黒々とした柔らかい「畑」へと変わっていく。 人力なら一週間はかかる作業が、わずか三十分。 腰への負担はゼロ。

「これがエンジンの馬力パワーだ!」

俺はアクセル全開で庭を往復し続けた。

一方その頃。 森の奥深くに住む魔物や動物たちは、震え上がっていた。

『聞いたか、あの音を……』 『魔王様が、大地を切り裂く「鋼鉄の咆哮」を上げているぞ……』 『怒らせてはいけない。あそこには近づくな……』

ドルルルル……という地響きのようなエンジン音は、森の住人たちにとって「破壊の化身」の産声に他ならなかった。 この日を境に、ゲイルの家の半径一キロ以内には、虫一匹寄り付かなくなったという。

「ふぅ、いい汗かいたな」

エンジンを切り、俺はタオルで額を拭った。 目の前には、綺麗にうねが作られた、黒土の畑が広がっている。 そこに『最高級培養土』と『有機配合肥料』を撒き、種と苗を植え付けていく。

「これでお茶を沸かして、肥料の入った土を被せて……と」

最後に、通販で買ったジョウロで水を撒く。

「ゲイル様、これで本当に食べ物ができるんですか?」 「ああ。日本の野菜は美味いぞ。特にこのトマトは、フルーツみたいに甘いんだ」 「フルーツみたい……じゅるり」

アリスが涎を垂らす。 ポチも、フカフカになった土の感触が気に入ったのか、植えたばかりの畑の上でゴロゴロし始めた。 「こら、苗を潰すな」と叱りつつ、俺は満足感に浸っていた。

「早く育つといいな」

魔王のログハウスの庭に、平和な家庭菜園が誕生した瞬間だった。 その裏で、森中の魔物たちが「魔王が領土拡大を始めた」と恐怖しているとも知らずに。


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― 新着の感想 ―
おっさん、最高でした✨️面白ろ過ぎて一気に読みました。(^^)これからも長く続く事を期待してます。
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