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過労死して転生したのに、異世界でも社畜やってました。 〜42歳、無能と追放されてようやく気づく。俺のスキル『現代通販』は、働くためじゃなく「サボる」ためにあったんだと〜  作者: コニシ・リョウ
【第2章:要塞化と飯テロの攻防編】

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第10話:勇者パーティ、里に降りて嘘をつく

冬の森の麓にある、冒険者の街。 そのギルドの扉が、重々しい音を立てて開かれた。

「た、助けてくれ……誰か、回復を……」

雪崩れ込んできたのは、見るも無惨な姿をした四人組だった。 かつては輝くようなミスリル銀の鎧を身につけ、街の英雄として持て囃されていたSランクパーティ『銀の翼』。 だが今の彼らに、その面影はない。 鎧は凹み、顔にはオレンジ色の塗料がこびりつき、唇は紫色に変色して震えている。

「おい、あれは『銀の翼』じゃないか!?」 「どうしたんだその格好は! 遠征に行ってたんじゃないのか!?」

ギルド職員たちが慌てて駆け寄り、毛布や温かいスープを差し出す。 リーダーのレオンは、震える手でスープカップを掴み、一気に飲み干した。

「……ま、魔王だ……」 「え?」 「森の奥に……とんでもない『魔王』が住み着いてやがったんだ……!」

レオンの瞳には、狂気じみた恐怖の色が宿っていた。 無理もない。彼らは謎の要塞ログハウスで、氷のブレス(スプリンクラー)と毒液カラーボールの洗礼を受け、命からがら逃げ帰ってきたのだから。

ギルドマスターの男が、険しい顔で歩み寄ってきた。

「レオン、落ち着いて報告しろ。魔王とはなんだ? それに、荷物持ちのゲイルと、聖女アリス様はどうした?」

その問いかけに、レオンは一瞬言葉を詰まらせた。 まさか「ゲイルを追放したら野宿すらできなくなり、聖女は行方不明、自分たちは空腹で民家に泥棒に入って返り討ちに遭いました」などと言えるはずがない。 言えば、勇者としての名声は地に落ちる。

レオンは仲間の顔を見回し、目配せをした。 全員の目が、「口裏を合わせろ」と語っていた。

「……やられたよ。ゲイルのやつは……俺たちを逃がすために、囮になって魔王に食われた」 「なっ……!?」 「アリス様もだ。俺たちが駆けつけた時には、もう……」

レオンは嘘泣きをしながら、拳を握りしめた。

「あの森の奥には、鉄壁の結界を張った『城』があった。……あそこはヤバい。古代兵器か何かが眠ってる禁足地だ」

ギルド内がざわめく。 Sランクパーティを壊滅させ、あのベテランのゲイルと聖女さえも葬った未知の脅威。 それはもはや、国家レベルの災害指定案件だ。

「わかった。直ちに国へ報告し、討伐隊を……」 「やめとけ!!」

レオンが食い気味に叫んだ。 再びあそこへ戻り、あの恐ろしい「防犯ブザーの轟音」を聞くなど、死んでも御免だった。

「お、俺たちが命懸けで『封印の結界』を張ってきた! だから、下手に刺激しない方がいい! 誰も近づけるな、絶対にな!」

「そ、そうか……さすがは勇者だ……」

ギルドマスターは感嘆の息を漏らした。 こうして、ゲイルの住むログハウス一帯は、『触れてはいけない魔王の封印地』として、地図上で赤く塗りつぶされることになった。 ゲイルが「名誉の戦死」を遂げたことになっているとも知らずに。

一方その頃。 『魔王の城』こと、ゲイルのログハウス。

「よし、鉄板が温まってきたな」

リビングのテーブルには、通販で購入した『電気式たこ焼き器(24穴)』が鎮座していた。 今日は、アリスとポチの歓迎会を兼ねた「タコパ」である。

「ゲイル様、この丸い穴の空いた鉄板は、何の儀式に使うのですか?」 「まあ見てろ。ポチ、タコは好きか?」 「ワフッ!(海の軟体動物! 歯ごたえが最高だぜ!)」

俺はボウルに入った生地を、熱々の鉄板に流し込む。 ジュウウウウッ……! 香ばしい小麦の香りと出汁の匂いが立ち昇り、アリスが「ほうぅ……」と声を漏らす。

そこに、ぶつ切りにしたタコ、紅生姜、天かす、ネギをパラパラと投入。 千枚通し(ピック)を使って、器用にひっくり返していく。

クルッ、クルッ。 半熟だった生地が、見る見るうちに綺麗な真ん丸のボールへと変わっていく。 その手際の良さは、SE時代にデスマーチ明けの打ち上げで培ったものだ。

「す、すごいです……! 魔法のように丸まっていきます!」 「よし、焼けたぞ。ソースとマヨネーズ、かつお節はお好みでな」

俺はアツアツのたこ焼きを皿に取り分け、アリスに渡した。 アリスはふうふうと息を吹きかけ、一口で頬張る。

「はふっ、あふっ! ……あつっ! ……んん〜っ!!」

ハフハフと口を動かしながら、アリスが目尻を下げる。

「おいひいです! 外はカリカリ、中はトロトロ……! この黒いソースの酸味と、マヨネーズのコクが絡み合って……!」 「だろ? ビールにも合うんだよこれが」

俺は冷えたビールを流し込み、至福の息を吐いた。 足元では、冷ましたたこ焼きを貰ったポチが、幸せそうにハグハグと咀嚼している。

外は吹雪。 世間では俺が死んだことになっており、この家が魔王の城として恐れられていることなど露知らず。

「平和だなぁ……」 「はい、幸せです……」 「ワンッ!」

こうして、勘違いとソースの香りに包まれた夜は更けていく。 だが、この平穏がいつまで続くか。 ギルドが本当に調査を諦めるのか、それとも新たな訪問者が現れるのか。 それはまだ、神のみぞ知る……いや、通販サイトの履歴のみぞ知る、である。

(第2章 完)


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