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彼女の運命を変えるために、ボクは何度でもやり直す  作者: 末次 緋夏


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エピローグ ー レオナ視点 ー


ボクには、名前はなかった。

生まれてすぐに、ニンゲンに捨てられたから。


寒くて、お腹がすいて、

毎日ただ生きることで精一杯だった。


そんな時だった。


小さな足音が、近づいてきた。


「……あれ? 猫ちゃん……?」


はじめて出会ったその子は、

泣いたあとみたいに目を赤くしていた。


ボクを見て、そっとしゃがみこんで、

震える手を伸ばした。


「こわくないよ……大丈夫だから……」


大丈夫なんて、言ったって。

ニンゲンなんて、信じられるわけない。


だからボクは威嚇した。

逃げようとした。


……でも次の日も、彼女は来た。

次の日も、その次の日も。


「ごはん……食べないと、しんじゃうよ……?」


ボクの前にそっと置かれたお皿。

目をそらしながら、待ってくれている。


気づけばーー

ボクは、そのごはんを食べていた。


そして、ゆっくり近づいてくる。


「……触ってもいい?」


彼女の指が、そっと頭を撫でる。

その手は、とてもあたたかかった。


ああ、

あのとき初めてーー

ボクは世界に“味方”がいるって知ったんだ。


「私はユキっていうの」


ユキの手はあたたかくて。安心した。


「ねえ……名前、ないと不便だよね」


ユキは小さく笑って言った。


「……レオナ、とか……どうかな?」


その瞬間、胸の奥が熱くなった。


レオナ。

レオナ。

ボクの名前。


「……にゃあっ」


嬉しくて思わず鳴いた。

そしてユキの顔に頭を寄せた。

ユキはくすっと笑った。


「くすぐったいよ、レオナ」


その日から、

ボクは“レオナ”になった。


ーーずっと、こんな日々が続くと思っていた。


でもある日、

ボクは、大きな何かに襲われた。


痛みで体が動かなくて、

空が滲んでいって。


(……ユキ……)


もう一度、会いたかった。

それだけだった。




気づけば、真っ白な空間にいた。

倒れていたボクの前に、

金色の光をまとった誰かが立っていた。


『……あなた、最後までよく頑張りましたね』


優しい声だった。


『ユキという少女のそばにいたのですね』


「……うん。

 ユキは……ボクの、大事な……大事な子だよ」


『そうでしょうね。

 あなたの心が、よく覚えている』


神様みたいなその存在は、

ゆっくりとボクの目線にしゃがんだ。


『……ユキの未来を、見ますか?』


「……未来……?」


『あの子は、このままでは救われません。

 何度人生をやり直しても、

 どこかで必ず同じ結末にたどり着くでしょう』


世界が、音を失った。


そんなの。そんなの、いやだ。

「たすけたい……

    ユキを助けたいよ……!」


『願いは強いですね。

 では、叶えましょう』


「ほんとに……?」


『ただし条件があります。

 あなたは現実世界で“自分から正体を話してはいけません”彼女の運命、その原因を話してはいけません』


「……うん。わかった」


『そして、運命が変わったとき。

 あなたは消えます』


「……ユキが助かるなら、それでいいよ」


迷いは一つもなかった。

こうして、ボクは生まれ変わった。


コウという男の前に現れたのは、

ユキを救うためだけだった。


笑って、怒って、泣いて。

何度もくじけそうになりながら、

ボクはずっと見ていた。


そしてーー


『ユキ、もう……だいじょうぶ……』


あの日、あの子の未来が動いた瞬間。

ボクの体は光に包まれて消えていった。


最後に残った想いは、ひとつだけ。


ーーユキ、幸せになってね。

  ボクのだいすきな、大事な子。


光は風に溶けて、空へ昇っていく。


ボクは、とても、とても幸せだった。


ーーありがとう。ユキ。

  ありがとう。コウくん。


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