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彼女の運命を変えるために、ボクは何度でもやり直す  作者: 末次 緋夏


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第22話 ふれあう心

リビングに戻ると、ユキは毛布にくるまったまま、

しばらく黙っていた。


そしてぽつり、と語り始めた。


「……レオナってね。

 私が小六のとき……毎日こっそり世話してた猫の名前なの」


レオナの肩がびくっと震える。

ユキは俯いたまま続けた。


「家では飼えないって分かってた。

 お父さん、絶対反対するし……

 “無駄なものは家に入れるな”って……」


苦しそうに笑う。


「だから、学校の帰りにね。

 家の裏の物置に……隠れて、餌をあげて……

 一緒に昼寝して……

 あの子の毛、あったかかったんだ……」


その目はすでに涙でにじんでいた。


「お母さんがいなくなってすぐだったから……

 レオナは……私の唯一の“甘えていい場所”だったの」


レオナは、口元を両手で押さえていた。

もう今にも泣きそうな顔で。


ユキはそのまま話を続ける。


「……でも、ある日ね。

 いなくなってたの」


その声はとても震える声だった。


「餌皿も、その子の毛布も……ぐちゃぐちゃで……

 地面に小さな血がついてて……

 たぶん……野良犬か……カラスか……」


言葉が途切れた。


「……私、大泣きして……

 息ができなくなるほど、泣いて……

 思ったの」


ユキは両手を握りしめながら言う。


「“私がちゃんとしてれば……

 レオナはあんな目に遭わなかった”って」


レオナの瞳が大きく揺れる。


「里親を探せたはず。

 お父さんをもっと説得できたはず。

 私が“ちゃんとした子”じゃないから……

 また大切なものを失ったんだって……


その瞬間だった。ぽとり。


レオナの頬から、透明な涙が床へ落ちた。


『ちがう……っ』


声が震えている。


『ユキ、そんなこと言わないで……

 あの時間、あれは……

 ボクにとって……一番幸せだったんだよ……』


初めて、レオナが声を詰まらせた。

小さな手が、ぎゅっと胸の上を握る。


『毎日あなたが来てくれて……

 あったかくて、優しくて……

 ボク、ずっと嬉しかった……

 “ありがとう”って言いたかったのに……』


堪えきれない涙が、ぽろぽろこぼれる。


コウの胸に響く。


(……そうだったのか

 だからレオナは……

 あんなにもユキを守ろうとしていたんだな)


ユキが涙を拭い、震える声で言う。


「……ねえ、コウ君……

 そこに……レオナ、いるの?」


コウはそっとレオナのいる位置に手を伸ばした。

触れられないはずのその手を、ユキの手が、重なる。


「……いるよ。 今、ここに。すごく泣いてる」


「……っ」


ユキの瞳から、大粒の涙が落ちる。


「やっぱり……レオナなんだね……

 あの綺麗な緑の目をした……

 私の……大切な、大切なレオナ……」


レオナは腕を伸ばし、

触れられないはずのユキの手に、自分の手を重ねた。


『ユキ……

 ずっと会いたかったよ……

 ずっと、ずっと……』


触れていないはずなのに、そこには確かに“あたたかさ”があった。


ユキの涙。レオナの涙。

俺はただ優しく見守るだけだった。


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