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暗いけど、温かい

 いつも通りに、だけど少し大切に。そんな日々が何日も何ヶ月も続いた。ゆっくりと、お兄ちゃんとのお別れが近づいてくる。残り一ヶ月になった頃、院長先生がお兄ちゃんに荷物をまとめ始めてほしいと言っていた。箱に詰められて行く荷物。段々と物が少なくなっていく部屋。まだ一ヶ月もあるのに、泣きたくなってしまう。

 残り一週間になった夜、孤児院に預けられたあの日の夢を見た。忘れてしまったはずの父親の顔が鮮明になって、怖かった。その日、私は不快感と恐怖で目を覚ました。時計は2時を指している。再び眠ろうとするが、また悪夢を見るかもしれない恐怖で眠れなかった。一度水を飲んだら落ち着くかもしれないと思い、部屋を出た。廊下はあまりにも暗く、おばけが出そうだった。


「怖い夢でも見た?」


 おばけが出た。心臓が潰れそうになるほどびっくりして腰を抜かした。このびっくりと眼の前のおばけで死ぬんじゃないかと思うほどだ。


「ご、ごめんなさい!驚かしてしまったわね!」


 私にはこの声に聞き覚えがあった。リアリスタ院長先生だ。やっぱり先生はおばけだったのかもしれない。そもそもなんで先生はこんな夜に起きているのだろう。かろうじてあわあわしているのだけは分かる。


「せ、先生、怖いです…」

「そっそうよね!取り敢えず行きましょうか!」


 先生があまりにも動揺しているものだから少し落ち着いた。私はとにかく先生について行ってみることにした。暗い廊下に溶けて見えない先生の手を握りながら訪れたのは初めて入る先生の部屋。ノックさえすれば誰でも入っていいらしいけど、皆寄り付かないらしい。先生が部屋の扉を開けると、真っ暗だった。まぁ電気をつけていないからそりゃそうなんだけれども。先生が部屋に入り見えなくなり、すぐさまカチッと音がして部屋が明るくなる。


「誰か明かりで起きる子がいるかも知れないから扉は閉めてね」


 私はそっと頷き部屋に入ってから扉を閉める。先生はベッドの側に置いてあるポットでお湯を沸かしてココアを作ってくれた。私達より大きいけれど、沢山の荷物のせいで私達より少し狭くなってしまっている部屋。大量の箱の中には一体何があるんだろうと思った。


「ここに座ってココアでも飲んで。きっと寝やすくなるわ」


 先生の手招きに気付き、そのままベッドに座らせてもらう。意外と私達より硬いベッドだ。そう思いながらココアを受け取り飲む。美味しい。


「眠れそう?眠れないならここにいてもいいわ」

「先生は寝ないんですか……?」

「私は睡眠をとる必要が無い種族なのよ」


 先生はやっぱりおばけなのだろうか……。そう思いながらもゆっくりと微睡んだ。

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