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占い師(仮)は、自分の恋模様が分からない  作者: 花菱うるふ


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17/18

17.第八班の準助手、新居でこんにちは

メリークリスマス!


※本編は別にクリスマス関係ありません※

 それから、あれこれ部屋に関する事を教えてもらっているうちに、引っ越し業者がやってきて前の部屋からの荷物を手早く処理してくれた。あまりに至れり尽くせり過ぎてちょっと怖い。


「じゃあ~私はこの辺で帰るね~、ちなみに~仕事は~平日の八時から十七時までで~残業は基本無し、土日祝は完全休日で〜別途有給休暇と長期休暇もあるからね~」

「なんて真っ白な勤め先……」

「あはは~研究室所属になるから真っ白だけど、治安維持部隊とか~緊急救命活動部隊は昼勤・夜勤が分かれてるから忙しいみたいだよ~」


 また明日ね、と軽い挨拶を一つ残してニアラローズは帰っていった。一日の緩急がつき過ぎていて体調を崩してしまいそうだ。ふと、振り返ると部屋に赤い光が差し込んできていた、もう夕方だ。


「あ~夕飯……」


 引っ越し業者の人が前の部屋の冷蔵庫に入れていた食材も持ち込んでくれたと言っていた気がする。家具家電のスケールが今まで使っていたものより良くてびくびくしながらラシェールカは冷蔵庫を開けた。業者の手によってきちんと整頓された冷蔵庫の中身は、一食分食べられなくもない微妙なラインナップだ。残り僅かなパンと封の開いたジャムとバター、後はインスタントのコーヒー。いつもバイト帰りに一日分の食材を買い、それを食べるルーティンだったため元々食材の備蓄は少な目だった。うっかりの接触事故でいつ夜逃げをする羽目になるか分からない生活だったため、食材も余分なものは買わないようにしていた。


「そっか、もうこんな風にしなくて良いのか……」


 半ば強引に魔法使いの準助手という立場になりはしたが、ラシェールカにとっては案外悪くない生活になりそうだ。


「ええと、このタブレットで注文するのかな?」


 一人暮らし用にしてはやや広いテーブルの上に見覚えのないタブレット端末が置いてある。ニアラローズが言っていた注文用のタブレットだろう。起動させて最初にすることは使用者登録だ。タブレットの指示通りに準助手用管理カードを翳したり、指紋や虹彩なんかを登録していく。すると突然タブレットからホログラム映像が浮かび上がる。


『こんにちは、マスター。タブレットAIの”ジジ”です。室内で呼びかけていただければ全ての事柄に対応致します。日常会話も可能ですが、”ジジ”の対応はどのようなものがご希望ですか?』

「……びっ、くりした~。ええと、対応というと?」

『デフォルトの対応は常にホロ表示となっていますが、必要時のみホロ表示にする事が可能です。音声のみ等、細かい設定も可能です』

「ええと、とりあえず必要時のみで」

『かしこまりました。では、御用の際は”ジジ”をお呼び下さい』


 タブレットから出てきたホログラム映像は、何事もなかったかのように消えた。こんなハイテクな物を使っているなんて……流石生まれながらのエリート様だ、一般市民とは住む世界が違う。


「ご飯ってどう頼むんだ……?ええと、"ジジ"?」

『はい、マスター』

「ご飯頼みたいんだけど」

『お任せください』


 タブレットAI"ジジ"の補助を受けて、無事夕飯にあり着くことができた。それから、部屋の家具についてだとか設備についてもあれこれ質問を重ねたが、AIだけあって嫌がらずな回答をしてくれる"ジジ"にすっかり頼り切りになったラシェールカであった。


 それから数日、”塔”と家を往復する生活を送ったが、初日のようなトラブルも起きず、平和に過ごしていた。仕事と言っても、ラシェールカについて色々な数値を調べている段階の様で、機械の前で立ったり座ったりしているだけだ。今後は研究に加わってもらったり、占いをしてもらうとは告知を受けているが、今のところとても過ごしやすいと感じている。一か所に腰を落ち着ける事なんて、考えたことが無かったが存外悪くないのかもしれない。


「明日から休日か……何しよう……」

『休日の過ごし方をお悩みですか?マスター』

「うん……こんなにゆっくりした事なかったからどうしようかなって」

『でしたら、部屋の改装はいかがですか?』

「改装?」

『はい。マスターは入居時そのままでお過ごしですが、壁紙やカーテン、家具も変更可能です。マスターは何か趣味はございますか?』

「趣味……考えたことなかったかも」

『でしたら新しい趣味を持ってもいいのではないでしょうか。部屋を読書用の書斎にしたり、絵を描くためのアトリエ、映画鑑賞などのためのシアタールームにすることもできます。植物の育成や動物の飼育も可能です』

「動物かぁ……いや、生き物はまだ早いかも」

『生き物に興味がおありでしたら、植物ならいかがでしょうか。”ジジ”がサポートいたしますよ』

「う~ん……そうだね、植物にしようかな。ジジ、お願いできる?」

『お任せください』


 サポートAIの”ジジ”は今ではすっかりラシェールカの相棒だ。なんたって、冷蔵庫の中身まで把握してくれて賞味期限やレシピまで考えてくれる。ジジのいない生活に戻れと言われたら泣いてしまうかもしれない。そうして、ジジと話しながらあれこれ買い物をする。部屋を自分の過ごしやすいように整える楽しみが分かった気がする。


「ねぇジジ。ふと思ったんだけどさ、買い物の支払いって……」

『部屋の改装は公費でございます。服等も一定額までは公費に含まれますので、今回支払いが発生するのは植物の育成用品ですね。”ジジ”がマスターの金銭管理をしていますので、全て予算内で処理しております』

「公費……?」

『はい。国の支払いです』

「えぇ?こんな所まで払ってくれるの……?」


 魔法使いが重要視され過ぎではないだろうか。厳密にいうとラシェールカは魔法使いではないのだが同じ扱いで良いのだろうか、あまりに厚遇され過ぎてかえって不安になる。


『マスター、ニアラローズさまから連絡です。【休みの日にごめんね。月曜日の午後にグレンディン隊員との面談が入りそうだけど大丈夫?】との事です。お返事はどうされますか?』

「仕方ない、んだよね。ジジ、大丈夫ですって返しておいてくれる?」

『かしこまりました。了承の旨、返事をいたしました。気疲れする予定の様ですが、何か甘い物でも召し上がりますか?』

「お願いしようかな……」


 つい出てしまうため息にジジが気を使って焼き菓子と、紅茶の手配をしてくれた。早速仕事が憂鬱になってしまった。果たして、どんな面談になるのか。せめて平穏無事に終わってくれと願うばかりだ。

拙作をお読み頂きありがとうございます。


次話は1/5 18:30の予定です。


それでは皆様よいお年を!また年明けにお会いしましょう。

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