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第一章:第九話『承認』

 傷一つなく、綺麗なアセナが目の前で寝ている。幸せそうによだれを垂らしながら。


「もう食べられない~……」


「……なんでこんなに良い状態なんだ?」


「あぁ、それは、これを連れてきた人たちによると、睡眠薬を注入した肉を置いておいたら食べたらしいです。これほど綺麗な状態での提供は少ないですからね~」


 まぁ、無事ならばそれで良い。さて、


「起きろ、アセナ!! いつまで寝てる!!!!」


 地下いっぱいに響く声に反応し、起き上がる。


「……んぁー? 使徒様~どうしたですか~?」


「寝ぼけてんじゃねーよ。お前は何をしてるんだよ?」


「ちゃんとお肉は獲ったです! それで……お肉を食べたら眠くなっちゃったです」


「周りを見ろ。肉はどこだ?」


 眠たそうな半開きの目のまま辺りを見回す。周りを確認しここが森ではないことに気づき目が大きく開く。落ち着きなく辺りをキョロキョロと観察し驚いた表を浮かべる。


「アセナなんでこんな所に居るですか!? 使徒様なんでそんな血だらけか!?」


 アセナでも分かるようにゆっくりと説明を始める。これまでにあった事を少し睨みを効かせながら話す。


「――アセナ捕まったですか!? 使徒様六人殺したですか!?」


「あぁ、それでだな。奴隷商からお前を買い上げるための金はない。強く生きてくれ。」


「使徒様!? 置いてくですか!? これからは落ちてる焼けた肉は食わないですから! 使徒様~!」


 からかうのはこの辺にしておいて、いくらぐらいの値段になることか……最悪殺して強奪するが、勝てたとしても瀕死になるしな、この国から逃げる体力は無いだろうな。


「……使徒とは、どこかの魔女の配下ですかね?」


「一応強欲の魔女の使徒とは呼ばれている。力とかは使えるけど強欲の魔女に会ったことは無いからな、勝手に任命されたって感じだな」


 驚いた表情を浮かべ少々慌てだすがすぐに落ち着きを取り戻す。この仕事に相当慣れているようだ。


「……では、一つ証明をいただきたい。その黒狼族の奴隷紋を消してみていただきますか? 強欲の使徒様の恨みはこちらとしてはあまり買いたくありませんからね。」


 ……どうやって消すの? てかこいつ、アセナに奴隷紋つけやがったのか? 俺の仲間に何してんだよ!? 十分恨むよ?


「い、良いだろう。この奴隷紋を消せたら、アセナを返してくれるということでいいな?」


「もちろんでございます。」


 と、言ってもやり方は分からない。正式な消す方法はあるのだろうが、もちろん知るわけもない。つまりこの奴隷商が言いたい事は正攻法を使わずして奪えという事、強欲の力を持って奪えという事。前に能力をゲットした時の感覚を蘇らせる。


 ――絶体絶命だった。あのままでは死んでいた。『まだ死にたくない』と心の中で大きく叫んだのを覚えている。底知れない怒りだった。大切な仲間を奪われた。『許せない』と心底思った。


 ――どうにかしてアセナを助けないと……


『条件を満たしました。強欲のスキルが発動。能力《承認服従》を獲得しました。』


 承認服従? わざわざ承認が必要なのか? めんどくさいが、今一番欲しい能力だ!


「アセナ、俺に服従しろ!!」


「……ふぇ?」


 何とも腑抜けた返事。それもそうだろう、急に服従しろなど言い出すものではない。


「えっと……」


『能力《承認服従》発動しました。』


「……え?」


 声がどこからが聞こえた後、アセナの叫び声が響く。


 新たな奴隷紋の出現。胸のあたりの紋章が浮かび上がり、光る。考えている最中だというのにこれだ。いかにも強欲の魔女らしいやり方だ。拒否権は無い。


「アぁ、アァぁァ! ァァ、ッガァァア、あァぁ!!!!」


 地下中に響く悲鳴が反響してさらに大きな音に聞こえる。


「アセナ! 大丈夫か!?」


 まだ返事してないだろ? 承認はどこ行ったんだよ? めっちゃ苦しんでるじゃん。


「――これは、奴隷紋同士が反発しあっている状態ですね~まさか本当に強欲の使徒だったとは、驚きですね~」


「アァぁァァあァ! アアァ、アぁ、ぁ……」


 耳に響く悲鳴が止み、静かになる。寝て起きて元気だった姿は無くなり疲れ果て地面に倒れたまま起き上がらない。


「アセナ!」


「とんだご無礼を強欲の使徒様。契約通りそれは無償でお返しいたします。今回だけの特別とさせていただきますがな。」


 コイツに言いたいことは山ほどあるが、今はアセナが先だ。無事にアセナは取り戻すことが出来た。コイツもこれ以上も俺に何かをするつもりはなさそうだ。あとは、


「この国から出るだけだ。アセナは動けるか?」


「ちょっと力が出ないのです~」


 魔女を倒した計らいと、クエイとその他の人たちの弁明で国外追放で済んだけど、不法入国がばれたら、これだけで死刑になりかねない。何とか見つからずにこの国から脱出を図りたいが、出口は正門しか知らない。待ち伏せをされてるならばそこしかない。


「戦いは避けられないか……」


「戦いですか!? なんかちょっとやる気出たです!」


「アセナは安静にね」


 アセナは嫌なのか、頬を膨らませ、不満を表現する。


 ……可愛いな。


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