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第一章:第七話『獣人』

「強欲の使徒様! きょ、今日はどうなさったんですか!?」

森の奥から突撃した狼。敵対している訳でもなさそうなのでひとまず安心する。

これが獣人か……しっぽがフサフサしてて可愛いな。

目線は同じようなものだかどこか身体が大きく見える。尻尾、耳の形、その辺の特徴は前の世界と同じだが体は人間である。奇麗な琥珀色の大きな目、尻尾は跳ね上がりゆらゆらと大きく揺れている。

「……何か御無礼をしましたですか?」

そう言えば人間の言葉使ってるんだな。敬語とか慣れてないのか?カタコトだけど。

世界観背景を考察しながら爪の形から尻尾の毛先までまじまじと見ながら異世界を堪能する。

「いや、失礼とかじゃないんだけど、獣人をしっかり見るのは初めてでね、少し見てただけだから気にしないで。」

「え、えっと……もっと見たいなら、服でも脱ぎますですか?」

「えッ! いや違くて、大丈夫……」

獣人ってみんなこんな感じなのか? 確かに獣は服とか着ないし、こういうのも大丈夫なのか!?

ハーレムライフ復活の兆しに明るく照らされ、内心盛り上がりつつも平然を装う。

「それで今日はどうしたですか? まさか……私を始末しに来たですか?」

尻尾が逆立ち、鋭い目つきでこちらを見据える。少し前傾になった体は一瞬にして距離を詰められるだろう。うっすらと聞こえる警戒の呻き声。

……何故そうなる!? めちゃくちゃ警戒されている。もしや……強欲の力を警戒しているのか? 溢れ出す何かがあるのか!?

「ただ国を追い出されたからフラフラしていただけだよ。始末なんて考えてないよ」

自分を害しに来たわけでは無いと分かれば先ほどのように愛らしい。逆立った尻尾も再度揺れ始める。

「……じゃあ、強欲の使徒様は私を連れて国を滅ぼそうってことだ!!」

……何故そうなる!? しかもめっちゃニコニコしている! これが黒狼族か……

黒狼は少し怖いなと苦笑いを浮かべる。ハーレムライフではもう少し安泰な暮らしを送りたい。少し狂暴な所があるため正妻の座は下りていただこうと決定する。

いくら強欲の力があるからって国は無理があるだろう。そこまでの力は無いと思いながらも星一個破壊できるほどの力は夢に見る。

そうこう浮かれながらも一つ気づく。

「……俺が強欲の使徒だってどうやって知ったんだ?」

もしかして、国際指名手配犯になっているのかもしれない。どこの国にも入庫国出来ずにホームレスとなる可能性を少し恐れる。クエイも出会った頃は自分に魔女が関係していると分かっていなかった。見た目で分かるようなものではないはずだ。なにか特殊な見分け方があるのか、野生の感か。

「それはアセナも強欲の魔女の配下ですからです! なんか分かったです!」

と、言う事は、こいつは魔女にあったことあるのか!

初めて出会うヤバイ雰囲気を漂わせるヒロインの情報源に歓喜する。これで旅の目的に一つ近づいた。通信技術など無いこの世界で人一人見つけるのは年は必要だと思っていたが案外早い終着になりそうである。

「……強欲の魔女ってどんな奴だったっけ?」

「忘れたですか? アセナもあんまり思い出したくないです! 強欲の魔女様はアセナの村を襲ってきたです!」

――もうなんか嫌われる理由分かった。

「――それで、従属の呪いをかけてきたです。けど、そのあとからずっとほっとかれてるです!」

聞く限り絶対に嫌われるような思想と性格の持ち主であり、ヤバイヒロインは真のヤバイヒロインだった。恐れ多いことから今日からは強欲の魔女と呼ぶことに自己決定。アセナの集落をたった一人で崩壊させる強さ。嫌われ、疎まれ、憎まれていても復讐されない強さ。強欲の魔女という魔女の強さが少しわかった気がする。

……興味が無くなったらどうでもいいってことか。こりゃ仲間にも嫌われてることだろうな。

ヤバイ奴ではあるが、この世界に召喚した真意など問い詰めたいことは沢山ある。会いに行く目標は変わらない。気を引き締めなければならない。

「見た目とか覚えてる?」

「覚えてないです!」

人柄は分かったからとりあえず良いか……それにしてもめんどくさい人の使徒になっちゃたな。

「それで使徒様は国を滅ぼさないなら何しに来たですか?」

王国を追放されて行く当てもなければ、頼れる人ももういない。ならば道は一つ! これにかけるしかない、

「僕をここに居候させてください!!」

強欲の魔女に会いに行くのが目標だが、どこにいるかも分からない。ならばまったりスローライフでもしながら気長に探すしかない。

急に居候させてくれと頼むからだ。アセナもキョトーンとしている。しかし返ってきたのは二つ返事だった。

「分かったです! 良いです!!」

軽く許可をもらった。


「どうぞです。使徒様! 取れたての肉です!!」

目の前にさっきの大きいイノシシの肉が出される。ついさっき殺したばかりの鮮度ばっちりの肉だが、

「処理とかは、してくれないの……?」

力で思いっきり引き裂かれ、小分けになった、獣の皮がついたままの肉塊。火も通しておらず、まだ血が流れている。人間が食べれる品物ではなかった。

……この生活は大変だな。

そもそもアセナにも家らしい家はなかった。縄張りを転々としながら生活していたためである。

「食わないですか?じゃあ食べますです!」

ここで居候するのと、一人で旅しながら生きていくのはあまり変わりがなかった。

「まず焼こう。それから食べよう。」


***


居候となり数週間が過ぎる。この生活もより安定したものへとなってきた。当初の問題は衣食住の住だった。何分建築のスキルもなければ知識も無い。木を結ぶなどは出来ないことは無いが、それで住めるかと言われれば酷いものだ。今ではアセナが大木を見つけ根をかき分けまるでリスのような生活をしている。雨風が多少防げるだけ十分と基準が低すぎる。この生活はあまり続けたいものではない。

食事はとって来てくれるがそれ以外が出来ない。火のつけ方など、教えれば出来るのだが理解までが長い。力で何とかなってきたと本人は語るが良く生きてこれたなと感心するレベルだ。

「――違う。トイレは向こうだ。あとモグモグしたままトイレに行こうとするな」

「は~いです。あとアセナは狩りに行ってくるです!」

「分かった。俺は木の実とかでも採ってくるよ。」

アセナは肉しか捕ってこない。おかげで顎の力がどんどん上がっていっていることだろう。食事に関しては元の世界が恋しいと思うことが増えてきた。せめて前の王国ぐらいの物でもいいからしっかりと整ったものが食べたい。


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