第一章:第十二話『城の住人』
指名手配され、森で暮らしている身としては、どこかのちゃんとした家に住みたいが入国審査の時点で捕まってしまうだろう。
「――今や無法地帯になってる国があるです! あそこなら勝手に入っても怒られないです!」
という訳で来てみたのだが、
「思ってた以上に荒れてんな~……」
正門などの大きさからして元は立派な国だったことは感じられる。しかし見える範囲でまともな人間は見えない。片手には何かしらの武器を所持し、いつでも殺し合えるだろう。路地裏からは何かが腐敗した嫌な匂いが漂う。安全に住めないと思い、ここでの新居探しは諦める。
「アセナここには何も無い帰ろうか。」
「まだ着いたばっかりですよ? 家あるですよ?」
家はある。確かにそうだ。だがここ暮らしていける自信が無い。さっきからよく人にぶつかるが、全員金をすろうとしてくる。よくこの見た目の人から取ろうと思うな。
ワイシャツは血に濡れ、赤い服となってしまっている。水洗いはしたものの全く落ちなかった。これ以外となればイノシシっぽいやつの毛皮の服しかない。どこかの民族にはなりたくないということで、却下した。買おうにもお金がないためずっとこれを着ていくしかなかった。
「あと、ここに前強欲の配下が居たです! 最近は来てなかったから分からないです!」
ここにも強欲に振り回される可哀想な奴がいるのか。
「なら探してみるのも悪くないか。どんなやつか気になるし。特徴とか分かるか?」
「分かんないです!」
元気な返事だ。はっきりと言うのはいいことだな! だいぶ困るけどね。
あてもなく探し回るのは面倒なので探すのは諦め会えたらラッキ―程度にしておく。あまりこの国に長いしたくないという思いもある。住むことなど論外だ。
「アセナを虐めてくれれば《復讐者》で簡単なのに」
「アセナを虐めるですか? いい度胸してるですね! 来たらこうして、こうして、こう避けてからの、こうしてやります!」
聞いてる分には可愛い感じがするが、動きはちゃんと研ぎ澄まされているため、怖さを感じる。
「それはそうとしてだな、アセナよ。金はどこにあると思う?」
「金ですか? 何かほしい物でもあるですか? そういう時は奪うのです! 弱肉強食です!!」
さすが強欲の配下だ。ちゃんと考え方がおかしかった。アセナだからなのか?
「答えは城だ! あれだけデカイんだ、金貨も大量にあるに違いないというわけであの王宮に行くぞ!」
開かずの宝物ことかあれば、強欲の力で無理やり中の金銀財宝、宝の山を奪いつくしてやる。無かったらもうこの国に用はないし適当な人から奪うか。
アセナより考えがおかしいことはさておき、アセナにこの国のざっとの情報を聞いた。魔女に滅ぼされたとしか知らなかったが。世の中には馬鹿強い魔女がいると知れた。他にも色々聞いたが、大雑把すぎて存在程度しかわからなかった。
屋根の一部が崩れ去ったりなどボロボロの城を目指して歩いて行く。城に近づくにつれ人通りは少なくなっていった。現地の人間、しかもこんな所で暮らしているような人間すら近づかない場所だこの城中には何かがあるのは間違えない。
「――さて、中にはどんなお宝があるのかな~?」
勢いよく裏門をこじ開けると中には無数のアンデッドの軍勢がいた。スケルトン、ゾンビその他多数の死んだ者たちであふれかえっていた。こちらに気づきカチャカチャと音を立ててくるスケルトン達。腐った足を引きずりながらのそのそと歩きよってくるゾンビ。
静かに門を閉めた。
「面倒だが、お金には代えられない。穴が空いてる所探して入るか。」
「アセナ、アイツら嫌いです……臭いです」
崩れた瓦礫を登ってみたり、木を登ってみたり、時にはアセナに投げてもらい何とかして王宮内に入ることに成功する。元王宮だけあり大きく壁や床まで綺麗に作られている。しかし、戦いの跡か壁や天井には風穴が入り、長年放置され埃まみれである。
「なんも無いな。金はどこにあるんだよ!? もういっそこの辺の奪って売り飛ばすか?」
一階に降り、少し開けた場所に人影を見つける。鎧を身につけ動かない。
城内ではアンデットは見かけなかった。こいつはここの住人って事か?
「使徒様そいつは――」
「おい、そこの人この国の財宝はどこにあるか知らないか?」
ゆっくり近づく。完全に油断している。敵だとしても一人、何とかなると思っている。間合いに入り俯いている顔を覗き込む。
「おーい生きてるか?」
その顔が生きている人の顔ではないと気づいた時には遅かった。瞬間右手が柄に手がかかり高速での抜刀。反応は出来ない。脳の処理では動いたとしか捉えられていない。避けるという思考まで至っていない。棒立ちの首に一線。後ろからアセナが弾いてくれなければ死んでいだ。
「――使徒様!! こいつの匂い、もう死んで腐ってやがるです!」
弾かれ吹っ飛ばされたのにも関わらず立ち上がってくる。アセナの攻撃を受けても無事。ただのアンデットでは無い。
「デスナイトです!」
デスナイト、一般のスケルトンの中でも上位の戦闘力を誇る魔物で、英雄級の戦士の成れの果てである。元英雄級ともあれば技量はもちろん、さらに死への恐怖もない痛覚も無いためひたすらに攻撃を仕掛けてくる厄介な魔物だ。
「よくも俺を騙し殺そうとしてくれたな。これは、復讐の対象に入るぞ?」
身体強化のバフがかかる。これで反応もできるであろう。解釈の範囲がだいぶ緩い気もするがこれくらいないと生きていけない。
「アセナ手伝え。早く終わらせて金貨を回収しなきゃならないからな。」
「殺ってやるです!」
アセナが勢いよく突っ込む。力を溜め込み、時間差で突っ込む。踏み切った直後雷鳴が響くような音がする。まさに閃光。音のした方を振替れデスナイトだが姿はない。アセナの攻撃の隙をぬい背後に回りデスナイトに刃を突き立てる。
――貫けないか。さすがに鎧は切れないから。殴打でやるしかないか……
オーバーエフェクトは見た目だけの幻術であり見た目通りのバフは掛かっていない。振り向きざまの攻撃を避け大きく後退しスペースを開ける。アセナが戦いやすいようにするため。
「アセナ! 俺じゃこいつを倒せるだけの攻撃ができない。殴って殺してくれ」
「さっさと殺すデス!」
アセナの周りにオーラが出始める。それは自分が出したことのあるオーラと似ていた。それは手に集中し、より濃密となり実体化する。手の形に合わせたオーラは鋭い大きな爪となる。
「……何あれ? オーラってあんなことできるの?」
アセナの身体能力が上がり、一層速くなる。大きく振りかぶり、一撃。鎧事大きく凹み、切り裂かれる。鉄の拉げる音が城に響き立ち上がる音は無い。
「殺ってやったのです! アセナ強いのです! 一撃です!!」
尻尾をブンブンと振りながら成果を何度も報告してくる。子供のようで愛くるしく感じる。
「よくやったアセナ。すごいぞ! ところでさっきの手のやつってどうやるの?」
アセナの説明は擬音が多くてよく分からなかった。理解できない講座を受けながらも,ひときわ大きく豪華な扉の前に来る。この扉をはがして売るだけでも何年かは生きる事が出来るだろう。
「……だから、この辺からブワーってなって、全身がワ~ってなるです。あとは手にやるだけです」
「……分からんて。」
ゆっくりと重厚な扉を開く。中は今までに見て来た部屋より随分と奇麗になっている。だがよく見れば整えられているだけであり血痕などはそこにあるままだ。そして全体を見た視線は正面へ、玉座に座る人影。
「――ここに来られたということは、デスナイトを倒したのですわね。久しぶりの来訪者が無傷でデスナイトを倒す強者とは、骨が折れますわね。」




