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デスゲームに参加したい

「私、今すぐデスゲームに参加したいです!」


 おりひめ委員長がなにか言い出した。って言うか、デスゲームなんてここらでやってるところなんてないでしょう、と突っ込みたかったが、あまりにもおりひめ委員長の目が輝いているのでそんなことは言えなかった。


「デスゲームがしたいです!」


「なんでわざわざ二回言ったんですか」


「デスゲームがしたいからです」


「あんたそれ言いたいだけでしょう! ホントはデスゲームなんて、怖くてできないんじゃないですか?」


「む。そんなことはありませんよ。私はデスゲームに参加したいんです!」


「一応確認だけど、なんで参加したいんですか?」


「賞金が欲しいからです」


「………………賞金が欲しかったら、それこそなんかの小説の章にでも応募すりゃいいじゃないですか?」


「ダメなんですよぅ。デスゲームで勝っていく爽快感も欲しいんです」


「勝つ前提なのね。でも、勝ち進めないと行けないってことは、相当なテクニックがないとむりですよ」


「私はハリセンだけで勝負します」


「古典的――ィ――! いや、ハリセンで戦うようなやつもあるっちゃあるケド、そんなゲームやってないと思いますよ」


「なら私たちでやりましょう」


「やんねーよ! とんだ恥かくところだわ!」


「私はやりたいんです」


「知らねーよ! あんた一人でやっててくれ!」


「むぅ、神崎くんは意気地なしさんですね。チキン!」


「ンだとこの野郎! やってやろうじゃねぇか!」


 俺は折り紙でハリセンを作り上げた。もちろん委員長の分と俺の分、両方だ。


「さぁ勝負だ!」


「あれ、神崎くん何やってるんですか? 休み時間にハリセンなんか作って。アホなんですか?」


「腹立つ! なに!? お前が言ったんじゃねぇか!」


「お、お前――! 今神崎くんが私のことお前って言いましたよ!」


「アァ言った! 俺の名誉が傷付けられたから! お前のせいで飛んだ恥かいたじゃねぇか!」


「うわーん、神崎くんがいじめます!」


「いじめてない! 断じていじめてないからな!」


「うわ、神崎くんサイテーだね」


「おい夏美! 俺のせいじゃないぞ! 断じて俺のせいじゃない! 委員長が被害妄想してるだけ!」


「いくら身長が低くて、うるさい女の子だからって、そこまで言うのってどうなの?」


「夏美さん! 夏美さんが一番私のこと傷付けてますよ! すっごい傷つきました」


「子どもいじめちゃダメでしょ。どう考えても」


「だから夏美さん! 私はいじめられてるわけじゃないんです!」


「うわ、神崎くん人としてどうかと思うよ。マジで」


「俺のせいかよ! なんか俺が悪者みたいにされてるので謝ります! どうもすいませんでした!」


「よしよし、神崎くん偉いね! 超感動した!」


「感動やっす! 委員長の扱い雑! って言うか俺が謝っただけで生まれる感動って、あまりにもチープすぎやしませんかね!」


「委員長も、それでいーよね?」


「そ。そそそそうですよ! 私がいじめられるなんてあんまりです!」


 委員長は憤慨している。その姿はまるで年上の者とは思えなかった。


「私だって怒るときは怒ります! ぷんすか、ってね」


「委員長可愛い! なにあなた可愛い!」


「え、えぇ、そうですかね! 私って可愛いですかね! やりました! 神崎くんからべた褒め食らいましたよ、私!」


「委員長の感動の方が安い! 褒められただけですぐイチコロ!」


「う、うわーん! 神崎くんがまた私のことバカにしました! 許せません! これは天誅を食らわさなければ……」


「なぁなぁ委員長、今天誅って言ったか! なら代わりに私がやってやってもいいぞ!」


「待ってエリカ! お前の天誅はただの暴力!」


「そんなことはないぜ! 私だって手加減ってものは知っている!」


「ストップ! 暴力系ヒロインは今ものすごく流行らないんだぞ!」


「な、なんだって……! そうなのか……? ならやめておこう!」


「撤退はや! お前人気獲得したいんだな! ヒロインの中でも優遇されたいんだな!」


「女の子としてみて欲しいぞ! 私は男じゃない!」


「そうだった! 見た目ハーフで、超絶美人なのに、性格があれなせいであれな扱いを受けてるんだったな! すまん、慣れすぎてて忘れてた!」


「くっ、伊織に言われると、改めて私の弱点が浮き彫りになっていくな。そうだ、私にはまだまだ努力が足りないんだな! なら伊織! 私の師匠になってくれ!」


「お前の敵俺じゃねーの!? どういう関係性!? あれか? かつての師匠がお前の敵として立ちはだかる的な、そういう展開か!? だとしたら御免被る! 面倒くさい!」


「い、伊織が私の相手をしてくれない……だと…………!? だがこれも仕方ない! なぜなら伊織にふさわしい女に、私がなれてないからだ!」


「お前ポジティブ! すっごいポジティブ! 俺泣いちゃう! お前のポジティブさが眩しすぎて泣いちゃうレベル! 辛いことがあったら言えよ! お前の相談役に、いつでも俺はなってやるからな!」


「い、伊織ィ――――――! お前はなんていい奴なんだ! 私感動しすぎて前が見えない……」


「エリカ! 俺はお前の味方だ! さぁ俺の胸に飛び込んでこい!」


「お、おう……………………! わ、私でよければ、お前に飛び込んでやる!」


「わー、ダメですよ! エリカさんそれはめっです! この男はさりげないボディータッチを望んでいるんです!」


「そ、そーだよ! 神崎くんはこう見えても、獣なんだからね!」


「俺の扱いも雑じゃね!?」


 おれは息を枯らして突っ込んでやった。ふぅ、お前に突っ込んでやろうか! なんてね!


「あ、あの………………」


 と、今まで話に入ってこなかった環奈が、おずおずと手を挙げた。


「どうしたんだ?」


「わ、私も、デスゲームやってみたい、かな………………なんて。あはは。わ、私なんかがなに言ってんだって話だよね!」


 そうだった。これはデスゲームの話だった。

 あまりにも話が逸れすぎていて、本来の話題を忘れていた。


「そうだったな。デスゲームの話だった。けど、やれるところなんてここらにはねーぞ」


「わ、私には心当たりがあるよ!」


「ほう、それはどこだ?」


「空き地!」


「オーソドックス! 俺はもうちょっと斜め上の回答を規定していた! けどわかる! 空き地でもデスゲームできるモンな!」


「う、うん! そこでインクの入ったボール投げる奴、やってみたいなって!」


「そうか……、お前もデスゲーム信者だったんだな!」


「で、デスゲーム信者ってなに!?」


「その名の通り、デスゲーム教の信者だ!」


「新手の宗教!? わ、私そんなところに入信したくは、ないかな」


「ダメだ! もうおれらは運命共同体なんだ! 全員が全員、デスゲーム教の信者なのだ!」


「いやだ! 私そんな宗教はいりたくない!」


「ダメだ! 強制入信!」


「怖いよ!? 神崎くん目が怖いよ!?」


「さぁ、この紙に血判を押すのだ! 人差し指を出せ!」


「ひぃいいいいいい! 神崎くん目が! 目がいっちゃってる!」


「いくときは一緒だ!」


「やばいよ! そのセリフセクハラだよ! け、けどわかった! 血判だね! 血判を押せば、ひとまずその目をやめてくれるって言うんだね!」


「そうだ! 俺らは運命共同体! 空き地でデスゲームをやるのだ!」


 あれ? 俺ってそういう設定だったっけ? って言うか俺はそもそもデスゲームをやりたいんだろうか? まぁ、いいか。

 何か俺自身がデスゲームにとりつかれているような気がするけど、この際背に腹は代えられない。


「お、おしたよ……」


「ほう。よくできている。ペロペロしていいか」


「ダメだよ! なに言ってるの!? おかしいよ! 神崎くん暴走してる! ねぇどうしたの!? はっ! もしかして神崎くん!? お腹空いてきた!? お腹空いてきたから、目がいっちゃってるの?」


「そうだ。そしていくときは……」


「だからダメだって! 私下ネタ苦手なんだってばぁ! 神崎くん戻ってよぅ! いつもの神崎くんに戻ってよぅ!」


「俺はデスゲーム………………ぎぎぎ、デスゲーム教の信者だ」


「おかしくなってる! もう電池交換して! 誰か神崎くんの電池交換してあげてよ!」


「デスゲーム、バンザイ。デスゲーム、バンザイ!」


「か、かかかか神崎くん!? 本当に大丈夫!? お医者さん呼んだ方がいいレベルだよこれ!?」


「俺はデスゲームが大好きだ!」


「愛の告白! 神崎くんの告白を聞いてしまった! は、はわわわわ! どうしたらいいの私! 顔が熱くなってきた!」


「デスゲームは世界を救う!」


「救わないよ! デスゲームごときがなに夢見てんの!? 神崎くん戻ってよ!」


「お? なんだ環奈か。今日はいい天気だな!」


「かかかかか環奈! いま環奈っていった! 神崎くんが私のこと名前で呼んでくれた! うわーいやったー!」


「あれ……………………? 俺はいったいなにをしていたんだ?」


「神崎くん!? 戻ったんだね! 意識取り戻したんだね!?」


「あ、あぁ、だが俺は本当にいったいなにをしていたんだ?」


「神崎くん! よかった……! 暴走が止まったんだよ」


「暴走……だと!? 俺が暴走していたとでも言うのか?」


「そうだよ。なんかデスゲームは世界を救うとかほざいてたんだよ!」


「なんだと!? 俺はそんなことをほざいていたのか! ええい! この青二才が! デスゲームごときが世界を救えるわけねーだろうが!」


「神崎くん! 自分を責めるのはやめて! そう、落ち着いて! 深呼吸だよ! それくんかくんかすーすー! あれ!? 私もなんかおかしくなってない!?」


「それはきっとお腹が空いてきたからだな!」


「毎回思うけど何なのその謎理論! あれ、けど、お腹が空いて頭が……………………頭がおかしくなってきた……!」


「ほう。それは覚醒の兆しだな」


「覚醒の兆し!? いったいなにに覚醒するって言うの!?」


「デスゲームの悟りだ! 今日からお前は司祭だ!」


「司祭! プリースト! やったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ! 私プリーストなんだね! 祈っちゃうよ! 全力で祈っちゃうよ!」



 環奈が祈り始めてしまった。まぁ放っておけば何とかなるだろう。

 と、タイミングよくチャイムが鳴った。

 今日の昼休みはこれにて終了らしい。

 まったく。

 昼休み……………………いつになったらまともな昼休みを堪能できるんだろうな。

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