プロローグ 『神と御子は円環の理となりて』
お読みいただき、ありがとうございます。
――警告音が鳴り響いている。
「何故だ。何故なんだ!」
必死に叫ぶ女性がそこにはいた。
しかし、彼女がどれだけ叫んでも騒がしい警告音は止まらない。
「何故今になって我々を――」
「あなた方は、人の範疇を超えてしまった」
女性の叫びを遮って、それらは答えた。あたかも自分は人ではない、というような口ぶりで話すそれらは、光が集まっている物体で、ぼんやりと人の形をしている、とわかるのみだ。
その船には、女性以外にも大勢の人が乗っていたが、その部屋には女性とそれらがいるのみだ。それにも関わらず、それらはその船全体を包み込むかのような笑顔と、憐れみの入り混じった表情をして――とは言っても顔があるわけではないが――最後にこう言った。
「さようなら、私たちの親であり子らよ」
その瞬間、船の中から人の気配が消え失せた。
「次は、失敗しない」
人の気配がなくなった船は、その主がいないままに目的地へとひたすら進む。その後ろ姿を、さびしそうに見つめている光があった。
そして、時は流れる。
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「あなたの髪を見ていると苦しいの。二度と顔を見せないで頂戴」
それが私の、家族との最後の記憶。
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今日はプロローグ含め、2話投稿です!