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31話 私のウエディングドレスが楽しみらしい

「お気に召すようでしたら、採寸などはすぐに取り掛からせていただきますが、いかがしましょうか」


お店の方に、こう声をかけられる。


判断を仰がれているのだろうが、私だけで決められるものではない。

ちらり控えめに、シルヴィオ王子へと目を流す。


「アンナ様、なにも恐縮することはありませんよ。先ほども言ったでしょう、これは恩返しですよ。それに俺は今日、この服もいただきました。等価交換です」


まったく、等価ではないと思いますけどね……?


もったいないから、と捨てるはずだったものを縫い直した作業服と、職人の手により完璧に磨き上げられたドレス――。

比べるまでもなく、価値の差などはっきりしている。


笑い種にしかならないようなことを、しかしシルヴィオ王子は至極真面目に顔色ひとつ崩さずに言ってのけた。



私の屋敷での働きと合わせたところで、釣り合わないことは百も承知だ。


だいたい、彼は自覚がないらしいけれど、私の方こそ彼から色々なものをもらいすぎている。とくに、その底なしの優しさや慈愛にはどれほど助けられているか。


そのうえこんな高価なものをもらっては、天秤は片方へ傾くばかりだ。



けれど、今は素直に受け取りたいと思った。

釣り合っていないのは、今さらすぎる話だ。それに、体面を気にして断っても、彼は喜んではくれないだろうから。


「……では、これをいただきます」

「よかった、受け取ってくれて」


やっぱりだ。シルヴィオ王子は優しげに微笑んでくれた。すぐに「これを貰おう」と男性店員の方を振り向く。


すると店員はまず、深く腰を折って長々と礼をした。

さっきまでもかなり親切かつ低姿勢だったが、いっそう礼儀正しくなった気がするのは、このドレスが相当高いがゆえだろう。


「お買い上げありがとうございます。では、お妃様。このまま丈合わせに入りますか」

「えっと……よろしいですか」


私は再び、頭一つほど上のシルヴィオ王子に問う。


「はい、式までの時間も迫っていますから、早いに越したことはないかと。俺は終わるまでここで待っていますよ」


寛大にもこう言ってくれたので、私は男性店員の方に案内され、店の奥にある衣装合わせの部屋へと通された。


しかし、店員だけがシルヴィオ王子に呼び止められて入ってこない。


二人は小声で話してこそいたが、客は誰もいない店舗だ。聞き耳を立てるつもりはなかったけど、うっかり耳に入ってきてしまう。


「そこの店員、すまないが女性の方はいらっしゃるか?」

「は、裏に控えておりますが」

「アンナ様のウエディングドレス姿を見る男は、俺が最初でないなど考えられない。すぐに代わっていただけるとありがたい」


「かしこまりました。ご心配なら、一緒に見られますか」

「…………いや、いい。俺は見ないようにしておく。ここは堪えて、当日を楽しみにしておくさ。だから、とにかく他の男には見せぬようにしてくれ。あなたも含めてだ」

「か、かしこまりました!」


三十路を間近にした令嬢のドレス姿にかけられるにしては高すぎる期待に、背筋が伸びる思いのする私であった。




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