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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
序章
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第六話「最早武器だろあの大声」「同感」

【設定変更:表示→非表示】

【保管庫→場違いな人工物(オーパーツ)


【設定変更】でステータス一覧からこの能力の表示形式を非表示に変更し、同時に【保管庫】の名前を【場違いな人工物(オーパーツ)】にした。【設定変更】はこの先も俺が有利な展開に持っていくのに役立つし、偽装がバレないのも確認できた。この能力は誰にも明かさない。


「召喚できる武器や道具はどんな物があるんだ?」

「俺もまだ完全に把握してませんが、武器は……言ってしまえば遠距離から殺す武器です」

「それは魔獣を、か?」


シムが目を細めて問いかける。それを俺は正直に、はっきりと言った。


「生きているなら全ての生物。特に、人間」

「「───っ」」


わずかにシムとオウカの体が強張ったが分かった。当然だ。今、二人の前にいる俺は一発で人を殺せる武器を自由に召喚できるのだから。


「実際に見たでしょう? あの威力なら頭を吹き飛ばし、心臓を穿つ。召喚される武器はそのほとんどが人を殺すのに作られた武器。俺はそれを扱える」

「自分がわりと危険人物だと理解してるな。もし仮に、お前の職業や能力を戦争に利用されたとして、相手の被害はどうなる?」


そう聞かれて、少し考える。


この世界に銃は存在せず、銃を使えるのは俺だけ。なら、と『ファストナ』に出てくる銃や道具、俺が『ファストナ』でやってきた俺のプレイスタイルを思い返し、俺のやり方でやらせてくれるのなら、と前置きしつつ答える。


「俺個人でやれることは限られますが、補給物資は優先的に潰しますし、嫌がらせしようと動んで、まあ死者よりは負傷者の数は増えるかと。あとは可能なら相手の指揮官には早々に退場してもらう……とか」

「お前はうちで預かる」


シムは即決した。


「シム団長、本気ですか!?」

「面と向かって話して分かった。コイツほど相手にしたら面倒になる相手は他にいない。物資が狙われるだけでもイヤなのに、被害まで増えるとかたまったもんじゃねえ!! それが無くてもあの威力の攻撃で遠距離からちょっかいを出されるだけでも嫌らしい!!」


うん、俺もそう思う。俺だってそれをされたら嫌だもん。


「預かるって、彼を入団させるにしても……」

「ああ、国王直属であるから『サザール騎士団』の入団には国王と宰相の承認が必要。とは言ってもな、最近は勇者が好き勝手やっていて王宮の執務室は滅茶苦茶だ、一枚くらい書類が増えても問題無いだろうよ」


それでいいのか国王直属の騎士団団長……。


「はぁ……書類はバレないようにして下さいね」

「止めないんだな、オウカさん」

「この人は前からこうなの。型破りというか、中身が子供というか……」


まあ分からなくもない。国王直属というほどだから国王に忠誠を誓ったザ・騎士みたいなお堅い人かと思っていたのに、まさか国王に内緒で勝手に書類を作って執務室に紛れさせ、あたかも前から騎士団のメンバーでした、と偽ろうとしているのだから。


「くくく、普段から言うだけ言ってこっちの話はまともに聞かないんだ、なら言う必要なんてないよな、聞かないんだから!! 早速書類を作って執務室に突撃してやるぜ、ついでに書類の山を崩しておこう!!」


日頃の鬱憤を晴らすいい機会とでも思っているのか、シムは悪い笑みを浮かべながら客室を出て行った。


「おっと、そうだオウカ!! もうあがっていいからカイトに隊舎を案内させてやれ!! どのくらい動けるかも確認頼むわ!!」


とんでもない大声が部屋の外から聞こえてきて、俺とオウカは耳をおさえた。〜〜〜っ、おかしい!! 完全に離れていたのに耳元でメガホンの大音量を聞かされたような爆音だったぞ!?


「ちょっと、待ってて、耳が……っ」

「あー、うん、待ってる」


獣人だから人よりも聴覚が優れているのだろう。特にダメージがでかかったオウカが涙目でうずくまっていたので、俺は大人しく回復するのを待つのだった。



オウカの耳が回復した後、隊舎や敷地を見て回った。


隊舎はとても大きく『コ』の字の形をした四階建て。

一階はさっき入った客室や、会議室、食堂、浴場などの共有スペース。二階から四階が『サザール騎士団』のメンバーの自室となっている。


そして隊舎に囲まれるようにある運動場。ここでは日頃から騎士たちが特訓に使っていると言われたが、今は誰もいない。


「さて、シム団長に言われた通りに、軽くカイトの実力を見ておきたいんだけど、先ずは【身体能力:B】が本当なのか確かめる」

「確かめるって、さっき見たろ?」

「そうなんだけど……たまに、ランクが高くてもそれを完全に発揮できない人がいるの。だから確かめる。ちなみにBは人間にしては高ランク」


動ける素質があるけどインドア派であまり運動したことないやつ、みたいな感じか?


強さを表すランクとして下からD、C、B、Aと上がっていく。


平民なら高くてもC。冒険者はいくら鍛えてもBが限界、その限界を越えてAランクになると達人級としてかなりの実力となるらしい。


Aよりも上にはSランクが存在するが、それは英雄や勇者などのとても限られた者だけで強さは化け物かというほどに滅茶苦茶。Aランクとは決定的なまでに差があるとのこと。


「なるほど、確かに俺はそこまで体を動かしたことがないな。俺は相手からなるべく離れるよう心掛けている、だから相手の反撃に対して余裕を持って動いてきた」

「でもこれからはそうはいかない。私たちが相手にするのは高ランクのものが多い。大丈夫だ、と離れていても一瞬で距離を詰められるのがほとんど」


そりゃ、国王直属だからな。相手も並大抵ではないだろうさ。


「という訳だから……」

「───っ!!」


俺は嫌な予感がしてオウカから全力で離れた。


その直後、


「へぇ? 勘が良いね」


俺が立っていた場所にナイフが三本突き刺さり、ボボボンと爆発した。


「でも驚いた、一回のバックステップでそこまで行けるんだ」

「俺もけっこう驚いてる……」


助走無しで脚力頼みだったにも関わらず俺はオウカから明らかに五メートル以上は離れていた。転生前だったら一メートル、もしくは爆発に巻き込めれて吹き飛んでいただろう。


これがBランクの補正、なのか。


「脚力は今ので分かった。次は、うーん、ちょうどよく離れていることだしこれかな……」


オウカはおもむろに人差し指を立てると、その指先に半透明の何かが渦を巻きなから集まっていく。


(あれは……空気? いや、今は無風だ、だとしたら……)


指先に集まった何かは球状になり、それをゆっくりと俺に向けて、


「───魔弾(バレット)

(魔力の、塊か……!?)


猛スピードで飛んできたそれから辛うじて逃れた。


「今のは魔力の塊を飛ばすだけの単純な初級魔法。これに属性を付与したり、操作することで軌道を変えたりもできるから、子供が魔法の練習する時によく使われるの」

「単純だけど応用が利くと」

「そういうこと」


ふふ、とオウカが笑みを浮かべる。


「とにかく連発するから頑張って避けてみて。あっ、そうそう、当たってもちょっと痛いだけで怪我はしないから安心してね」

「そう言ってる割には目が本気なんだけどなー」


動くとなるとマントは邪魔だから脱ぎ捨てる。


(半透明で見えにくいのが厄介だが、さっきの速さくらいならなんとか対応できる。この際当たってもいい、身体能力の補正がどれくらいか確認しながら動き回ってみますか)


これから戦うのは『ファストナ』のキャラじゃない。俺自身だ。


俺が動いて、戦って、引き金を引くんだ。戦って、戦って、戦って、最後まで生き抜く為にも、ここできっちりと俺の実力を確かめなくては───!!


「さあ、行くよ!!」

「来い!!」

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