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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
序章
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第五話「バレません」「では書き換える!!」

「おう、待たせたな」


暫くしてドカドカと足音をたてながら客室にシムが入ってきた。脇には木箱を抱えていて、ドカッとテーブルに置く。


「お帰りなさい、シム団長。陛下はなんと?」

「いつものようにウムの一言だけだ。あと宰相からは遅かったですねと、相変わらず嫌みたらしいヤツだ、全く。今回の……というか毎度毎度あちらの落ち度だというのに悪びれもしない」

「勇者が人事に口を出したのが原因ですからね。好き勝手にやってるのを見逃して、それで問題が起きたら私たちに押し付ける。いつものことです」


なるほど、神から勇者にちょっと問題があるとは聞いていたがだいぶ嫌われてるな。


勇者のやり方に国王は何も言わないどころか助長させている。そして『サザール騎士団』が国王直属だということから、もしかしたらここも勇者や国王のやり方に賛同した者ばかりなのではと思っていたのだ。


「大変そうですなー。お茶でも飲んで心を落ち着かせたらどうです、団長さん。まあ俺は縛られてるんでお茶を出せないんですけどね」

「おう!? なんで縛られてんだ!?」

「私一人で監視するのは不安だったので縛ってました。カイト、ほどくから動かないで」


オウカは持っていた鍵で枷を外し、縛っていた縄を解いた。


「……?」

「どうした、オウカ?」

「あっ、いえ、なにも……」


慣れた手つきで縄をまとめて、オウカは客室の扉の前に移動。シムはテーブルを挟んで俺と向かい合うように椅子に腰かける。


「先ずは自己紹介からだな。オレは『サザール騎士団』の団長をやってる、シム・アルバレストだ。そして未だに警戒してお前の逃げ道を塞いでるのがオウカ・ココノエ、見ての通り獣人でうちに入団したのは一年前だが今では優秀な偵察騎士だ」

「……ふん」


そっぽ向かれた。


ちょっと揺れた。どこが?


胸が。


「カイト、お前には色々と聞きたいことがある」


()()()()、と俺は思った。

ここでの会話で俺の今後の方針が決まる、人生における重要な分岐点だ。


「先ずはお前のステータスを見せてもらう」

「それの中身で、ですか?」

「そうだ」


シムは木箱の蓋を開けてその中にある物を取り出した。


見た目は、やや平らのプリンターに水晶の玉が乗ってるような感じだ。これがステータスを見る道具なようだ。


「これはステータスを調べる時に使う物だ。うちにある物では最高品質で、その者の真実を露にする。この水晶に手を乗せろ。あとは勝手にやってくれる」

「はぁ……」


言われた通りにやってみる。すると直ぐにプリンターから色々書かれた一枚の紙が出てきた。


……なんだろう、見た目のせいでどう動いてるのかがなんとなく分かってしまう。どうせこの水晶から俺のステータスを読み取って、下のプリンターで紙に読み取ったステータスを移すとかだろ。


【名前:カイト】

【性別:男】

【年齢:25】

【種族:人間】

【職業:偵察兵】

【所属:未登録】

【能力:場違いな人工物(オーパーツ)

【身体能力:B】


出てきた紙に文字が並んでいて、俺が見えたのはこれくらいだった。手早くシムが紙を持ってったからあとは見えなかった。


「なんだこれ」

「あっ、同い年……」


俺のステータスを見てシムは首を傾げ、気になったのか彼の後ろから顔を覗かせたオウカが呟く。


(うん、どうやら【設定変更】の偽装はほんとにバレないみたいだな)


気付かれないように注意しながら俺は安堵した。


シムたちが平原の池で大立ち回りしているところに俺が草むらの中から一発撃った後、騎士に囲まれて大人しく出ていくしかなくなった時、俺は即座に【設定変更】であるものを変更した。


【字幕:有り→無し】

【音声:無し→有り(設定変更時、自身にのみ)】


【設定変更】を使う際に空中に浮かび上がる文字。

これはいわゆるゲーム画面に出てくる字幕だ。いちいち【設定変更】の文字が出てきては誰かに見られてしまう。それを防ぐ為に有りから無しへ変更した。


そして、字幕を読み上げるアナウンス、つまり音声を無しから有りへ。この音声は俺にしか聞こえないようにした。


あとは戦闘が終わって撤収するまでの間、隊舎の客室に案内されシムが来るのを待つ間、あまり長くはない時間でステータスを精査して偽装をしたのだ。


「所属が未登録……これはどの国にも属してないってことだが、前にいくつかの小国が帝国に()()()()ことで多くの難民が一度はこうなった。お前もそれか?」


どの組織に入っていようとその土地や場所ごと失えば組織も無かったことにされて未登録扱いになるらしい。


「……俺は運が良かっただけです」

「そうか」


目を伏せて言う。余計なことは言わない。これだけで彼は俺が住む場所を無くした難民だ、と誤解した──ように見える。所属について彼はそれ以上聞いてこなかった。


「魔法の適正は無し。んでこの職業の『偵察兵』は、徴兵された後に付けられたのか?」


職業は勝手に発現するものと、役目を与えられて発現するものの二通り。


前者は本人にとって最適な職業となり、それ故に力を存分に発揮できる。だが後者は本人との相性が必ずしも良い訳ではなく、発揮できる力もいまいちで使い捨ての駒にされることが多い。『兵』とつく職業がその代表例だ。


「いえ、これは遺伝的なものです。俺の一族は代々この職業、と言っても俺の代でまだ三代目ですが……。祖父が使い捨てとしてこの職業を与えられ、でも相性が良かったのか役目を全うし生還。その後に祖父は自分が活躍した話を父に聞かせ、父がそれに憧れて発現。祖父亡き後に俺もこの職業になりました」


『ファストナ』ではたまにキャラ設定にそったムービーを出すのだが、俺は『黒羽』のムービー内容とこの世界情勢を混ぜ合わせて、シムに話した。我ながらよく回る舌だと感心する。


「ある日、父が俺を短期間の旅に出させたんですがその直ぐ後に所属が未登録になったことに気付きました。そこで色々と()()()俺は、行くあてもなくさまよって『スネア平原』にたどり着き、今に至るという訳です」

「よく平原まで来れたな……」

「幸いにも能力に恵まれてましたからね」


身の上話から直ぐに所属や生い立ちの話から能力へと話題を変える。もしステータスを明かされた時の為、そちらに注目しやすいよう、【設定変更】で偽装しておいたのだ。


「初めて見る能力だ。オウカ、分かるか?」

「いえ、私も初めて見ました……恐らくこれで転移しようとしていた帝国の間者の足を?」

「そう、俺が欲しい物……武器や道具を召喚する能力だ」


俺は頷きながら指輪を見せた。


「場違いな人口物の名前の通り、人口物でありながらその時代や文明にそぐわない代物。これが魔法を使えない俺が唯一それに対抗できる手段だ」

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