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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
第一章
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第四十八話「分かってたけど最低だった」「そうだろうなぁ」

王都『貴族街』にはその名前の通り貴族のみが住まう区画で、主に王宮務めの貴族が多い。その中でも一際大きい大豪邸の一室にて、自身の家を訪れた男女二人の話を聞いて青年は不承不承な顔をしながらも頷いた。


「準Aランクの冒険者が俺と試合ねぇ……」

「うむ、特権を使ってお前との試合を望んだ。より上の強者との戦いたいとな」

「だからって俺を相手に選ぶなんて、よほど身の程知らずらしい」


青年───カムイ・カリオスは自身との試合を求めた冒険者を小馬鹿にしながら座っている椅子に立て掛けていた二振りの剣を見て、テーブルを挟んだ向かい側に座る男女へと視線を移す。


「どこまで使えるんだ?」

「多くの民が観戦している。結界で守っているが、お前の全力には耐えられんだろう。対個人くらいに抑えよ」

「準Aランクに対個人は抑えすぎじゃないか?」

「見たことがない魔法を使う剣士だが、優勝するまでの間に力を使いすぎて消耗している。初見ゆえの対処の遅れに気をつけていれば容易く勝てるだろう」


なるほど、とカムイは席を立って二回手を叩く。

すると扉が開いてメイドが一人、部屋にはいってくる。


「……お呼びでしょうか」

「支度だ。俺の部屋に防具を運べ。それから彼女たちに外出すると伝えておけ、寝ていたら起こさずにメモ書きを」

「承知しました……」


メイドが部屋から出ていく。その様子を見ていた男女の内、女性は目を細めてカムイへと小言を言う。


「軽い催眠に首輪……あの子は随分と、あなたへ熱心に女を贈っているようですね」

「ああ、カテリーナには感謝しているよ」


メイドの首につけられていた首輪と光のない瞳、感情が無いような声から彼女が正常ではないことは分かる。そしてそれが自身の娘がやったことであると女性は分かっている。分かっていながらも自分では止められないことも……。


「王宮内でのカテリーナの評価が下がっています。少しは王族としての務めをして、民の前に出てくれるよう伝えてくれますか?」

「気のせいだろ。彼女はこれまで十分に働いてきた。ちょっと休んでるくらいで揺らぐほど、彼女の評価は低くないはずだ」

「…………」


カムイの言葉に、女性はそれ以上なにも言わなかった。これと似たようなやり取りは過去に何度もやっていて全く話を受け入れてくれなかった為に言うだけ無駄だったからだ。


「アリシア様も、教会から仕事が溜まってきていると小言が届いています」

「仕事と言っても主に王都の外の、だろう? 王都の守りの要であり、騎士団の紋章にもなった彼女を危険な場所へは行かせられないな」


ただ、無駄だとしても言い続けなければならない。()()()()()()()()()()()


「用件は伝えた。行くぞ、レティシア」

「はい……」


男性に連れられて女性は立ち上がる。


「それではアレクシス国王陛下、レティシア女王陛下。また後で」


カムイに見送られ二人の男女は大豪邸を出ていった。




王国のツートップが馬車に乗って去っていくのを見送った後、カムイはメイドに応接室の片付けを任せて自室へと向かう。部屋の前にはまた別のメイドが二人待っており、カムイの姿を見ると頭を下げた。


「彼女たちは?」

「カトリーナ様とアリシア様は寝室にて寝ております」

「そっか、起きていたら出発する前に一回くらいやっておこうかと思ってたのに。仕方ない、君たちで済ませよう」


そう言ってカムイは二人のメイドを抱き寄せて自室に入っていく。


カムイ・カリオス。王国にて異世界から召喚された勇者。二振りの剣を手に多くの魔物を退けた王国最高戦力にして、聖女に次いで王国二人目のSランク保持者。


その実態は、気に入った女性を無理矢理にでも欲し、自分より弱いものを支配したり押さえつけたりすることで優越感を得て支配欲を満たす異常者。相手が恐怖し、抵抗していく様を見ながら暴力を振るい、少しずつ従順になっていくのが何よりも楽しいと感じる性犯罪者である。


「ククク、最高だよ。この世界は……」


服を脱いでベッドの上でメイドを組伏せながらカムイは笑う。


「使い勝手が悪かった魔剣だけでどうしようもなかった()とは違う。今の俺には聖剣がある、そして『支配』の王女に『守護』の聖女がいる。邪魔な奴らはみんな叩いて潰して、今度こそ俺は……いや、私は……この世界で最強になってみせる!!」


目指すは自分が中心となる国。いや、世界。自分が考える理想を思い浮かべてカムイの笑みは恍惚なものとなる。




『キュー……』


その様子を、窓の外からこっそり覗いている狐がいたのだが、カムイはそれに気付かないまま二回戦目に突入するのだった。


『ギュッ(訳:クソ野郎だなアイツ)』

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