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良縁悪縁ひっさげ歩む我が人生  作者: あすか
第一章
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第二十四話「飴玉コロコロ」「相棒狐と香辛料」

『───んあ、なんだこの匂いは……?』

『誰か商人から奪った食料でもぶちまけ、て───ウギャアアォアオィウアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!』


地下から響き渡る絶叫に俺は笑いをこらえるのに必死だった。


「く、っ……ククク……のたうち回ってるアイツらの顔が目に浮かぶぜ」

「でたカイトの悪人顔」


俺が地下通路から盗賊共がいる地下の部屋に投げ入れたのはレッドホットボムという名前の手榴弾だ。


手榴弾と言ってもただの爆弾ではなく、とんでもなく辛い粉末状の香辛料がぎっしり詰まった粉爆弾。破裂したら辺り一帯に香辛料が空気中を漂い、目に入ったり吸い込んだりしたら問答無用で刺激が襲うというもの。

『ファストナ』では一定時間その場に漂い、敵味方問わず触れたキャラクターは少ダメージを連続で受ける。煙幕としても使えるし、建物に引きこもった相手をあぶり出す時には重宝したものだ。


最初の潜入で調べたところ、いくつか部屋があってそれなりに広かった。

流石にレッドホットボム一個ではその全ての部屋に香辛料が行き渡らないが、なら行き渡るまで投げ入れればいいだけ。とにかくレッドホットボムを召喚しては投げ入れ、オウカが軽く気流を操作して奥の奥まで行き渡らせる、同時に充満した香辛料が俺たちがいる地下通路までこないようにする。


向こうの魔法使いも何とかしようと動くだろう。俺は魔法が使えるか使えないかの見分けが付かなかったが、オウカはコンの目を通じて魔法使い二人いることを確認したらしい。あちらも同じように気流操作で外に押し出すか、もしくは別の魔法で安全地帯を確保するかだろうが、


「あっちとこっちで互いの操作した気流がぶつかり合って結局は外に押し出せない。こっちは構わずボム追加するがな。そして安全地帯を確保するにしてもあの大人数だ、全員入れてもギリギリ、その狭さに苛立ちもするはず。()()()()()()()()されれば相当ストレスや疲れがたまるよなァ……ククク」


レッドホットボムと火炎瓶を投げて二つの持続ダメージで建物の中で戦闘中のプレイヤー二人をキルしたのを思い出すぜ。あれは気持ち良かった、何度もやり過ぎて通報されたけど。


「そして朝になったら解放して、たまらず一斉に外に出てきたところを待機させているシム団長たちが一掃する。自分たちで作った砦を壊して脱出するにしても地下だから崩れる可能性があって迂闊には出来ない。転移したらしたであぶり出しに成功、朝まで耐えても弱らせることに成功。砦には損傷を与えずに簡単に征伐完了。ほんと、いい性格をしてるよね、カイトは」

「ハッハッハ、褒めたところで飴しか出ないぞ、ほれ」

「褒め言葉ではないんだけど、あと飴は出るんだ」


あむ、と渡した飴玉を口に入れるオウカ。


「おいひい」

「そりゃ良かった。ところで気流操作は朝までやれるか? 途中で誰かに交代してもいいからな?」


レッドホットボムと気流操作のあぶり出し作戦はこれまでに何度かやったことはあるものの徹夜するのは初めてだ。オウカの魔力が朝まで持つのか心配になって聞いてみると、彼女は口の中で飴玉をコロコロ転がしながら言った。


「もご……調整してやってるから朝までやっても問題ない、多少疲れるくらいかな。あとで食事に付き合って、場所は『黒兎亭』ってところ」

「あれか、お前がよく行く店で俺を紹介したいって言ってた。ボム追加っと」

「分かった、気流強める。───外食ついでに、ね。そろそろお前の相棒を紹介しろってうるさいの」


確かにまた休みを貰えるか分からないからな。しかし『黒兎亭』か、偵察班の先輩方から聞いた話だと、高くはないが安いかと言われると……という価格で、ちょっとした贅沢だったりそれこそ奢り奢られにはピッタリだとか。


まあこの半年でそれなりに稼げたし───というか国王直属の組織なだけあって中々の高給取りだ、一ヶ月の稼ぎだけで平民の稼ぎの何倍もある。騎士団のみんなはその金であの白銀の鎧や自前の武器とかを整えたりしてる。


(……俺は武器も道具も『保管庫』から召喚するから金の使い道があまりなくて減るどころか増える一方なんだよな。まあ沢山あって困るものでもないし、今は貯金かね)



『どうなってんだ風で換気出来ねえぞ!?』

『こんな所にずっといるなんてゴメンだ、無理矢理にでも突っ切ってやる!!』

『待て、迂闊に動くな!!』



地下から聞こえてくる声と足音。音からして、一人だ。


「カイト、来るよ」

「カウント頼む」


召喚するのはサイレンサー付きピストル。

銃は俺にしか使えない、この世界にはない武器だ。それをむやみに使ってはいつか対策されるだろう。だから銃という未知の武器をさらに未知のものにする。


「三……」


サイレンサー付きなら発砲音は最小限になるから、急に体を穿たれた相手は訳が分からず混乱するだろう。魔法と勘違いするかもしれない。いや、その前に俺が撃ち殺すか。


「二……一……」


敵に与える情報は限りなく少なく、仕留めるなら確実に。


「よし、やっと地上に」


パシュ、パシュ、パシュッ。


心臓近くを素早く三連射。口元を布で覆った男は何が起きたか分からないまま、後退りながら一度自分の胸元を見て上がってきた通路を転がり落ちていった。


この通路は螺旋状、どっかで止まって綺麗に地下まで転がり落ちはしないだろう。落ちてきた男の死体を見れば怖じ気づいて、これ以上突っ切ってくる馬鹿はいなくなるんじゃないかと考えてたんだけどな。


「まあいいか。よし、この感じで朝まで粘ろう」

「はあ、寝不足って肌に悪いんだよね」


ムッ、それはいかん。


「美容にいい物でも探しとく」

「えっ、あ、ありがと……」


うん、いい金の使い道を見つけた。あとで片っ端から商人に聞いてみるとしよう。

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